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なんと愛しき光の波紋よ、ずっとそこにいて。

人はなぜ水の中で生きていけないんだろう。
と、思うくらい、プールの底の波紋が好きです。

プールの水面が好きすぎてぼんやりとうつ伏せで揺蕩っていたら死んでいると勘違いされたことがあった小学生時代。

部活終わりにプールに行くも、友人たちはみんな部活の疲れで即帰っていった中学生時代。

学校にプールがそもそもなかった高校時代。

銭湯の水風呂の底を眺めていたいばかりに、サウナと水風呂を往復して具合を悪くした大学時代。

そんなプールの水面に惹かれて惹かれて早20年。
ようやくたどり着いた、ずっとずっと憧れていた場所。

それは『金沢21世紀美術館』

今日ご紹介するのは、
金色に揺らめく水面の光に呪われた私が恋焦がれた、とても有名で、言葉を失うくらい素敵な展示です。

我が憧れの美術館へ

金沢21世紀美術館。
その名の通り、この美術館は石川県金沢市にあります。21美の愛称で親しまれているとか。私もこれからそう呼ぶ。

駅からおよそ2.5キロ。
バスを使えば10分くらいで着いてしまいます。
日本三大庭園で有名な兼六園や金沢城のすぐ近く。観光するにはぴったりのアクセス。

その外観は独特で、正面裏側が少しわかりにくく、造りは地図から見るとより不思議な感じ。
円形。

三方が道路に囲まれている美術館敷地内にどこからでも人々が訪れることができるよう...

金沢21世紀美術館HP

とのこと。その他水平性やガラス張りなのもそれぞれ意味があるようです。

金沢21世紀美術館はもちろん、十和田市現代美術館や原美術館(惜しくも東京館は閉館してしまいました)などなど美術館って、建築としてもとっても素敵ですよね。

中に入るとまず驚いたのが、
人人人人人。
どんだけ混んでるねん。
この人数を捌く受付の人の汗が眩しい。
ゆっくり展示を眺めよ〜と思った方は多分腰がひけてしまうかも。しかし旅人よ、この展示を前にして人の波に恐れることなかれ。そこをあなたが目指すのならば。
受付を済ませて、チケットを手に館内を進みます。

私が美術館に足を運んだ時期は、
○ 時を超えるイヴ・クラインの想像力―不確かさと非物質的なるもの
○ コレクション展2 Sea Lane - Connecting to the Islands 航路 - 島々への接続
とその他計4つの企画展が行われていました。
今回はこちらの企画展についての紹介は省きます。ただ、青が非常に美しい展示だった。空だとしては深すぎるが海にしては明るすぎる、人工的で無機質な美しく贅沢なブルー。

私の目指すブルーはそれよりもっと淡く、限りなく透明に近い。受付を出てすぐ、ガラスの向こう、陽が差し込む中庭に、見える我が愛しのプール。

さあ、いざ行かん!
水面の底へ!

プレ/スイミングプール

だが、慌てるな、旅人よ。
まずここで伝えておかなければならないことがある。非常に大切なことだ。

「スイミングプールの中を見るには、いいかね、
 予約がいるのだ」と、私の中にいたりいなかったりする賢者がそう言う(この賢者は大抵留守)

なるほど。
ここで多くの旅人がその事実を知らずに斃れてきたのだろうが、わたくしはその事を先刻御承知である!なぜならHPを舐めるようにチェックしたのだから!

そう、スイミングプールの中に入るには、現在、予約が必須の状態なのです。
そしてその予約は、入場日1週間前の午前9時から開始されますが、心してください。
超激戦区です。
私が予約を取ったド平日でさえ、午前9時3分には全ての時間帯の予約が埋まりました。

そしてようやく取った予約で、展示内に入れる時間はおよそ5分。この5分のために私は夜行バスに10時間近くも揺られたのだと思うと面白くてしょうがない。

とりあえず展示入場時間外でも上からプール自体は眺められるので、行ってみる。

プールを覗ける中庭

はやくも動悸が酷い。脈がとんでいる気がする。


水面が、ほら!
なんてきれいなんだろう。飛び込みたい。

下にいる人が見える。
いいなぁ。早く時間にならないかな。

そんな感じでプールの周りを冬眠明けの熊よろしくウロウロしていましたが、さすがに学芸員さんに不審に思われそうだし、他の展示も見たいしで一旦外へ。

光の庭よ、真夏の光よ

そんな感じで他の展示もウロウロと見ましたが、特に好きすぎた展示はこちら。

光庭

このプリズム!
雨の多い金沢で勝ち得た(?)この晴天の日に見るのにうってつけ。
残念ながら、中庭に入ることはできませんが、館内のこの光の壁の間近にベンチがあるので、足を休ませながらじっと見入ることができます。

光庭を臨む

誰もいない空間が割と悪夢っぽくて好き。
(↑友達に言ってもあまり理解してもらえない)

真夏の、晴天の日の白昼夢ぽくないですか?
そう感じるのは私だけ?

ちなみにフィルムカメラで撮るとより白昼夢ぽい。

撮影MINOLTASR-1 FUJIFILM400
撮影MINOLTASR-1 FUJIFILM400

ジャケ写に良さそう(?)

