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【医療コラム】「家族がストレスでしかない…」 原因と対処法について児童精神科医が解説 セルフチェック エゴグラム

普通に暮らしていれば、毎日顔を合わせコミュニケーションを取らなければならないのが「家族」です。

どんな親や兄弟だったとしても「血のつながり」はなかなか断ち切ることが出来ません。
また、家族はお互いに深く影響しあうことが言われています。

特に、家族関係が円満かどうかで人生に大きく関わってくるのは子どもです。例えば、家族内関係が上手くいかずコミュニケーションや愛情不足が顕著だった場合、トラウマ後ストレス障害やうつ病などの精神的な健康が悪くなりやすいことがわかっているのです。

子どもの健康が悪くなれば、親の負担が増えるのも当然。家族のちょっとした「ひずみ」が負の連鎖を生み出しやすいのです。

実際、令和4年の厚生労働省による「健康実態調査結果の報告」によると、「家族との人間関係について悩んでいる」と答えた方は男性で14.9%、女性で21.1%にものぼります。

「家族以外の人間関係に悩んでいる」と答えた方は男性19.4%、女性20.0%なので、女性は家族以外の人間関係よりも、むしろ毎日顔を合わせる家族に対して悩みを抱きやすいのですね。

であれば、「家族がストレスになっているな」と感じた時点で早めに対処して家庭内を円満にしていきたいところ。

では、どんな時に家族がストレスになるのでしょうか。
家族がストレスになる原因と対処法について、一緒に見ていきましょう。

■ ケース① 夫や妻にストレスを感じる場合


夫婦は離婚する時などを除いて、基本的には子供が自立した後もずっと連れ添っていくパートナーです。夫婦に対してのストレス、早めに原因をしって取り除いておきたいですよね。

例えば、夫や妻にストレスを感じる状況として、次のようなことが考えられます。

【妻が夫にストレスを感じる3パターン】


● 家事・育児に協力的でない時: 共働きであるにもかかわらず、家事や育児に対して夫が積極的に関わろうとしなかったり、専業主婦でも家事を仕事と夫が十分認識してくれなかったりすると、夫をストレスに感じやすくなります。
● 自分を一番に考えてくれない時: 義理の親との対立が生じた際に、自分の味方になってくれなかった場合、一気に信頼度を落としてしまうことがあります。
● 介護など仕事を一方的に押し付けられている時: 親の介護が必要になった際に、その責任を一方的に妻に押し付けてしまっている時ですね。奥さんにも精神的・肉体的な負担が大きくなり感情的になりがち。夫婦関係にヒビが生じやすくなるでしょう。

【夫が妻にストレスを感じる3パターン】

● 浪費癖がある: 妻に浪費癖があり、家計に影響を及ぼすこと。これは、経済的なストレスの原因となり得ますし「自分が一生懸命稼いでいるのに・・・」と妻を敵視しやすくなります。
● ヒステリックになりやすい: 些細なことで容易にヒステリックになり、感情的な対応をする奥さんについていくのは大変ですよね。いつも妻の顔色を見ないといけなくなり、妻をストレス源に感じやすいです。
● 自分の仕事を理解してくれない: 一生懸命仕事を頑張っているのに「これしか稼いでいないの?もっと頑張りなさいよ」と自分の仕事に理解を示してくれないと、自尊心が低下することになり、言う相手(=妻)をストレスに感じやすくなります。

■ ケース② 親にストレスを感じる場合

子供が思春期だったり、親が子離れできないような場合、逆に親が介護が必要になる場合などは親がストレスになるケースが多くなるでしょう。

具体的には次のような場合です。

● 子供に対して過度な期待を持っている場合:普段「〜しなさい」と声掛けすることは多くないですか?親が子どもに対して持つ非現実的な期待は、子どもからすると激しいストレスです。
● コミュニケーション不足:親と子どもの間で十分なコミュニケーションが取れていない場合も、誤解や不満が蓄積されやすくなりヒビが入りやすくなります。
● 親が過干渉になりがちな時:同様に、親が成人した子供の交友関係、仕事選択、結婚相手に至るまで、あれこれ口出ししてしまうのは子供の人格を否定することにつながります。子供も親のことをうっとうしく思いがちです。
● 高齢になり、介護の問題が生じた時:親が高齢になり健康が悪化したり、介護が必要になったりすると、その責任の大部分が子どもにのしかかることがあります。「自分たちの生活で手一杯なのに、なんで親の介護もしないといけないのか」と親を重いストレスのように感じやすくなるでしょう。

■ケース③ 子どもにストレスを感じる場合

では、逆に子供に対して、親はどんな時にストレスを感じるのでしょうか。未成年の時期と大人になった時期に分けて見ていきましょう。

【未成年の子どもに対して親がストレスを感じるケース】

● 学業成績があまりよくない: 子どもの学業成績が期待に応えられない場合、親は子どもの将来を心配し、ストレスを感じることがあります。
● 非行や不登校、いじめなどの問題: 学校や社会でのルールや期待に適応できない行動(例: 不登校、いじめへの関与、非行など)が見られる時も、「どうしてわが子が」と、親は大きなストレスを感じることがあります。
● コミュニケーションがうまく取れない時: 思春期になると子どもは親とのコミュニケーションを避けるようになりがち。すると親は子どもの心の中がわからず、不安やストレスを感じることがあります。

【大人になった子どもに対して親がストレスを感じるケース】

● 経済的自立が遅れているケース:: 成人した子どもが経済的に自立できずに家庭に依存し続ける場合、親は経済的負担や子どもの将来に対する心配からストレスを感じます。
● 生活態度がいつまでたっても「子供」: 大人になっても子供が不規則な生活、不健康な食生活、過度の遊びを続けていると、親にとってのストレス源になります。
● 価値観が異なる: 世代間での価値観や生き方の違いが明確になり、どうしても親子間で意見の衝突が多くなることがあります。お互いがお互いの価値観を理解しあわないと、お互いを「ストレス」に感じることがあります。

■ケース④兄弟・姉妹にストレスを感じる場合

近しい兄弟・姉妹間も近しいからこそストレスに感じることがあります。例えば次のようなケースです。

● 親からの不平等な扱いを受けている: 一方の兄弟・姉妹が親から特別扱いされたり、優遇されていると感じたらどうでしょう?自尊心が傷つけられ、優遇されている兄弟姉妹のことを敵視するようになるでしょう。
● 能力や成功の比較をする: 不平等な扱いを受けていなくても、兄弟姉妹はどうしても親から比べられやすいもの。学業成績、スポーツの能力、職業上の成功など、兄弟姉妹と比べて自分の方が「劣っている」と感じた場合、「一人っ子がよかった」と兄弟がいること自体にストレスを感じやすくなります。
● 性格上、どうしても「合わない」: 例えば几帳面な性格なら、だらしない兄弟は「許せない」と感じてストレスに感じますよね。このように、兄弟で性格や価値観が異なり衝突してしまうこともあるでしょう。
● プライバシーの侵害がある: 一つ屋根の下で暮らしている以上、どうしても兄弟姉妹のプライバシーを完全に尊重することができないケースもあるでしょう。しかし、多感な年齢になるほど、プライバシーの侵害は大きなストレス源になります。

■家族へのストレス度をセルフチェックで診断

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