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ワーママがアメリカのスタートアップへ転職して良かったこと・悩んでいること。

アメリカのとあるスタートアップで働き始めてもうすぐ1年半になる。

スタートアップと言っても、所謂ミドルからレイターステージに分類される会社で、従業員数も500人ほど。複数回の資金調達に成功しており、これから更に事業を拡大の上、エグジット(上場など)を目指そうとしている。

以前は日本の大企業で働いていた。転職により日本企業からアメリカ企業へ、大企業からスタートアップへ、フル出勤からフルリモートへと働く環境が大きく変わり、ワーママとしてのキャリアも始まった。

転職には概ね満足しているが、もちろん不満やモヤモヤも少なからずある。1年半の節目を前に、今の会社に勤めてみて良かったこと・悩んでいることを纏めたいと思う。


背景

■転職の理由

転職のきっかけは夫のアメリカ駐在。私はそれまで10年以上、日本の大企業で働いていて、最終ポジションは自分も駐在員であった。

夫と遠距離生活が長く、次は一緒に住んで子供も欲しいと思っていたことに加え、その会社でやりたかったことは一通り経験できた、この先は長い中間管理職時代が続き成長速度が鈍化する、環境を変えて新しい挑戦をしてみたいという心境にあった為、キャリアに区切りをつけることにした。

■私の専門分野

これまでスペシャリストではなくジェネラリストとして働いてきたこともあり、ものすごく専門的なスキルや経験を持っている訳ではないが、多額の資金を必要とする大型プロジェクトの推進(マネジメント・資金調達・M&A)や、戦略企画系の仕事に多く携わってきた。

従い、転職の際にはこの辺りのスキルや経験が活かせそうなポジションを中心に検討し、最終的には一番面白そうな仕事に携われそうで、これまでと全く異なる環境で挑戦が出来、働き方が柔軟な今の職場を選んだ。

転職して良かったこと

■裁量の大きさ

私が以前働いていた会社は典型的なメンバーシップ型雇用のJTC。ジョブは明確に定義されておらず、自分に与えられる裁量は限定的。加えて、「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)を重視する文化があった為、報告メールや相談資料の作成に多くの時間を割いていた。

一方、今の職場はジョブ型。自分の責任範囲は明確であり、何でも相談することは寧ろ能力不足と捉えられる為、自分の判断でどんどん物事を進めるようになった。フルリモートで働いていることもあり、上司にはこまめに情報共有はしているが、「ホウレンソウ」に割く時間は圧倒的に少ない。

裁量が大きくなることにより「ホウレンソウ」業務が減る一方で、自分で判断することに時間と頭を使うことが増えた。初めは慣れない意思決定に少し居心地の悪さも感じていたが、一年半が経ち、場数を踏むことにより決断力が磨かれることに気づき、今はとても良い経験になっていると思っている。

■働き方の柔軟性

メンバーシップ型雇用の大きな弊害の一つは、ジョブが明確に定義されていない為、長時間労働や常に臨戦態勢でいることが評価に繋がりやすい点だ。私も新卒でJTCに入って以来、日本企業の働き方に順応しようと、頑張っていた。

独身時代や子供がいない内は、その働き方がどうにか成り立っていたが、子供が産まれ、保育園・病院周りの制約や突発事象が発生するようになると、こうした働き方は物理的に難しくなる。

今の職場では個々人の責任範囲が明確なので、自分の仕事をきちんとこなしていれば働き方にとやかく口出しする人はいない。且つ、比較的年齢層が若く育児中の社員も多いので、子供に関連する急なトラブルには理解があり、ワーママにとってストレスがない。この環境は本当にありがたい。

■問題解決能力の向上

スタートアップに転職し、大手企業との差をヒシヒシと感じるのはリソースの差。それは様々なモノやサービスにかけられる予算であり、社内の人材層の厚さであり、知見やノウハウの蓄積である。

