Quad Jey

Instagram: @qj_335 "All journeys have…

Quad Jey

Instagram: @qj_335 "All journeys have secret destinations of which the traveler is unaware." Martin Buber

マガジン

  • 冬の散歩道

  • あいうえお物語

    あいうえおを網羅した登場人物。実はたいして意味はない。

  • こいのはなし

    恋の予感。あるいは残滓。

記事一覧

1. The Secret Destinations

国内線の飛行機に乗るのは久しぶりだ。 この20年間の間に、国際線に乗ったことはそれこそ3桁を下らないが、国内線に乗るのは生まれて4度目、しかも5年ぶりくらいだ。なの…

Quad Jey
7年前
4

冬なのに

オフィスに戻ると、先ずは秘書のルキノが座っている。うちの会社はアメリカの西海岸で生まれた会社だから、本社に行ってもみんなのファッションはとてもカジュアル。当然、…

Quad Jey
7年前
4

Ever losing memories.

彼女と別れてから、3年近く経った。 「別れても、友達だからね。多分、映画とか、音楽の趣味があなた以上に合う人なんていないから、これからも付き合ってね、友達として…

Quad Jey
8年前
10

Last two letters..

教室を後にして、色紙の寄せ書きと、皆からの手紙が入った大きいA3サイズのマチ付きの封筒を手にして、僕はバスに乗った。 寄せ書きは、真ん中に円い余白を残して、そこに…

Quad Jey
9年前
5

何のまえぶれもなく。

季節が換わったので、今日は夏用のスーツを今シーズン初めて着た。お気に入りの服を身にまとう女子が、少し自分がきれいになったと思うように、今日の僕はいつもよりも背筋…

Quad Jey
9年前
4

久々のふたり

自分が晴れ男か雨男かしらないけれど、久々のその日は晴れていた。 南青山の美術館の前の車が往来する都道413号線がゆるやかに北東に折れるあたりからひょいと一本裏通り…

Quad Jey
9年前
4

Run for your Life.

《小説》 『リキは言った。 「境界線がさ。」 「境界線って?」 サキは聞き返した。 「子供の頃に、」 リキはいつもそうであるように、サキの問いかけには答えずに、…

Quad Jey
9年前
4

かけひき

《小説》 ユキは言った。 「この前、あなたが言っていたことについて考えてみたの。」 「どんなことだっけ?」 「あなたは、女の人と知り合って、少し言葉を交わすと『…

Quad Jey
10年前
5

僕の上で

《小説》 ミキは言った。 「わたしのどこが好き?」 「鎖骨から頸のあたりの白い肌。」 「だと思ったわ。」 「それにO型だしね。」 「あなたはB型。」 そう言って見…

Quad Jey
10年前
3

Un homme et une femme       〜オトコとオンナ〜

《小説》 マキは言った。 「もし犬を飼うとしたらどんな名前にする?」 「うーん、『ネコ』かな?」 「なにそれ?」 「そして子猫も一匹飼って『イヌ』にする。」 「…

Quad Jey
10年前
4

オトナの学校

《小説》 ハキは言った。 「今まで言われた中で、一番グッと来た口説き文句ってどんなの?」 僕は2秒ほど考えた。 「ある日、東銀座で打ち合わせがあって、終わったら…

Quad Jey
10年前
3

モトヒコのその後

《小説》 ニキは言った。 「もう、セナの事故から20年が経つんだな。セナの死のように、多くの人が何年も前のある特定の日、自分がどこで何をしていたのかを忘れない、と…

Quad Jey
10年前
3

悪いことに。。。

《小説》 トキは言った。 「お前さぁ、あのガイジンみたいな、綺麗な子と別れたんだって?」 「ああ。別れたっていうか、ある日突然、煙みたいに跡形もなく消えちゃった…

Quad Jey
10年前
3

時と場合。

《小説》 サキは言った。 「もし、私が実は男だって言ったらどうする?」 え? 今、僕はベッドの上でサキと抱き合っている。彼女(か、彼女だよね)と抱き合うのはこれ…

Quad Jey
10年前
2

SABI TETSU ONANDO

《小説》 キキは言った。 "Why don't you smile a little bit more happily when you see me?" 言った、と書いたけど、正確には「多分、そんなことを言った」というとこ…

