地方移住のニーズは_余白__コミュニティデザイナーとして知るべきこととは

地方移住のニーズは”余白”。 地域コミュニティで気をつけたいこととは

こんにちは。コミュニティ情報のおっかけnagata(@SsfRn)です。

先日、灯台もと暮らしさんが主催するイベント「小林市×下川町×十和田市×灯台もと暮らし これからの暮らしと地域を考えよう。人と食がつなぐローカルライフ」に参加してきました。

地方での暮らし、移住のリアルなど、まさに地域コミュニティに携わる人にとって知っておくべき情報が、そこにはありました。

今回は、このイベントレポートとして、地域コミュニティに必須な考え方を考えていこうと思います。なお、こちらは前後編の2部構成となっています。今回は前編となります。それでは、イベントの様子をどうぞ。


小林市×下川町×十和田市×灯台もと暮らし これからの暮らしと地域を考えよう。人と食がつなぐローカルライフ

(※peatixイベントページより引用)

まずはイベントの概要から見ていきましょう。

宮崎県小林市、北海道下川町、青森県十和田市の各地方の職員さんたち、神奈川県三浦市に移住した三根夫妻、そして灯台もと暮らしメンバーでお送りする、トークがメインのイベントです。これらの地方は、灯台もと暮らしが過去に取材した中でも、特にお気に入りの地方らしく、その皆さんが一堂に集結するという、とても豪華なイベントです。

「これからの暮らしと地域を考える」「地域移住の本音」を知ることのトークセッションと、各地方の食材を使った豪華な食事・飲み物を楽しみながら交流する「新しい移住相談会(交流タイム)」の2部構成となっています。

計4時間というなかなかないロングタイムで、とても濃厚なイベントとなりました。今回はその中でも、三根夫妻のトークセッション部分をお送りします。


移住ではなく”引越し”

神奈川県三浦市に出版社を構える、三根夫妻。

旦那さんのミネシンゴさん、奥さんの三根かよこさん、このお二人は元々リクルートに務めており、そこで出会ったのだそうです。ミネシンゴさんは、美容師&編集&カメラマン、三根かよこさんはデザイナーというクリエイティブなお2人。それぞれのスキルもあることから、雑誌を出版したいと考え、逗子に出版社「アタシ社」を設立しました。

逗子で活動していたお2人ですが、とある理由で拠点を神奈川県三浦市にある三崎へ。そこにはどんな想いや考え方があったのでしょうか?東京から三崎へ移住した、そのリアルに迫ります。

(灯台もと暮らしの記事はこちら!:【夫婦対談】出会い、暮らし、一緒に仕事もするふたり。逗子の夫婦出版社「アタシ社」


ミネシンゴさん「移住というほどの移住じゃない気がしてて、、僕はただの”引越し”というライトな感じがあります。」

移住に対して感じているハードルが、とてつもなく低く捉えていることがわかった一言目。確かによく考えてみると、移住ってただの引越しなんですよね。私たちは勝手に移住というハードルを作っているのかもしれません。さらにミネシンゴさんは、”引越し”のリアルを話してくれます。

ミネシンゴさん「三浦に狙いを定めて引越したというわけでもなくてですね。逗子に8年住んでいたんですが、出版社をやっているんでどうしても在庫があると。それを自宅で抱えていたんですが、パンクしそうでして、、棚には2,000~3,000冊はありましたね。あとは、駅から近くのところに住んでいたんです。駅から2分ぐらいのところ。でも、あまりそれも意味がないなと(リクルート退職したため)。そんな色々諸条件を考えた時に、引越しをしようかなとぼんやり思っていました。僕、横浜市生まれで、妻は千葉生まれなんですけど、両親との距離を考えたら神奈川県内にいた方がいいなとなってですね。コストを考えた時、住居と事務所を別々にしようとすると、このままではお金がかかると。」

コスト、両親との距離、家の広さ、駅からの時間、それらを考慮して考え始めたとミネシンゴさん。これって何も特別なことではなく、私たちも引っ越す時は同じようなことを考えるのではないでしょうか?ここから、移住ではなく”引越し”と感じたという意味がわかってきました。ここでモデレーターのタクロコマさんとおぎゆかさんが、深く聞いていきます。

タクロコマさん「それはもともと、逗子を離れようと考えていたんですか?」

ミネシンゴさん「そうですね。正直飽きたなぁというのはありましたね。笑 あと、逗子鎌倉内で二つ拠点を持とうと思うと、全然コストが合わないんですよね。なので、逗子は出ようという話はしていました。」

おぎゆかさん「何年ぐらい逗子に住んでいたんですか?」

ミネシンゴさん「8年ぐらいですかね。2年1人暮らしして、6年妻と同棲したって感じです。」

おぎゆかさん「6年で飽きたと、、、笑」

ミネシンゴさん「そうですねぇ〜。僕が美容師を始めた2009年の時って、鎌倉も全然片田舎で、今みたいにこんなにお店が多くなかったんです。でも、ここ4~5年で盛り上がってきた。それに付随して、街並みが変わっていき、人がものすごい増えた気がしたし、なんとなく消耗されてる感も感じてたんです。」

