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カサンドラ症候群〜ASD/発達障害から一歩先を見据えて

こんにちは、精神科医のはぐりんです。
※この投稿は4分で読めます。最後までご覧いただけたら嬉しいです。

今回は久しぶりにカサンドラ症候群について書いて見ました。過去に何度か投稿させていただきましたが、ありがたいことに多くの方々に読んでいただけました。それだけ夫婦問題や、もっというと日本の婚姻制度女性の権利に関して、悩まれている方が多いかと思います。

今回は最近の知見や実際に苦しんでいる方々の声などを拾いながら私見を書いていこうと思います。

カサンドラ症候群について、原因や病態に関してはだいぶ理解が進んできました。ただ中々その先に進まない、結局どうしようもない何も変わらない、といった声をよく耳にします。

そこから一歩先に進むために、まずは現在のカサンドラ症候群に関しての共通認識について、改めて確認する必要があります。

カサンドラ症候群とは「パートナーや家族がASDで、情緒的交流やコミュニケーション、関係構築がうまくいかずストレスを溜め込み、心身の不調をきたしてしまうこと」を言います。大体どこのサイトでも「ASD」や、Wikipediaでも「アスペルガー症候群」をもつパートナーの身体的・精神的症状と定義されています。

個人的にはASD・アスペルガーと断定することでASD特性ばかりに目が行きがちで、具体的な問題点に対して盲目になりやすいという欠点があると思っています。

またASDだけでなく、ADHDも神経発達症のスペクトラムの一つで(過去投稿にも詳しく書きました)、ADHDの中にも共感性に乏しい人もいるでしょうし、それこそADHDの症状である不注意や衝動性など、共感性以外の面での夫婦問題も多いでしょう。

カサンドラ症候群をASDの問題としてしまうと、定型発達 vs ASDの構図ができあがってしまい、お互い他罰的で敵対視するような結果しか生んでいないように見えるのです。

カサンドラ症候群を理解しそこから一歩先に進むためには、「カサンドラ=ASDの問題」で思考停止させるのではなく、ASDにしてもADHDにしても、その他の問題(幼少期の回避型愛着障害や毒親育ちなど)にしても、各夫婦ごとに問題点は当然違っていて、具体的な問題点を抽出していくことが重要になってくるのではないかと思います。

例えば共感性・コミュニケーションの問題であれば、「私が何か提案したり話しかけても、聞いているのか聞いていないのかわからないから、必ず顔を向けて少なくとも相づちは打つようにしてほしい」とか、

「急に大きい声で反論されるとびっくりするから、怒る時は一呼吸おいてトーンを抑えて」とどこか目につきやすい場所に貼り紙しておくのも良いかもしれません。こういったことは、ASD、ADHDの両方で見られることだし、もっと言うと精神科的になにも診断がつかないような夫婦にも起こりえます。

カサンドラ症候群=ASD、共感性が得られない、という図式は確かにとても分かりやすく、原因が分かって救われた方々も多いかと思います。カサンドラ症候群についてお互い理解するというのは、解決に向けた一つの手段にはなるとは思います。繰り返しになりますが、心療内科や精神科を受診してASDの診断をつける事が大事なのではなく、夫婦一緒に受診して具体的な問題点を共有することが大事なのです。

一方で夫婦間、医療機関を使ってもどうにもならない、そもそも夫に理解してもらえずそこまで辿りつかないという夫婦も多いかと思います。やはりまだまだ国策レベルでの対策が必要かもしれません。まずはカサンドラ症候群の概念をもっと世間に広めること(特に夫側に知ってもらうこと)、これにはメディアの力が必要ですし、我々医療者の役目かもしれません。

それと現代の女性は、仕事や家事、子育てと負担が大きすぎます。私も結婚するまでは中々イメージが湧かなかったのですが、実際妻と一緒に生活していると本当に大変なことが実感されます。職場(男社会)、家庭内(家事育児負担は女性に比重大)の両方でまだまだ女性は軽視されています。

これまでどおりの日本の子育て制度、婚姻制度では破綻するのは当然だし、現在の状況では女性にとって結婚するメリットがないといっても過言ではありません。そういった女性の窮状を国策レベル、トップダウンで改善していかなければ、カサンドラをはじめとした夫婦間の問題も中々解決しません

今回はカサンドラ症候群に関して、夫婦間で取り組めること、国レベルでの対策が必要なこと、色々と書かせていただきました。最後までお読みいただきありがとうございました。

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