Quad Jey
10年前
3

288枚目のアルバム

《小説》 アキは言った。 「アタシと一緒にいる時は、ジミヘンとフランク・ザッパと、キング・クリムゾンは聴いちゃダメ。」 アキが、嫌いなくせにどうしてそういう音楽…

Quad Jey
10年前
3
1. The Secret Destinations

1. The Secret Destinations

国内線の飛行機に乗るのは久しぶりだ。

この20年間の間に、国際線に乗ったことはそれこそ3桁を下らないが、国内線に乗るのは生まれて4度目、しかも5年ぶりくらいだ。なので「どうも飲みかけのペットボトルの持込みがOKという様に説明が読めたのだけど本当にOKなの?」と行列の前に並んでいた、旅行中のオランダ人の女の子に質問されたときに、「わからないから聞いてみるよ」というマヌケな返事しかすることが出来なか

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冬なのに

冬なのに

オフィスに戻ると、先ずは秘書のルキノが座っている。うちの会社はアメリカの西海岸で生まれた会社だから、本社に行ってもみんなのファッションはとてもカジュアル。当然、青山にある日本法人のオフィスだってドレスコードなんてものはあってないようなもの。

で、僕が、裏にゴム引きがしてあるウールのコートの襟を立てて、更にマフラーをぐるぐる巻きにして、R246沿いの歩道を、真正面からかなり強く吹きつけてくる木枯ら

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Ever losing memories.

Ever losing memories.

彼女と別れてから、3年近く経った。

「別れても、友達だからね。多分、映画とか、音楽の趣味があなた以上に合う人なんていないから、これからも付き合ってね、友達として。」と、陳腐な台詞を言い放ったのは彼女の方だった。

僕は正直なところ、会えば、抱きしめたくなるだろうし、キスだってしたくなるだろうし、それに言うまでもなく、それ以上のことを望んでしまうだろうし、無理だよ、無理!って、思ってた。

国語の

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Last two letters..

教室を後にして、色紙の寄せ書きと、皆からの手紙が入った大きいA3サイズのマチ付きの封筒を手にして、僕はバスに乗った。

寄せ書きは、真ん中に円い余白を残して、そこに僕の名前と、クラスの3Bという文字がカリグラフィーというには稚拙すぎる、しかし気持の入った装飾文字で描かれていた。

バスに揺られながら、汚い字の男子のあたりから眺めだしてゆっくりと、女子の書いた文字の方へと色紙を回転させながら読む。男

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何のまえぶれもなく。

季節が換わったので、今日は夏用のスーツを今シーズン初めて着た。お気に入りの服を身にまとう女子が、少し自分がきれいになったと思うように、今日の僕はいつもよりも背筋が伸びて、清潔な印象を与えているのだろう、と勝手に思っている。

仕事が終わり、僕は井の頭線を降りて吉祥寺で中央線に乗り換える前にちょっとだけアトレに立ち寄った。アトレはJR東日本の子会社が経営しているショッピングモールだ。

お菓子のスタ

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久々のふたり

自分が晴れ男か雨男かしらないけれど、久々のその日は晴れていた。

南青山の美術館の前の車が往来する都道413号線がゆるやかに北東に折れるあたりからひょいと一本裏通りに入る。

緑の多い、窓の大きな建物に入ると、正面には階段があって、右手にはぎっしりと本が詰まった書架が、右手には一段下がった空間が広がっていて、真ん中に木製のテーブルがおいてある。

そこに久々の僕らは並んで座ってメニューを見た。

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Run for your Life.

《小説》

『リキは言った。

「境界線がさ。」

「境界線って?」

サキは聞き返した。

「子供の頃に、」

リキはいつもそうであるように、サキの問いかけには答えずに、何かをその意識の焦点で捉えたかのように続けた。

「(子供の頃に、)父さんが買ってきてくれた、ヨーロッパの木版画の画集のあるページに描かれていた絵を見てさ。それが何年ものあいだ、頭を離れなかったんだよ。」

「どんな絵だったの?

