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【医療コラム】「仕事が覚えられない…」「すぐ忘れる」のは発達障害?

どうしても仕事を覚えられない。自分がそのような状況になったり、同僚や部下がこのような状態になって悩んでいるのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。
仕事を覚えるのが遅かったり、物忘れが多かったりするのにはいくつかの原因があります。「もともと覚えるのが苦手なんだ、、、」と諦める前に仕事が覚えられない、物忘れをしてしまう原因について知り、対策することは重要です。

■仕事が覚えられない原因 ①生活習慣

「仕事を覚えられない、、もしかして記憶力が落ちてしまう病気?」そんなことを考える前にまずは自分の生活習慣や職場の環境を見直すことが重要です。記憶力が低下するような生活習慣を見てみましょう。
• 睡眠不足
記憶力に影響を及ぼす生活習慣としてまず上がるのが睡眠不足です。
記憶力を司る海馬という脳の部位があります。子どもの頃から寝不足の人はこの海馬がしっかりと睡眠をとっている人と比較して縮小しているという研究結果があります。(NeuroImage | Volume 60, Issue 1, March 2012, Pages 471–475))
普段の睡眠時間が6時間程度の人は寝不足という自覚がなくても注意が必要です。8時間睡眠の人と比較して6時間睡眠を継続すると2週間後には丸2日間程度徹夜していた人と同程度のパフォーマンスの低下が見られたという研究結果があります。(Sleep. 2003 Mar 15;26(2):117-26. doi: 10.1093/sleep/26.2.117.)そんな状態でスムーズに仕事が覚えられないのは当然です。睡眠時間の確保が今の日本にとって非常に重要な課題となっています。
• ストレス
職場の環境や人間関係により強いストレスを感じているという人も注意が必要です。強いストレスにさらされることで健忘症と呼ばれる記憶障害を起こすことがあります。健忘症のはっきりとした原因は未だ不明なのですが。ストレスが原因の一つであることはわかっています。健忘症になると過去の出来事などを思い出せなくなります。軽い健忘症であれば数分から数時間程度の記憶が失われますが、重いものになるとより長期間の出来事が思い出せなくなります。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-神経疾患/脳葉の機能および機能障害/健忘?query=健忘)
また強烈なトラウマ(災害やパートナーの死、極めて重いハラスメントや虐待など)によって解離性健忘という記憶障害を起こすことがあります。前述のおおきな出来事をきっかけに本人にとって重要な記憶を思い出せなくなります。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/08-精神障害/解離症群/解離性健忘)
慢性的なストレスによりうつ病を発症することも記憶の障害に影響を与えます。うつ病は認知症に似た記憶障害の原因となることがあることが知られています。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-神経疾患/神経疾患の症状/記憶障害?query=健忘#治療_v27274734_ja)
• 食生活
バランスの悪い食生活が記憶力を低下させる可能性があります。特に私たちの脳が活動するためのエネルギー源として活用されるブドウ糖やショ糖の摂取が記憶力に関連しているという報告があります。
(砂糖類・でん粉情報2018.3)
過度なダイエットで糖質を控えすぎると、脳のエネルギー源である糖質の不足により記憶力が低下するばかりかストレスなど他の原因も加わり仕事の質を大きく落とす可能性があります。
過度のアルコール摂取なども記憶力の低下の原因となるので仕事が覚えられないと感じたら控えるようにしましょう。

■仕事が覚えられない原因② 記憶力が低下する疾患・状態


よくある店員としては、加齢に伴う記憶力の低下、認知症、うつ病があります。記憶力の低下が年相応なのか、認知症等により異常に低下しているのかについては検査や医師の判断が必要となります。認知症は早期発見することが今後、より記憶力が低下するのを防ぐのに重要です。物忘れがひどく日常生活に影響があるようなら医療機関を早期に受診することをお勧めします。うつ病でも認知症と似た記憶力の低下があります。物忘れに加えて、意欲の低下や、憂鬱な気分を感じる方も是非早期に医療機関を受診しましょう。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-神経疾患/神経疾患の症状/記憶障害?query=健忘#治療_v27274734_ja)
ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、注意力が散漫で、衝動性が高く、過活動性が見られる特徴を持つ神経発達障害です。幼少期に始まり、年齢を経ると症状が改善してくることもありますが、成人期まで続くことがあります。一つの仕事に集中することが難しく、他のことに気を取られやすい特性があるため、仕事を覚えるのが難しくなります。診断が付けられていないADHDの方は、周りから気が散りやすいことを指摘されたり、仕事が覚えられないことについて悩んだりすることが多く、診断を正しく受けて周りに理解を得て、適切な環境を提供することで仕事の生産性が大きく上がる可能性があります。こちらも悩んだら早めに医師の診察を受けることが重要です。
(DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き
MSDマニュアルプロフェッショナル版https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19-小児科/学習障害および発達障害/注意欠如・多動症-add-adhd?ruleredirectid=465#診断_v1104578_ja)

■まとめ


仕事が覚えられなかったり物忘れしてまう原因は多岐にわたります。まずは生活習慣の見直しが必要ですが、解決しない場合には医療機関の受診を早めに検討することが重要です。

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