マガジンのカバー画像

渡り介護士の見る景色

18
私の経験から〝介護士が転職すると、どんな事を見て、どんな経験をしがちなのか?〟をイメージして簡単なお話を書いてみました。架空の利用者さんが例え話で少し登場しますが、ほぼ施設内での… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

18. 旅立ちの時/渡り介護士の見る景色

18. 旅立ちの時/渡り介護士の見る景色

いろんな介護士がいるから一概には言えないが、もちろんみんな利用者を大事にして、仲良く暖かい施設で気持ちよく働きたい。
そんな風に思っている、そう思ってるからあんなに面接で一生懸命に確認して転職を決めたんだ。

確認した内容と違う荒々しい現場、仕事量も多い上に人員不足、増やされる仕事と様々な役割。そして誰も出来ない仕事の責任を持たされる。

私と同じ場所に立った時、今と同じ状態の対応ができるのかと、

もっとみる
17. 誰にもできる訳のない仕事/渡り介護士の見る景色

17. 誰にもできる訳のない仕事/渡り介護士の見る景色

この様な人たちは、急かされず、たまに顔を出すから利用者に優しくできるのだと思う。
街でご近所さんにたまに会って挨拶しているのと同じで、お互い悪い印象があるわけない。
否、あっても程々で去ってしまえば関係ないのである。

「目が離せない行動を何度も繰り返す利用者にも優しく対応してください。」わかってます。
「その利用者も家族にとっては毎日ご飯を作ってくれた優しい大事なお母さんなんです、大切に接してく

もっとみる
16. ふらりと〝意識高い型〟/渡り介護士の見る景色

16. ふらりと〝意識高い型〟/渡り介護士の見る景色

退職する介護士ばかりいて、新しく配属の介護士がいない。1人当たりの仕事量は更に増していく、この状態を報告、新たに配属をしてもらう様に管理職に物申してみる。

すると、人員配置基準はちゃんと満たしていると回答され対応してもらえなかった。
介護施設には利用者の人数に対して配置しなければならない介護士の人数が決められている様だ。しかし調べてみると、どうやらそれは常勤している介護士の総数が決められているも

もっとみる
15. 省略される仕事/渡り介護士の見る景色

15. 省略される仕事/渡り介護士の見る景色

さて、このようなあらゆる事を丸投げされている現場で仕事量が多く時間内に仕事を終わらせる為に介護士が自己判断で省略して時間削減している事とは具体的にどんな事だろうか。

毎日の仕事の中の細かな作業、色々な事を省略しているだろうが、総括して考えた私からの具体例として1番時間削減効率が高いものを1つ挙げたいと思う。それは「利用者の尊厳保持を諦める。」事である。

「尊厳保持を諦める。」とは要約すると、利

もっとみる
14. 現場リーダーの権限/渡り介護士の見る景色

14. 現場リーダーの権限/渡り介護士の見る景色

リーダーはこれらの作業はやらなければいけないが、その自分の管轄内で起こる事の選択権や決定権がないのが介護施設のリーダーである。

こっちが管理するであろう現場にどんな容態の利用者が入ってくるか決められないのだ。もちろん
「今、現場はこんな状態です。その利用者の介護が増えると、こうなってこうなりますので、難しいです。」という意見なんて通らない。
相談もなく決定事項として現場に伝わってきて、やり方は現

もっとみる
13. イベント業務とリーダー業務/渡り介護士の見る景色

13. イベント業務とリーダー業務/渡り介護士の見る景色

介護士として在籍期間が長くなってくると、前述の委員会委員もそうだが〝あらゆる施設内のイベントの担当〟これも強制的に割り振られる。

私の経験だと例えば
〝映画鑑賞会〟これは毎月行われていて、当日までに利用者が喜びそうな2時間以内の映画を選びレンタルショップに勤務時間外に借りに行く。

春は野外で〝お花見会〟担当者は予定の公園へ駐車場の有無、花見のコース、絶景スポットなど事前に勤務時間外にチェックし

もっとみる
12. 作業表とヘルプ/渡り介護士の見る景色

12. 作業表とヘルプ/渡り介護士の見る景色

見える化と言えば、介護施設は日々の業務を表にしがちである。利用者1人ひとりの出来ることが違うと、介護方法も1人ひとり違ったりして結構複雑だったりするから様だ。

表には、時間別でやる業務とか、この利用者は歩きと車椅子どちらで移動するのかとか。トイレや食事の手伝いの有無、薬の管理など表にして、確認しろと言わんばかりにステーションなどの壁に貼り出してあったりする。

