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生地胴=ジーンズ論

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「生地胴とジーンズは似ている」 誕生から今日に至るまでの変遷、両者の魅力などなど、共通点が多くある生地胴とジーンズの話です。
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記事一覧

#25 生地胴=ジーンズ論 vol.1

#25 生地胴=ジーンズ論 vol.1

Facebook上で運営している「生地胴倶楽部」内で『生地胴=ジーンズ論』というコラムを連載したことがあります。これは私が独自に学び、見聞きし、体験したことをベースに書いているものです。
確固たる根拠にたどり着けない内容も含まれているのですが、これを書いていた際には、「読む人が限られているし、気軽に楽しんでくださいね」という但し書きを付していたものです。剣道具に思い入れの強い方からはお叱りを受ける

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#26 生地胴=ジーンズ論 vol.2

#26 生地胴=ジーンズ論 vol.2

■01 稽古用の胴そもそも生地胴とは、牛革に漆などを一切塗ることをせず、革目のままの胴台として完成させたものである。
稽古用の剣道具として、見栄えを度外視し、コストをかけずに稽古用に使い込むことを目的とした胴台である。
30年以上前には、少年剣士が稽古用として身に着けている姿を見かけることは今ほど珍しくなかった。
また、革目を露わにした稽古用の生地胴がある一方、様々な技巧を凝らし、ときには華やかさ

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#27 生地胴=ジーンズ論 vol.3

#27 生地胴=ジーンズ論 vol.3

■3 少年用の胴
ファイバー、樹脂といった化学製品の胴がスタンダードになってからもしばらく少年用の稽古向け防具として生地胴が残存し続けたのは、所謂「お下がり」か、道場や団体などの備品的な防具として受け継がれていたものが大半だと思われる。特に後者においては、他者との違いを個性として演出するのに具合がよく、反面、前者は「生地胴は古いものだから今風の流れに乗りたい」という同調の心理も手伝い、ますます減少

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#28 生地胴=ジーンズ論 vol.4

#28 生地胴=ジーンズ論 vol.4

■5 生地胴とは無縁だと思わざるを得なかった頃

革目むき出しの生地胴の風合いは、藍色一色の剣道着・袴・防具の中で何より洒落たものとして強烈な印象を残すこととなり、「色を塗っていない見栄えの度外視の道具」の存在は、想定外の効果をもたらした。しかし筆者にとって生地胴の購入は非現実であり、今後も己の手に生地胴がおさまることは、あり得ないことだと感じていた。インターネットなど影も形もなかった時代において

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#29 生地胴=ジーンズ論 vol.5

#29 生地胴=ジーンズ論 vol.5

◾️7 竹胴への導入

筆者が剣道を始めたのが1980年。ファイバー胴がはじめて身に着けた「胴」であり、当時は、年齢や技量ともに次の段階に進むと竹胴を手にする流れが当然な時代であった。
今では考えにくい話だが、中学生になる頃には竹胴の購入も視野に入り、高校生くらいになると竹胴プラス手刺の一式を手にするという流れも珍しくなかったのである。
この流れに早く乗ることに憧れたのが、1990年代に差し掛か

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#30 生地胴=ジーンズ論 vol.6

#30 生地胴=ジーンズ論 vol.6

◼️9 広告の生地胴を買いに

学生だった20余年前。長期休暇中に短期バイトを詰め込んだところ、収入が思いのほか多く、ふと剣道雑誌の裏表紙の広告を思い出した。
上京したとはいえ、市外局番も03ではない都とは名ばかりのような東京の西の方から新宿は早稲田まで、慣れない電車を乗り継ぎ、地図を見ながらようやくその店にたどり着いた。出してもらった胴台は、期待していたものとほんの少し違い、柿の実のような色をし

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#31 生地胴=ジーンズ論 vol.7

#31 生地胴=ジーンズ論 vol.7

【11 拭き漆】

漆塗といえば一般的には剣道具よりも漆器が真っ先に思い浮かぶものといえよう。艶が深く鮮やかな色合いを携えた漆器は、大分して下地、中塗、上塗の工程を辿り漆を幾重も塗り重ね仕上げられる。 一方、木工細工などの「木地」に透度のある生漆を塗り、布で拭き取る作業を繰り返し、木目を生かして仕上げる技法が「拭き漆(ふきうるし)」であり、摺漆(すりうるし)とも呼ばれる。
塗膜を作らないことに大