ジャケ名は適当です。英語できない。

ほら。ぽい。(勝手に変なの作ってすみません)

この空間、近所に欲しいな。
家から700キロくらい離れてるのつらい。
地元に作って欲しい。
毎日通いますんで、ほんとに。

ここも名残惜しいけど、ぼちぼち時間も近づいてきたので退散。

いざ行かんプールの底へ

集合時間より少し早めに入り口へ向かう。
スタッフさんに時間を測ってもらいつつ、
早速中へ。
「頭ぶつけやすいので気をつけて」とのこと。

地下への階段を下るがもはや足元ふわふわ。
頭もふわふわ。
動悸息切れ不整脈。
多分よだれも出てた(垂らしてはないです。マスクで留めました)

光の波紋よ、ずっとそこにいて。

あゝ、プールの、そこ。 
私はもう泣いている。

夢にまで見た場所。
大好き。愛してる。
この場所の美しさを伝えたいのに、それに叶う言葉が出てこない。
みんなに見てもらいたいのに、私一人のものにしたい。そんな矛盾が頭の中をぐるぐる回る。

それは、
小学五年生火曜日三時間目の記憶。
八月三日の午後一時が永遠にそこにある。

ずっとここにいたい。
誰か時間止めて。じゃなきゃここに私を閉じ込めて。

MINOLTASR-1 FUJIFILM400

たった数平方メートルの範囲を、何度も何度も歩き回る。上を見上げる。
光と、いろんな人の影が映る。
誰かが手を振っている。振り返す。

まだ私が小さかった時、プールの底で眺めた景色によく似ていた。監視の大人が(確か近所に住む友達のお母さん)たまに日陰から出てきて覗き込んできたあの風景。

なぜだろう、ずっと見続けていたいのに。
目を閉じて、耳を澄ませる。
かつて、私がいたプールで聞いた子供たちの声や、耳を塞ぐごうごうという胎内のような音は聞こえない。
ただ遠くから人の声と、光の降り注ぐ音がなぜだか聞こえて、まぶたを閉じていても透かしてくる光に目を開く。
暖かい春の光。

通路から次のお客さんの声。
たった五分の私の夢の時間は終わる。

名残惜しいが、直ちに明け渡さなければというすごく優しい気持ちに満たされる。

スマホに設定したタイマーが鳴る。
プールを後にする。通路の奥からもう一度プールを見ると、通路にまで光が溢れ出ているように見える。
外へ出る。
雑踏。
現実に戻った、という実感がなかなか湧かない。

ただ幸せだった。それは確か。

夢はいつか覚めること、の、悲しさとありがたさ

現実から戻ってきたあたりで、ものすごくお腹が減ってきた。が、カフェは行列ができていたので、とりあえずミュージアムショップへ。

ミュージアムショップもめっちゃおもろい(エセ関西弁が出てくる。そういえば金沢の方々の方言めっちゃかわいい。柔らかい関西弁って感じ)
ポストカードも山ほどあって、トートバッグやピンバッジ、金沢のハンドメイド作家の方々の作品、企画展はもちろん常設解説の冊子など、、

ちなみにミュージアムショップ、オンラインもあるらしい。散財の気配がする。

とりあえず自分にプールのポストカードと手拭いを買い、友達には未来サイコロなるものを買ってそそくさと退散(おもろいけど、ずっといるには人が多い)※後日、未来サイコロをあげた友達は一瞬怪訝な顔をしていた。

そんなこんなで美術館にいた時間はざっと3時間くらいです。移動に10時間(夜行に乗る前の高速バスも含めれば13時間くらい)もかけて?と笑われそうだけど。

でも、やっぱり美術館はいいなぁ。
金沢21世紀美術館に本気で行きたいって思ったのは大学3年の終わり。Death Labによる「死を民主化せよ」という企画展だった。お金がなさすぎる大学生だった私はどうしてもその企画展に行けず、何度も何度もHPの文章を読み返してた。

会いたい人には会いに行ける時に会いに行く。
行きたい企画展は開催中に観に行く。
というのは私の信条になった。

そんな懐かしい記憶をぼんやりと思い出しつつ、
金沢を発つ前日の夜に、美術館近くを通りかかった。ライトアップされていた展示や美術館そのものがとてもきれいだった。

そして、なんとなく感じる寂しさ。
この名残惜しさはすごく身に覚えがある。
ディズニー後の舞浜駅とか、修学旅行の帰りの新幹線とか、そういうの。

伝えたいことが全然まとまらないけど、
とにかくいろんな人に行ってみて欲しい。
現代アートとかよく分かんないんだよねって人にも、ぜひ。大丈夫、私も分かんないし。
とにかく行って、なんとなく好きな空間とか作品とか、そういうのを見つけてほしいです。
そしていつか語ろう。

人は死んだらみんな海の話をするらしいけど、誰か私と、このプールの話をしてくれないか。

ずっと美しくいて、
光の波紋よ、ずっと。

ということで、今回は石川県金沢市にある
金沢21世紀美術館についての紹介でした。
それでは皆さん、命あらばまた他日。
絶望するな、元気で行こう。

津軽山野でした。

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