わからない時はパッと見れば判断でき

もっとみる
11. 委員会と意識高い型/渡り介護士の見る景色

11. 委員会と意識高い型/渡り介護士の見る景色

次に介護施設には、委員会という会合が更に存在する。これは、その施設によって委員会の種類、日時、やり方等が本当にバラバラで、細かな事を言えばキリがない。

共通点として会議や社内研修の準備、実行、議事録の作成など物理的に仕事が増える事と、介護士だけではないあらゆる専門職が集まりディスカッションするという所だ。

非常に生産的な素晴らしい委員会もあるのかもしれないが、大体は本質的なものでなく表面的な改

もっとみる
10. 全体会議の休日出勤率/渡り介護士の見る景色

10. 全体会議の休日出勤率/渡り介護士の見る景色

介護施設というのは言ってみれば24時間営業、だから介護士の勤務時間はシフト制で順番に働いている。私の経験上よくあるシフトの形としては

早番7〜16時、遅番11〜20時、
夜勤16〜翌日10時(2日分)。

これを交代で行い、夜勤の終わった日は翌日も休みだったりする。
そして施設長含め、介護施設の介護士以外の方々は割と9〜18時くらいの平日勤務が主な勤務時間の様だ。

そして施設によって待遇は違う

もっとみる
9.専門家の丸投げ/渡り介護士の見る景色

9.専門家の丸投げ/渡り介護士の見る景色

介護士以外の医療職の方々、ここからも別々にいろいろな指示が飛んでくる。

「この利用者さん、1日1回10分程度のこの運動をしてもらって下さい。」とか
「この利用者さんの食事の介助を明日から毎食してあげて下さい。」と。

医療の専門家からの指示であるからその利用者にとって必要な事なのであろう。
しかしそんな指示が来るたびにいつも心の中で
「どの隙間にやるの?」と思ってしまう。

1人1回10分の運動

もっとみる
8. 介護施設の介護士以外の職種/渡り介護士の見る景色

8. 介護施設の介護士以外の職種/渡り介護士の見る景色

先輩介護士から色々な介護方法を聞きながら、要点がつかめてきたのと同時に、自分の置かれている環境と様子が見えてきた新人介護士。そんな頃になると内容は違えどいつも思う事がある。
「入社面接で確認した事となんか違う。」と。

「残業はありません、みんな無理のない仕事量で取り組んでもらってます。」
「人間関係もそれなりに仲良くやってると思います。」
「大変な利用者の対応は2人で行うなど、負担が重くない様、

もっとみる
7. 暗黙の了解と粗探し型/渡り介護士の見る景色

7. 暗黙の了解と粗探し型/渡り介護士の見る景色

介護士内の〝暗黙の了解〟として、人によってやり方が違う事は理解している。
しかし誰がどんなやり方でやっているかは、それぞれあまり理解していない。
触れてはいけない禁断のタブーという訳ではないが、表向きはみんな段取り通りやっている体でいるから、あまりそこに触れない。

トラブルなく利用者の不満もなく終わっていれば「ちゃんとやるべき仕事は終わってます。」って事になっている訳だ。

あらゆる性格の介護士

もっとみる
6. 過剰な仕事の倒し方2つ/渡り介護士の見る景色

6. 過剰な仕事の倒し方2つ/渡り介護士の見る景色

過剰な仕事量に対して先輩介護士がどうしているか、観察していると2通りの事情があるのがわかった。
ひとつは「勤務時間内に仕事が終わっている。」もうひとつは「出来ない分はサービス残業している。」からの様だ。

「勤務時間内に仕事が終わっている。」
これは〝効率派〟要素の強い介護士に多いのだが、20分かかる就寝介助を、例えば15分で終わらせて全体の仕事を早く終わらせている。

普段やるべき段取りの中で、

もっとみる
5. 仕事量と勤務時間/渡り介護士の見る景色

5. 仕事量と勤務時間/渡り介護士の見る景色

さて、次に仕事量の話をしたい。何か難しい事ではなく非常に単純で簡単な話である。

話の都合上、わかりやすく介護施設の利用者の、寝る為の準備をお手伝いする〝就寝介助〟を例に話をする。

就寝介助といえばその日の終わり、介護士にとってラストスパート、踏ん張り所なのだ。

夕食後に介護士2人で対応する、勤務時間は共に残り2時間である。その内のおよそ1時間分は夕食の片付けやその日の記録に取られてしまう。

もっとみる