町が変わることは、全てがプラスに働くわけではありません。人によっては魅力が失われていくことにも繋がり、去ってしまう人も現れる。ミネシンゴさんの話は、その話そのものだと感じました。場所の居心地は人によって異なる、十人十色なものなんですね。


余白の時間を欲していた

ミネシンゴさん「最近よくある、”丁寧な暮らしをしたい!”というのは僕らにはほぼなくて、畑もしないし、釣りもしないんです。でも、東京とうまく付き合える距離感とか、自分自身の時間、考える時間が欲しいと考えると、三崎が肌に合ったっていう気がします。もちろん通勤時間とか増えましたが、今の方が圧倒的に気持ちがいいですね。」

タクロコマさん「内省する時間が増えたってことですか?」

ミネシンゴさん「そうですね。車で都内に行くケースが増えたんですけども、やっぱその時間(移動時間)とか良いし、1時間30分あるんですけど、車の中には自分しかいないんで、考え事がすごいしやすくなったっていうのは、ありますね。」

自分の時間が欲しかったとミネシンゴさん。これは、まさに余白を求めていたというなんだと思います。最近移住という言葉をよく耳にしますが、ミネシンゴさん同様に、この余白を求めている人は少なくないと個人的には思っています。一緒に参加していた友人はこんなツイートを。

余白があるからこそ、クリエイティブは生まれる。出版社という、クリエイティブが要求される業界だからこそ、三根夫妻は、この選択ができたのかな?と少し思いました。私自身もこの”余白”は意識していて、なるべく”余白”をつくる生活、余白のあるライフスタイルを心掛けたりしています。


自分のベスポジを追求する

タクロコマさん「住まいを考える上で大切な基準って何ですか?」

三根かよこさん「私たちはきっちりあるというより、身体的なベスポジみたいなのがあると思っています。東京までの距離だけのベスポジっていうとそれとは違って、人ぞれぞれ違うベスポジがあると。これまではそのベスポジを探っていました。東京が勤務地だということとか、働き方とか、家族がどこに住んでいるかとか、それら全てを加味した時のベスポジを考えた時、どうやら三崎が一番いいぞ!とやじろべえが立ったみたいな感じがあっただけで、人によっては、長野行ったり、青森行った方が合う人はいると思っていて。そこを探りながらずっと彷徨っていて、不時着したのが三崎という感じなんです。」

住む環境のベストポジションは人それぞれだと、独自の表現をした三根かよこさん。様々な条件をポジションと捉え、それのベストを追求していく。まずは自分自身のベストポジションはなんなのか?ここを明確にする必要があるということですね。

ミネシンゴさん「東京が大好きなんですよ。笑 2人とも東京好きなんです。なので、脱東京!VS東京!みたいなのは全然なかったです。東京にある美術館やらは三崎には一個もないですからね。東京って小エリアで面白いじゃないですか。浅草や銀座とか全然違うし、全部小エリアで面白い。それが(東京の)すごいところだと思っています。なので、”東京離れてどうですか?”みたいなこと聞かれた時も、あんまり実感値がないんですよ。(東京にいる時と)一緒じゃない?みたいなスタンスでいるので。」

移住する人って、よく地方と比較して東京をマイナスに捉える発言する方を見かけますが、三根夫妻はそうではなく、どちらも好きだと。だからこそ、東京に行こうと思ったらいつでも行ける三浦に、魅力を感じたのかもしれません。その場所にはあるオリジナルな良さは、見失わないようにしたいですね。

三根かよこさん「私たちがいつも思うのは、人それぞれ、何に?どこに?心地いいと感じるかは違ったりする。地方に行けば幸せ、東京にいれば消耗するとか、そういうのは違っていると思います。自分のベスポジ、自分の心地よさに耳を澄ましていなければ、どこに住んでも何か疲れると思うんです。」



三崎に来た目的はなかった

タクロコマさん「三崎の移住について、攻めの意味合いはありますか?」

三根かよこさん「ないですかね。何らかのそこで事業を起こしたりとか、町に能動的に関わっていくというのはなかったです。どちらかというと、守りの面で”今の環境が良くない”とか言いながら、自分の時間、家族の時間を確保するという意味が強かったですね。守りがちゃんとしないと攻められないから、さっき言ったベスポジみたいなことで守りを確保した方が、より攻める体勢が整いやすいかなと。」

攻めるにはまずは守りでしょ。という三根かよこさん。現在やっている「本と屯(たむろ)」も、予定調和的に実施したのではなく、結果的に住民に受け入れてもらえたのだといいます。(「本と屯(たむろ)」についてはこちら!

