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発達障害の現在地とこれから〜ASDとADHDは統合される!?

こんにちは、精神科医のはぐりんです。

今回は発達障害(ASD,ADHD,LD)の変遷、現在地、また今後の展望についても個人的な憶測と願望込みで予想してみました。
※この投稿は3分で読めます。最後までご覧いただければ嬉しいです。

発達障害は比較的新しい概念で、1990年代に知的障害を伴わない発達障害の概念が知れ渡り、その後医療機関や行政において次々と取り組みが開始されました。2007年に文部科学省が「特別支援教育を推進するための制度の在り方」の中で「発達障害の児童に対する指導および支援が喫緊の課題」とされ、ようやく特別支援学級・学校が制定されました。

ですから今の30代、40代の方たちは支援級のなかった時代に、もっと言うと発達障害の概念自体が乏しかった時代を過ごしたため(親や教師も同様)、発達障害が見過ごされ今になって問題が表面化してきた方も多いです。

最近では診断精度や心理検査ツールも増え、それに伴い有病率も年々増え、今ではASDに関しては有病率は約3%。グレーゾーンの方たちまで含めると10%近くにまでになりました(ADHDは約5%)。

ASDとADHDの併存に関して、驚くことに2013年にDSM5(診断マニュアル)に改定されるまでは、ASD(当時はPDD:広汎性発達障害)とADHDの併存は認められていなかったのです(DSM-Ⅳでは両方の診断基準を満たす場合は. PDD の診断のみをつけることと明記されています)。ただこれはあくまで「DSM-Ⅳ」の診断基準上での話で、実臨床的には併存している方も多く、医師も併存するものとして扱っていました。DSMの診断基準が如何に実臨床に即していないものであるかお分かりいただけると思います。

2013年に現在のDSM5に改定されてからは、「神経発達症群」の中にASD、ADHD、LDなどが入っているのですが、ASDとADHDの併存が認められることが明記されています。

ただこういった変遷を経て個人的に最近思うのは、ASDとADHDは症状の点でも共通点が多く、一周回ってASDとADHDを棲み分ける必要があるのだろうか?という考えに最近は至っています。私が(勝手に)尊敬しているyoutuberの益田裕介先生も同様のことをおっしゃられています。

現在でも大枠では神経発達症にまとめられてはいますが、薬を出す際や、支援・福祉の申請をする際には診断名(ASD、ADHD)が必要で、ASDの方にADHDの薬を出せませんし、支援・福祉の場でもASDとADHDを別個の概念として捉えられている印象が強いです。一般の方にもどちらかというと別個のものとして認識されている印象ですが、突き詰めるとASDもADHDも同じスペクトラム(連続体)なのではないかと最近は思っています。

おそらく今後の展望としては、ASDとADHDがより密接したものとして扱われ、ゆくゆくはASDの方にADHDの薬(コンサータ、ストラテラ、等)を使えるようになったり、その逆で衝動統制不良のADHDの方に、現在ASDの方の怒りっぽさに使う薬(エビリファイ、リスペリドン)を使えるようになるかもしれません(願望込み)。ADHDの方にコミュニケーションや社会性の問題を扱う必要性がある方もいるでしょうし、ASDの方の中にも不注意や思考の転導性(ADHDに見られる注意の移り変わり)で困っている方もいるでしょう診断がつかないから、あるいはグレーゾーンだから、という理由で十分な治療介入がなされていないという方も今現在少なくなく、そういった方たちにどう介入し支援していくかも今後の課題となっています。

最近SNS等で発達障害の当事者の方々の声を耳にする機会が多いのですが、彼ら彼女らの苦痛は想像以上に大きく、中々当事者でないと理解されない部分も感じます。現在は診断が細分化され、症状も多種多様で個人個人で微妙に違っていて、色々な情報が飛び交っており、問題が複雑化しています。ASD、ADHDと診断にこだわるのではなく、彼ら彼女らが何に苦痛を感じていているかに耳を傾け、分かりやすく問題点(症状:社会性、怒りっぽさ、忘れっぽさ、等)を整理して、症状に応じた対応・治療が求められていると感じます。

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