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働き世代における年代ごとのロコモの要因。意外な年代にもロコモの兆候が!?

ご覧いただき、ありがとうございます!
前回はロコモティブシンドローム(ロコモ)について解説をさせていただきました。しかしロコモって、自分にはまだ縁が遠い話だと思っていませんか?
私は県内の人間ドックにて受診者の方の健診をさせていただいたり、地域で講習会をしたり、企業にも訪問にいったりしております。そこでは「ロコモは年寄りのものだから私はまだ大丈夫」だとか、「どこも痛いところないし、歩けるから平気」とよく聞かれます。
しかしよくよく聞いてみると、肩こりや腰痛が時折みられていたり、足腰は大丈夫であってもコレステロール値が高かったり、体重が重かったりしている方がいらっしゃいます。今回は、より詳しく働き世代のロコモについて解説させていただきたいと思います。


図. 年代別のロコモ該当者分布(ロコモONLINEより)
ロコモ25にて判定した分布:青色は健常、黄・橙・赤はロコモ

年代ごとのロコモの要因

上記の図をご覧ください。年代別のロコモ該当者の分布になります。男女ともに20歳代から一定数の割合で黄色以下の人(ロコモ該当者)が存在します。
私の経験や推測が入りますが、年代ごとにロコモとなる要因が異なります。   
   20〜40歳前半代:肩・首こり、腰痛によるロコモ
   40後半〜60歳代:足腰の衰え、腰痛(時に神経痛)、                         肥満(メタボ)によるロコモ   
   70歳代以降:さらなる足腰の衰えによるロコモ

ざっと、こんな感じです。

皆さんにぜひ肝に銘じていただきたいことは、”肩こり・腰痛は立派な主症状であること””内科系の疾患(メタボ、糖尿病など)であっても足腰にも影響すること””逆に足腰の影響が内科系の疾患にも影響すること”です!

肩こり・腰痛とロコモ(年代ごとの違い)

まず、”肩こり・腰痛は立派な主症状であること”です。
以前、腰痛についての記事をあげましたが、

腰痛や肩こりを訴えていらっしゃる人の多くは、不良姿勢や長時間の座り作業あるいは立位作業による腰背部やお尻の筋肉の疲労やこり、血行不良が原因となっていることが多いです。その結果、対象となる筋肉の周辺にある末梢神経が痛みを感じています。
20歳代〜40歳代前半のロコモ(ロコモ予備軍を含む)の人は、概ねこの要因であることが多いです。そのため対象となる姿勢の改善や対象となる筋肉のマッサージやストレッチを行ったり、血行をよくするための運動などをすると改善することが多いです。

しかし上記の状態を放置していたり、日常的に姿勢を改善しないままでいると、長期間に渡り同じところに機械的なストレスが加わり、関節が変形したり、中枢部に近い太めの神経にストレスがかかったりして強い痛みやシビレを呈します。
さらに中年にもなると新陳代謝が悪くなり、精神的なストレスも多く加わる時期でもあるため、お腹周りに脂肪が溜まり体重も増加し、より足腰に負担がかかります。日頃の運動不足もあり、脚の筋力も衰えが目立ってきます(脚の筋肉は20歳代後半〜30歳代前半から衰え始めます)。
そうなってきますと、ロコモの判定において、これまではロコモ25の質問票にて痛みだけでの該当であったものが、”40cmの台から片脚にて立ち上がれない”という機能面での衰えもみられるようになってきます。
これが40歳代後半からのロコモの背景です。

この場合のロコモの該当者は、筋肉のマッサージやストレッチだけでは改善されにくいです。適正体重に近づけるためのトレーニングや生活習慣の改善、関節の変形を助長させないようにするための姿勢改善・筋力トレーニングが必要となってきます。痛みに対しては、神経ストレッチなども必要となる場合もあります。場合によっては、きちんと医師の診断を受けた方がよいでしょう。

メタボ(肥満)とロコモ

次に、”内科系の疾患(メタボ、糖尿病など)であっても足腰にも影響すること””逆に足腰の影響が内科系の疾患にも影響すること”についてです。

肥満・メタボがロコモに影響する原因としては主に2つあります。
1つ目は物理的な原因です。
まず肥満になると体重が重くなります。そのため、重くなった体重を支えることが筋肉や関節の負担となり、体重を支えるだけの筋力が発揮できなかったり(筋力低下)、関節が傷んだり(関節変形)、お腹がつっかえて前に屈めなかったり(柔軟性の低下)します。
さらに運動不足によって筋力や身体の柔軟性が衰えていき、動きにくい身体になります。

2つ目は生理学的な原因です。
肥満の方が多く蓄える脂肪細胞からは、炎症性アディポサイトカインという物質が放出されます。この物質が放出されると全身的に慢性的な炎症性症状が広がります(微小な炎症ですので、捻挫した時みたいに大きく腫れたり、赤くなったり、痛みを感じたりはありません)。
適量であれば免疫に関与しますので、ウイルスや細菌とも闘ってくれるのですが、継続してずっと出続けていると動脈硬化を悪化させたり、筋肉や筋力が減少した病態のサルコペニア(筋肉減少症)にも関与すると報告されています。
ちなみにメタボの一要因である糖尿病の人の中には、肥満でない人もいます。その場合でも糖尿病性のサルコペニアに至ることがあり注意が必要です。

太る原因は、皆さんもよくおわかりかと思います。
そうです。”食べ過ぎ””運動不足” ですね!

まさにそれらを是正することで、先の原因にも対処できます!
食べ過ぎを抑え、適正量に変えると炎症が抑えられることが知られています(サルの実験において、食べ過ぎを続けたサルは適正量のサルよりも著しく老けたことが報告されています)。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/53/7/53_426/_pdf

また、運動(特に有酸素運動)には抗炎症作用があることが知られています。

食生活と運動(身体活動)は、結局いろんなことに有効です!
しかしわかっちゃいるけど、なかなかできないですよね…
私もそうです。
ただしっかり時間を取らなくても、毎日きっちりやらなくても大丈夫です!
そんなヒントを今後も発信していきたいと思います。