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初秋のとき


秋がやってきて
夏の影を踏んだ
驚いた影の主は秋に振り向き
君はまだ早いと言うように
秋の目を見た

言葉にならない言葉で
ぼくに悟られないように
夏風にさらっと言った風は
ぼくの耳元でささやき
やがて去って行った

居座った夏は容赦なく
日差しを投げ込んで
地上を燃やし肌を刺す
渇いた悲鳴も届かぬふりをして
残された夏時間を燃やす

秋はその傍らで
粛々と準備をはじめ
片時も自覚を忘れない
宣言するまでもなく
少しずつ季節を進めながら

やがてくるその時まで
夏の影を踏まぬように
そっと存在を薄くして
さわやかな佇まいを纏ったまま
じわじわっと夏を取り囲んだ

気づけば空に誰かの足跡がついた
白い雲に凹みがあちらこちらに
わか雨が上がったから
嬉しくなって走り回ったのか
ベタベタ走りのサイン

きれい好きな風がやってきて
そのサインを消していく
雲にふくよさが戻ってきたら
形を変えて浮かんでる
そこに夏の影はない

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