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君が隣にいないから、あの最果てで泣くふりをする。


穏やかな春風が持ってきたような別れよ。
友達が少し遠くに行くことが決まって、
現実感のないまま、君は行ってしまった。
スマホのフォルダを眺めながら、
君と本当に色んなところに行ったなぁ、と一人笑ってみる。

君、なんて、きっと笑われるだろうな。
いつも名字で呼び合っていたね。

こんなところで私一人感傷に浸って、こんなものを書いていることを君はきっと嫌うでしょう。
でも、君が進むならと私も進もうとするけれど、そうして歩いていくうちにどんどん君から遠ざかる気がするよ。


Apple musicで聴く寂しい曲が、全部私たちのことを歌ってるんじゃないかと思って、また一人で笑う。
君と行った色んな場所を、今度は一人で、
もしくは別の人と訪れる時が来るのだろうか。
そうして「前にもここに友達と来たことがあるんだよ」と、思い出す景色はなぜか夕暮れの色になる。


早く夏になってくれと思う。
こんなに穏やかな季節は余計なことを考えすぎる。


寂しくはない、気がする。
寂しさによる痛みはまだ感じていないが、
夏の日の夜明けまで起きていてしまったような、ぼんやりとしたむなしさだけ。
同じ景色を見て、もっと笑っていたかったと思う。二度と会えない訳ではないのに、取り返しのつかないような焦燥感が追いかけてくる気がする。


もうしばらく会えないねと笑っていたのは、君の強がりか。寂しいと言えなかったのは、私の強がりだったよ。多分それは言わなければ分からなかったろうな。



この深夜に君が起きていなければいい。
寂しくなければいい。
新しい町で新しい部屋で、胸躍らせていればいい。

そんなことばかり思うのは、この雨のせいだと、
そういうことにして、私も寝ることにしよう。


ただ、いつか君と行った最果てで、
泣くふりでもしてみたら、今こんな気持ちにはならなかっただろうか。

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