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かけひき

《小説》

ユキは言った。

「この前、あなたが言っていたことについて考えてみたの。」

「どんなことだっけ?」

「あなたは、女の人と知り合って、少し言葉を交わすと『ああ、いつかこの子とするなぁ』とか『かなり仲良くなるけどきっとすることはないなぁ』ってのがわかって、これまでそれは外れたことがない、っていう話。」

「あぁ、その話か。うん、実際にそうだからね。」

「でも、確かにその相手とつきあう

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僕の上で

《小説》

ミキは言った。

「わたしのどこが好き?」

「鎖骨から頸のあたりの白い肌。」

「だと思ったわ。」

「それにO型だしね。」

「あなたはB型。」

そう言って見下ろしたミキの額にウェーブのかかった前髪がかかった。

窓からは朝の光の粒が飛び込んできていて、身体の輪郭にそって後光が差し込んでいた。

窓は30cmほど開いていて、そこから吹き込んでくる初夏の風がレースのカーテンを、まだ

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Un homme et une femme       〜オトコとオンナ〜

《小説》

マキは言った。

「もし犬を飼うとしたらどんな名前にする?」

「うーん、『ネコ』かな?」

「なにそれ?」

「そして子猫も一匹飼って『イヌ』にする。」

「冗談としても面白く無いわよ。」

「そして、僕に子供が生まれたら、その子が言葉を覚える過程で、『犬がネコで猫がイヌで。。。あれ?』って混乱するんだろうなぁ。」

「。。。アタシが小さい頃から気づいている秘密があるんだけど。」

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オトナの学校

《小説》

ハキは言った。

「今まで言われた中で、一番グッと来た口説き文句ってどんなの?」

僕は2秒ほど考えた。

「ある日、東銀座で打ち合わせがあって、終わったら午後4時くらいだったんだ。少し早いので、近所に住んでる女友達に連絡を取って夕方から2人でお寿司を食べに行ったんだよ。」

「随分と早いわね。」

「うん。思い立って連絡したら、彼女もたまたまスケジュールが空いていたということでラッキ

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モトヒコのその後

《小説》

ニキは言った。

「もう、セナの事故から20年が経つんだな。セナの死のように、多くの人が何年も前のある特定の日、自分がどこで何をしていたのかを忘れない、という、そういう印象を遺すというのはすごいことだよな。」

ニキと僕は大学1年の時に出会った。ニキの苗字は二木(ふたつぎ)という。当時僕らは彼に「ゴルフ」というアダ名をつけた。最初にゴルフと呼んだのは僕でそれが広がったのだった。しかし、

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悪いことに。。。

《小説》

トキは言った。

「お前さぁ、あのガイジンみたいな、綺麗な子と別れたんだって?」

「ああ。別れたっていうか、ある日突然、煙みたいに跡形もなく消えちゃったんだよ。一説によると、イギリスに行ったとかなんとか。。」

「今だから言うけどさ、なんであんな子がお前と付き合ってたんだか不思議でならなかったんだよな。」

そういうと、トキは意味ありげにニヤリとした。トキの本当の名前はトキオという。

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時と場合。

《小説》

サキは言った。

「もし、私が実は男だって言ったらどうする?」

え?

今、僕はベッドの上でサキと抱き合っている。彼女(か、彼女だよね)と抱き合うのはこれで2度め。この前はベロンベロンに酔っ払っていたし、真っ暗で、事が終わると夜のうちにホテルを出たから、正直言うと僕は、サキのあんなところだとかこんなところをマジマジと確認したわけじゃない。

でも、なんだってまたそんなことを、今このタ

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SABI TETSU ONANDO

SABI TETSU ONANDO

《小説》

キキは言った。

"Why don't you smile a little bit more happily when you see me?"

言った、と書いたけど、正確には「多分、そんなことを言った」というところだ。僕はボーっとしていたし、キキはリスがドングリをカリカリと齧る(実際のところリスがドングリを食べるのかどうか僕は知らないけれど)ように、スタタタタ、とスタッカートが効

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288枚目のアルバム

《小説》

アキは言った。

「アタシと一緒にいる時は、ジミヘンとフランク・ザッパと、キング・クリムゾンは聴いちゃダメ。」

アキが、嫌いなくせにどうしてそういう音楽を知っていたのか?いや、最初はあの子はこういう音楽のことは全然知らなかった。僕が初めて彼女の部屋に行った時、彼女の部屋には品の良い音楽のCDが15枚くらいあっただけだった。品の良い音楽、というのも極めて主観的な僕の言い分だろうから、君

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