従い、例えば予算を使う場合、どこにお金をかける必要があるのか以前に増してよく吟味するようになり、社内に便利なデータベースや仕組みがなければ自分で作るようになり、意思決定する際には最低限の判断材料で次のステップへ進み、必要に応じ軌道修正していくアプローチを取るようになった。

リソースが限られている分、これまで以上に問題の本質を考えたり、クリエイティブな解決策を検討するようになったということであり、自分にとってプラスな経験だと感じている。周りの同僚たちも同じように試行錯誤していて、ふと相談すると色んなアイディアが出てくるのも面白い。

転職して悩んでいること

■給与とストックオプション

今この瞬間の給与を最大化したいのであれば、多くの場合、日本であってもアメリカであってもスタートアップは選択肢にならないだろうと思う。私自身も今回の転職で重視したのは、業務内容の面白さ、これまでと全く異なる環境での挑戦、働きやすさ(社風・時間の融通が効く)などであった。

この選択に納得してはいるものの、給与とのトレードオフについて常に悩んでいる自分がいるのも事実。一定期間、今の職場のような環境で新しい経験を積むことには意味があると思うし、幼児を抱えた今のライフステージに合った働き方が出来るのもありがたい。

でも、私の仕事の価値にもっと高い値段をつけてくれる会社があるとしたら中長期的には移りたいとも思っている。金銭報酬が自分にとって大きなモチベーションの源泉の一つであることに、転職してみて改めて気づく。

給与関連でもう一つのテーマはストックオプション。企業価値の向上が社員に還元される仕組みで、会社が成長すれば多額の金銭報酬を得られる可能性がある。私は今それなりの株数を貰っているが、これを給与パッケージの中でどう位置付けるか悩ましく、このモヤモヤを掘り下げたいと思っている。

■人事制度の未整備

日本の大手企業には当たり前に存在していた昇格基準、ボーナスの仕組み、目標設定のプロセス、マネジメント層への研修などが今の職場では思っていた以上に制度化・整備されていないことを働き始めて知った。

採用時にこの辺りのことを質問し、最低限は整備されていることを確認していたものの、蓋を開けてみると「今年は会社の業績が思わしくなかったので急遽ボーナスの支給方法を変えます」と突然通知があり、想定よりもかなり少ない金額しか貰えないことが判明するなど予想外のことがちらほら。

人事チームが改善の必要性を認識し、制度整備を進めようとしている一方、経営陣が必ずしもこれを優先課題と捉えていないようにも見受けられる点が今気になっている。現状が会社の急成長に伴う一時的な歪みではないとすると、長期的にいるべき職場なのか再考が必要になるかもしれない。

■マイノリティの意味

日本の会社で働き始めた駆け出しの頃は、性別に関係なく平等に機会が与えられ、実力があればキャリアで成功できると考えていた。ライフステージが変化する前で男性と同じように働けていたし、女性であることがハンデだと感じる場面もそう多くはなかった。

社会人として経験を重ね、ライフステージも変わり、世の中がそうシンプルではないことを学んだ。キャリアで躓くとき、マイノリティであることを言い訳にしたくはない。が、アメリカではマイノリティが不利な立場にあることを様々な研究データが示している。その現実を受け止めつつ、作戦を立てようと今は考えている。

私は今の職場でアジア人×女性という意味でスーパーマイノリティだ。会社全体でみると女性は30-40%を占めるものの、東アジア系の女性は殆どいないし、ポジションが上がるほど白人男性の割合が高い。

実は最近、前年度の評価面談をアメリカ人の上司と行い、結果にショックを受けた。自分の想定と実際の評価にギャップがあったことに加え、評価理由が明確でなかった為だ。マイノリティだから差別的な評価を受けたと拙速に結論づけようとしている訳ではない。でも、このモヤモヤの原因を突き止めたいし、マイノリティのキャリア形成について今後考えていきたいと思う。

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