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#32 生地胴=ジーンズ論 vol.8

#32 生地胴=ジーンズ論 vol.8

■13 ネットで防具を買う時代が来た

剣道愛好家のなかには、特に防具好きな人がいるもので、インターネットが普及するようになると全国の愛好家と画面の上で談議を繰り広げるという新たな楽しみも生まれてきた。内容は多岐に及ぶものの、その中に生地胴に憧れる人はほんの僅かながらも存在し、情報交換がされていくのは自然の流れであったと言える。見た目の良さ、安価で購入できるメリット、そしてそれをどこで購入できるの

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#33 生地胴=ジーンズ論  番外

#33 生地胴=ジーンズ論  番外

生地胴の歴史について連載している最中にふと思い立ち、漆器職人さんをたずねたときの話です。

◼️拭き漆から拡がる

私は、生地胴の普及に最も大きな影響を与えたのが拭き漆であることは間違いないと考えています。
拭き漆といっても、透度のあるものから黒や茶色など、色の濃いものも存在します。その塗が胴に用いられるようになると「一体どこまでが生地胴なんだ?」という疑問が聞こえるようになりました。

この連載

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#34 生地胴=ジーンズ論 vol.9

#34 生地胴=ジーンズ論 vol.9

■16 拭き漆の隆盛から

拭き漆の生地胴がすっかり市民権を得るようになると同時に、生地胴について見聞を広めていくと、「これは本当は生地胴ではない」ということにもどかしさを感じるようにもなりつつあった。
何も手が加わっていない素地の胴台こそが生地胴だという元の考えに立ち返ってみようかと、立ち寄った剣道具店で問い合わせても「今はそのまま胴台として使えるよい革がない(から拭き漆のものしかない)」という

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#35 生地胴=ジーンズ論 vol.10

#35 生地胴=ジーンズ論 vol.10

◾️19 そろそろジーンズの話

そろそろ(ようやく?)ジーンズについて触れておきたい。
今やファッションアイテムとして老若男女を選ばす、かつ世界中で愛されているジーンズのルーツが作業着であったということはご存じのとおり。最初はテントや帆に使われているキャンパス生地(帆布)で作られていた作業用のズボンが、より丈夫な素材としてデニムが選ばれ、今に至る。ジーンズの歴史をたどる前に、デニムのメリットを挙

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#36 生地胴=ジーンズ論 vol.11

#36 生地胴=ジーンズ論 vol.11


◾️20 ブランドの確立

1870年、仕立て職人のヤコブ・デイビスが大柄の木こりから「ズボンのポケットがはがれてしまうのでなんとかならないか」との要望を受け、リベット(鋲)をポケットの両端に打ち付けて補強した。これが大当たりとなったものの模倣品も出回るようになったことから特許出願を試みるも、その費用の68ドルという大金を捻出できなかったため、リーバイと提携の上費用を折半し、特許出願を果たすの

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#37 生地胴=ジーンズ論  vol.12 完結

#37 生地胴=ジーンズ論  vol.12 完結

■完結 生地胴=ジーンズ論

ダメージを臆せずに使うことを出発点とし、それが共通項といえる生地胴とジーンズは、その後の歩みにおいて普及しながらも徐々に用途を広め、存在をファッションにまで昇華させていった。

インディゴブルーのジーンズはブラックやホワイト、ブラウンなどのカラーが試され、シルエットにも多様性が増した。生地胴も同様に革を拭き漆に仕上げたり、表面は素地のままに下地の布地に色を加えたタイプ

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#38 クルマに乗っていて生地胴について考えた話

#38 クルマに乗っていて生地胴について考えた話

剣道具も好きですが、クルマも好きです。
中古の大衆車を乗り継ぐ程度ですが、子どもの頃からひとりでディーラーに行き、カタログをたくさんもらってきたりしてました。
クルマの変遷を見ていると、剣道具に似てるなあと思うことがたびたびあるんです。
今回は、そんなこじつけたような緩い話題に触れてみました。

◼️どこからどこまでが本物なのか

剣道具に限ったことではありませんが、今の時代において「本物」を定義

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