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20年近くずっと必修?高等学校の教科「情報」は何が変わったのか

みなさん、こんにちは。みんなのコードの未来の学び探究部の永野です。
最初に少し自己紹介させてください。

私は千葉県公立高校の教員として25年、その後教育委員会で3年勤務していました。

教員生活の中で大きな転機となった仕事は、2011年に勤務校にて専門学科情報科の新設を担当し、日本初の公立高校における1人1台持ち込みタブレット端末の必携化を実現させたことです。

そして、教員生活に終止符を打ち、情報教育の大切さと楽しさを日本中の小・中・高校の子供たちや先生方に伝えていきたいと思い、2021年にみんなのコードに入社しました。現在は全国の高等学校「情報」担当教員への研修講師を担当しています。

これまでの教科「情報」

さて、2022年4月に高等学校で「情報I」の授業が始まって数ヶ月が経ちます。巷では「情報が必修化!」とか「大学入試にプログラミングが!」などとニュースになっていることもあり、ご存知の方も多いと思います。

しかし、教科「情報」は2003年の誕生以来、20年近くもずっと「必修」です。では何がそんなに変わったのでしょうか?


※2023.1.16追記
 
『必修』は正確な用語ではありません。履修のことか修得のことか明らかではないからですが、報道や学校現場で「必履修」という意味でよく耳にします。
 報道などで「必修」化などとよく言われますが、それは必履修のことであり、情報が必履修という意味では20年近く前から変わらない。という意味で書いています。(必修得科目というのは高校では存在しません。)


前学習指導要領では、教科「情報」は、2科目のうち、いずれか1科目以上の選択必履修となっていました。

「選択必履修」という言葉からそもそも「教育用語ってわかりにくい!」と思われるかもしれません。

選択必履修というのは・・・
「教科内に設定されているいずれかの科目のうち、定められた条件に合った授業を受けなければ卒業できない」というものです。
選択必履修の条件は各教科ごとに学習指導要領で定められています。教科情報の場合は、「社会と情報」と「情報の科学」のいずれか1つ以上(両方でも良い)を選択して履修する、という条件だったわけです。

ところが、選択必履修といっても生徒が自由に「選択」できるわけではない場合が多いのです。

高校では「どの科目を何年生に何時間配置するか」を学校ごとに設定します。これを教育課程(カリキュラム)といいます。

「この科目を勉強したいな〜」と生徒が思っても、そもそもその学校の教育課程内に受けたい科目が設定されていなければ、生徒は選択の余地はなく、決められた科目を履修するしかありません。

これまでは、「社会と情報」または「情報の科学」のいずれかを教育課程に設定している学校がほとんどで、両方履修できる学校は多くはありませんでした。

また、ほとんどの学校は2科目のうち「社会と情報」のみを教育課程に設定していました。(「社会と情報」「情報の科学」の履修割合は、8:2であったといわれています)

今話題になっている「プログラミング」ですが、実は「情報の科学」でも扱われている内容でした。しかし、「プログラミングを学びたい!」という生徒がいても、通っている学校の教育課程で「社会と情報」しか設定されていないので授業を受けることができない、ということも多かったのです。

そして2022年、新学習指導要領で「情報」の履修条件が変わりました。

「情報I」「情報II」という科目となり、そのうち「情報I」が必履修科目となったのです。これまでのような選択制ではなく、全ての高校で「情報I」を必ず教育課程に編成し、2022年度以降入学する高校生は「情報I」を全員学ぶことになったのです。(「農業」「工業」「商業」などの専門学科は例外ですが、これらに学ぶ生徒も「情報I」とほぼ同じ内容を学ぶことになっています。)

どの学年で「情報I」を学ぶかは学校によって異なりますが、多くの学校で1年次に設定しているようです。

ちなみに「情報II」は「情報I」を学んだ上で、さらに発展的な内容として教育課程に設定しても良い、という位置づけです。(「情報II」を設定している学校は、全国的に今の所あまり多くないようです。)

2022年から始まった「情報I」の内容

新しい「情報I」では、以下の内容を扱うこととなっています。

  • 情報社会の問題解決

  • コミュニケーションと情報デザイン

  • コンピュータとプログラミング

  • 情報通信ネットワークとデータの活用

このうち、「プログラミング」「データ活用」はこれまで多くの学校が採用していた「社会と情報」には含まれていない内容なのです。

つまり、2022年度以降高等学校に入学する生徒は、

「プログラミング」
「データ活用」

を必ず全員学ぶことになったというわけです。

また、この「情報I」の必修化に伴い、大学入学共通テストにも「情報」が新設されることとなり、併せて報道でも大きく取り上げられることになりました。

受験生やその保護者にとっては、大きな変化です。これまで受験には必要なかった「プログラミング」などの分野が入試で問われるわけです。不安に思う方も多いでしょう。

さて、「プログラミング」は果たして全ての生徒が学ぶ必要があるのでしょうか?

「文系志望」だから必要がない、とか「将来プログラマーを目指すわけではないのに学ぶ必要があるのか」などという声も聞こえてきます。

次回は「プログラミング」や「データ活用」がなぜ高等学校「情報」の必修内容になったのか、なぜ大学入学共通テストで「情報」が導入されることになったのか、その意義についてお話していきます。乞うご期待!


ここまでお読みくださりありがとうございます。

みんなのコードは「子どもたちがデジタルの価値創造者となることで、次の世界を創っていく」をビジョンに掲げ、2015年の団体設立以来、小中高でのプログラミング教育等を中心に、情報教育の発展に向け活動し、多くの方からのご支援をいただきながら取り組んでまいりました。

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