「では」で語るか、「とは」で語るか。佐渡島庸平×石川善樹×羽賀翔一 #コルクラボの温度

こんにちは!『コルクラボの温度』note編集部員のくりむーです!

今回は、感情ミーティングシリーズの第7弾。
コルクの佐渡島庸平(サディ)が、友人であり予防医学研究者である石川善樹さん、漫画家の羽賀翔一さんとともに、平野啓一郎さんの小説『ある男』について語る「『驚き』について(3/3)」をお届けします。

――小説やマンガは、常に「とは」を問いかけるもの
――「とは」があるから「驚きが生まれる」

「では」と「とは」の違いを考えながら、「驚きとは何か?」について話を展開していく。

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(これってどんなnote?)コミュニティを学ぶコミュニティ「コルクラボ」のメンバーが運営している音声番組「コルクラボの温度」。PodcastやVoicyでコミュニティやコルクラボに関することを配信しています。noteでは、「コルクラボの温度」で配信した音声の記事化、その他関連情報などをお送りしていきます!

(今回はどんな記事?)2月8日にPodcastやVoicyで配信した内容を、テキストにしてご紹介します!

▼音声(Voicy)

▼音声(コルクラボの温度 公式サイト)

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強い感情の前には常に「驚き」がある

羽賀:昔、佐渡島さんが話していた「どんな感情も必ず、驚いてから悲しむとか、驚いてから喜ぶのが基本」って言っていたのがすごく印象に残ってて、漫画のコマ割りでも、喜ぶ顔を書くときも、その前に一回驚くコマを入れるかどうかで、全然感情の流れの感じ方が変わるなあ!って。

サディ:驚きだけ、いろいろある感情の中で質が違うよね! 驚きだけ短くない? 長く続きにくいっていうか。

石川:たしかに! 一瞬だよね。

羽賀:驚いた後に、感情が来る。

サディ:そう!

石川:「アハハ」っていう笑い声って、「ア」が驚きで、「ハハ」は「ハハァー」のような納得なんだよ。驚いた後に納得すると、人は「アハハ」っていう感じになる。簡単に言うと、これはボケとツッコミなんだって! ボケは「ア」という驚きで、ツッコミがあって初めて「ハハ」っていう笑いになる。

日テレの土屋敏男さん(電波少年のプロデューサー)と「笑いとは」って話をしてるときに、「笑いってボケとツッコミだと思ってるだろ?違うんだ。うまい芸人ってのは、ボケる前に『普通』って状況を作るんだ」って言ってて。驚きっていうのはギャップだから、「普通が何か」を設定した上で、漫才が始まるって。

漫才は観客が「笑わせてくれるんだろうな」と期待してる状態で始まるんだよね。だから、まず一回普通に戻すんだって! 例えば「小学校の頃こんなことありましたよね」みたいな、まず普通のことを絶対言うよね!

サディ:驚きってさ、感情というより、予想外のことが起きている状態だよね。「全ての強い感情が起きる前に常に存在する状態」が驚きで、ポジティブ感情の一つと言ってもいい気はちょっとする!

石川:アメリカでいう“surprise”が、そういう感じだよね! その場合の驚きって、ポジティブな文脈で使われるんだろうね。いわゆるネガティブな意味での驚きって言うのは、「怖い」っていう感覚、「恐怖」みたいな感情になるんだと思う。驚きと納得がセットで、それが笑いになるとポジティブな感情になる。

サディ:物語だとさ、「普通に戻す」っていうのは「設定」なんだよ。読み手が「設定」をすぐにわかるかどうかっていうのが、すごく重要で

例えば宇宙兄弟って「月には行けるけど、どれくらい科学技術が進歩した状態か」って、読むときに考えなくていいんだよね。マトリックスとか、バックトゥザフューチャーがよくできているのが、あの作品の中で、どれくらいの科学技術がOKなのか、かなり早く伝わっているところ。

石川:この世界観ではこれが普通です!っていう?

サディ:そうそう! 物語を楽しんでもらうためには、出てくる困難の程度がいい感じじゃないとだめなんだよね。「それ大変すぎて絶対無理じゃね?」って読み手が思っちゃうと、「主人公が出来るかどうか気になる!」っていうところまで行ってもらえないから。


「では」と「とは」

石川:驚きを与えるときに、世の中には二種類の人たちがいると思ってて。「では派」の人と「とは派」の人がいると思ってるんだよね。

「では派」の人は、「○○では」って自分がどこかから仕入れてきた話をずっとするんだよ。「シリコンバレーでは」とか。「では派」の人と話しても、あまり驚きはなくて「へー」で終わる。

でも、例えば「ヒットとは」って話をしてると、お互いが分からないまま話が進んでいくから、どこかでお互い驚くみたいなことがあるわけだよね!

さっきの「愛にとって過去とは何か」っていう話も、進めて行ったら「過去を見ると未来も見えるんじゃないか」ってなったけど、それを言った僕自身も、言いながら驚いてるの! で、佐渡島君もみんなも驚くってことが起きると。

「とは派」の人は驚きやすいんだと思う。でも、自分の知ってることを出そう出そうとする「では派」の人は、自分が知ってることを話すから、自分自身が驚かないし、相手も驚かない。

サディ:「へー」は驚きじゃないってことか!

石川:「へー」は単なる納得だよね。いつか、世の中に大きく打って出たいと思ってる!

サディ:「では派」と「とは派」を?