ミネシンゴさん「引っ越して1週間ぐらいした時に、市長が来たんですよ。そこで”本と屯の目的は何なんですか?”と聞かれたんですけど、目的何も考えてなかったんです。”無目的です”って言ったら、固まってて。笑 なんか皆んな目的意識が強いじゃないですか。こういうことがしたい!移住者増やしたい!単価上げたい!そんな理由で皆んな動いていると思うんですけど、そういうところではないなという、一つだけ答えを持っています。なので、あえて無目的ですと言いました。無目的の中から、何か生まれるんじゃないか?と思っています。」 

目的意識がないからこそ生まれるものがある。そこから、考えもしないことが起こることがある。とミネシンゴさんの価値観は、とてもナチュラルで、不思議と説得力がありました。この考えって東京ではなかなか生まれないものだと思いますし、それもやはり、余白が関係してくることなんでしょうか。余白からクリエイティブが生まれるように。


ウェットな関係性

ミネシンゴさん「僕ってめちゃめちゃふるさと難民なんですよ。いわゆる地方のおじいちゃん家というものがなくてですね。そういう家族付き合いとか、親戚とか、ウェットな付き合いっていうのがなかったんです。逗子でもそれはなくて、鎌倉にもありませんでした。それが、三崎に行ったらあったんですよ。漁師さんのおじさんとか、地元のおっさんとかと毎日飲んでるんですけど、もうめちゃめちゃ”ふるさとがあったー!”って感じれて。逗子とは全然違った居心地の良さがありました。」

これまでなかったコミュニケーション、関係性が三崎にはあった。そう話すミネシンゴさんは、とても和やかな表情をしていました。まるで求めていたものがそこにあったような。ウェットな関係は、地方だからこその魅力ですし、多くの人数が集まる都市ではなかなかないもの。コミュニティ、小さな経済圏だからこそ、あるものかもしれません。


まずは町への愛着を

三根かよこさん「頼られるとやる気になるんですよね。”来てくれたー!”ってなると嬉しいですね。人間ってやっぱ何かの役に立ちたいと思ってますし、自分たちが移住して来ることを、市町村が喜んでくれたら、、ね。ただ、これまでは”行政に利用されてそう、、、”みたいな気持ちは強かった。それが、嬉しい!と言われた時に”三浦市のために何かしたいな”と思いました。それは、住んだ後の話で。いきなり〇〇をしてくれ!と言われてもきっと動いてなかったと思います。愛着が出た→〇〇をしたい!という順番なんですよね。住む人がその場所に愛着が芽生えて、その町のために何かしたいという気持ちが芽生えるのかなと。」

ミネシンゴさん「逗子にいた時は求められてる感というのはなかったけど、三浦に来たらそれがあった。それもあったから、応えようという気持ちになった。それが自然な流れなのかなと。」

愛着なしに、町への協力はなかなか難しいとのこと。それは人間として、誰しもが感じることだと思います。信頼していない人の言うことは、なかなか聞けないものです。移住する側だけでなく、受け入れる側のスタンスや対応も気をつけていきたいところですね。


外来種なりのコミュニケーションを

三根かよこさん「それぞれの町には歴史もあるし、過去の記憶の蓄積とか、伝統とか色々なものあるわけです。それを外来種として、それらを加味せずに中に入ろうとすると、そこで反発が起きるんですね。でも、私たちの場合は、出版社でかつ3,000冊ぐらいのいい本と共にやってきて、子供達がそこで読んでるみたいな光景を大人の人たちが見たら”いい若者がきた”みたいになりやすいというのはありますよね。外来種なりの配慮みたいなものは、町の人たちにうまく溶け込むために必要なのかなと。自分がその町の点として参加するには、そういうところの加味がないと、いじわるなことをされたりする。町の人たちはそういう細かいところを見ていると思うので、そこは気をつけましたね。せっかく移住するなら、その町で一緒に何かした方がきっと楽しいから、その町の人たちの気持ちを組んでみると、いい感じに扉が開いてくると思います。」

中に中のルールがある。それを外からいきなり変えようとすると、どうしても反発が起きてしまう。これって地域コミュニティにとって、よくある壁なのかもしれません。コミュニケーションやスタンスを間違えてしまうと、うまくコトが運ばないということですね。


最後に

以上が三根夫妻のリアルな声でした。

このような移住される人たちを巻き込んで、地域コミュニティが作られることも少なくないと思います。住民の方だけではなく、移住者に対して耳を傾け、そこの良さを生かすことができれば、より良いコミュニティになると思いました。今回の読み取れる地域コミュニティに携わるものとして、必要な考え方としてはこのようになるのではないでしょうか?

・移住者を含む、住民間コミュニケーションハードルをいかに下げられるか

・外から来た人間としてのコミュニケーションを気をつける

・地域に愛着のない人間を、いきなり無理に巻き込まない

結局、人の集まりがコミュニティなので、人対人のコミュニケーションに問題が全て集約されるんだと思います。双方がいかに相手の気持ちを考え、コミュニケーションが取れるか?ここをおろそかにしてしまうと、何事もうまく進んでいかないと思います。

また、三崎の直前である三浦海岸まではよく行くのですが、この機会に三根夫妻に会いに三崎デビューしようと思います。一緒に行きたい方募集しています!

以上、前編をお送りしました。後編もお楽しみに!それでは!


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