朝、昼、夜のなかで、特別に夜が好きだという訳ではないけど、なんとなくいいなと思う瞬間がある。

時間にゆとりがある夜に、考えを巡らせたり感傷的な気分に浸ったりするのが好きなのかも知れない。

この前、ビルの外階段から空を眺めていて、ああ綺麗だなと素直に思った。

左を向くと、浅葱色のような、夕暮れの面影を残した青。
右は、濃藍が下りる前の、夜の群青。
その間に広がる穏やかな色合い。

日本語には、独特な名前で数えきれない種類の色があると言うけど、いちいち感じる風情や感動を表現しようとしたら、色なんていくつあっても足りないんじゃないかとすら思う。

別の日の帰り道、ラフな格好で歩いている人を見かけた。

大きめで薄手の白Tシャツに、黒いジャージのズボン。

ふと目に入った後ろ姿、Tシャツの裾からタオルが垂れていた。ように見えた。

見間違いかも知れない。
タオルをジャージの腰ゴムに挟んでいたのかも知れない。

だが私には、どことなく尻尾のように見えた。

夜の住宅街でこっそり大人の尻尾取り大会でもしてるのかな、なんて馬鹿なことを考えながら、横目で見送って帰路についた。