石川:そう!「では派」と「とは派」。

サディ:「普通とは」について考える『ある男』を作るときも、ここにある物語、それ一つで十分だよね。「○○では」っていう話を色々出してくるんじゃなくて。

同じように、「兄弟の友情とは」とか「チームとは」について考える『宇宙兄弟』は、その「とは」に対する一つの物語だけがある本なわけで、その『宇宙兄弟』を題材に別の本を作ろうと思ったら、「『宇宙兄弟』から感じられる「とは」についての本」を作らないといけなくて、そうすることで『宇宙兄弟』そのもののブランドも上がるんだよね! その中に様々な「では」を持ってきてはやっぱりだめで、『宇宙兄弟』を題材にしたその本の品格が落ちてしまう。

石川:「とは」の本って、「何が普通なのか」っていう状況設定が必要だから、けっこうむずいんだよ。多くの人が納得のいく点をポーン!と打つことって、難しいから。

サディ:結構みんな、本を作るときも「とは」じゃなくて「では」の本を作るっていうのをやりがちだと思う。

(コミュニティについて書いた)『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE』は、僕が喋ったことを元にライターさんが書いてくれたままだと、「コルクラボでは」の事例がいっぱい入ってきちゃって、「では」のままだとブログっぽく感じちゃうし、できるだけ「では」を「とは」に変えようと思って、「自分の一次情報と感情」のエピソードだけが具体例で入るように変えていったんだよね!

「では」の文章は、読んだ瞬間に消費するから、誰が言っていたかを忘れる。だから「では」の本はすっごく残りにくい。世の中で定期的に流行る英語とか、ダイエットのヒット本ってのは、全部「では」の本だと思う。

石川:すっと入るものは、すっと出ていくからね。

サディ:それに対して小説とかマンガがやろうとするのは、常に「とは」を問いかける行為だと思う。

石川:読み手と書き手が一緒に物語の中を歩んでいくんだよね! お互いわからない領域に一緒に行くから、長い間付き合っていられる。

サディ:たしかに! 「とは」と「では」の違いってわかりやすいね!


「とは」があって初めて「驚き」になる

サディ:「では」論だと「肩書きによるマウンティング」が起きるよね。情報自体でこっちの「では」の方が上位だって言えないから、この人が言ってるから上だとか、ここの立場から言ってるから上だってなる。

石川:「とは」は「では」とは違って、生々しい自分の体験とか、感情をベースに語るんだよね。そこからしかできないんだよ、「とは」は。

サディ:俺がチェックしてダメって言う漫画って「では」の話なんだよ。ダメっていうのは、ほとんど「とは」で話してくれってことだよね。

石川:この「とは」の話、実はおととい思いついたんだよね!(笑)

あるパーティで出会った人が「スウェーデンでは…」を一時間くらい喋ってて。「スウェーデンでは…」「それに比べて日本はだめだ」「スウェーデンでは…」っていう話を延々と聞きながら。その人に「どうしたらいいんですか?」って聞いてもアイデアはないんだよ。

でも何とかしたいから、その人は「スウェーデンでは…」って言ってるんだよね。じゃあどうしたら話が盛り上がるかな?って考えて、「スウェーデンとは何でしょうね?」とか聞いたらいいかなって思ってさ!

サディ:「とは」に置き換えるってことだね! 俺の質問が圧迫感あるって思われることがあるんだけど、それって相手の質問を「とは」に置き換えるからなのかもしれない。

石川:そうすると、言われた側はどこから考えていいかわかんないんだよね。 慣れてないと「とは」で話せない。

羽賀:でも、「では」だけで会話していると何も深まらないっていうことですよね?

サディ:そう! 会話の中で相手への興味も持てない! 俺って名前を覚えることができる相手と、覚えられない相手がはっきり分かれてて、その違いを説明出来ないかな?って思ってたんだけど、会話が「では」の人は覚えないんだよね。

羽賀:その人の意見じゃないってことなんですかね?

サディ:そうそう! 「Slackだっけ?Chatworkだっけ?」みたいな感覚で、「あの情報言ってた人誰だっけ」ってなるのは、その人自体がSlackやChatworkと同じ扱いだよね。

石川:たとえばさ、政治家の小泉進次郎さんって「とは」の人だよね!

選挙で自民党が大勝して、出演したニュース番組で「自民党大勝ですね。国民の期待にどう応えますか?」って話をふられたとき、普通の政治家だったら「ありがとうございます。まだまだ至らないところもあるので、これからも皆様の声に真摯に耳を傾けて…」って、どうでもいい話をするところを、進次郎さんは「政治における勝利とは何でしょうか」って言ってて。「政治における勝利とは、選挙に勝つことではない。この国の持つ可能性を最大限に引き出せたかどうかなんです」って。すごいよね!

あと、プロゲーマーの梅原大吾さんも「とは」の人なんだよ! ほとんどのゲーマーは、勝つためには何が必要かって考えてる。でも、梅原さんだけが「強さとは何か」ってずっと考えてるんだよね!

サディ:講談社に入った時、初めは「ヒットマンガを作るには?」ってことを学べるから、楽だと思ってたんだよ。「とは」で言うと「ヒットマンガとは」かもしれないけど、それって技術の積み重ねだから「とは」とも違ってさ

いまになって「マンガとは」ってことを考えると、「2コマになって初めてマンガになる」とか「枠がないとマンガではない」とかっていう概念にたどり着くんだよね。そうやって「エンタメとは」とか「遊びとは」って考えられるようになったのは独立してからかな。

石川:いまこそ「とはとは」っていう本を作りたいくらいだよね!(笑)

サディ:いいね、それ!(笑)「では」は驚きにはならなくて「とは」があって初めて驚きになる。いい締めになったね!

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編集後記

なんと今回の文字起こしは、いつもコルクラボの温度を聞いてくださっているリスナーさんがしてくださいました!こうやって関わっていただけるのは、本当に嬉しいです!
いしさん、ありがとうございました〜!

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各種担当者
●文字起こし:いしさん

●編集:くりむー

●投稿:くりむー

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