COWS

幼い頃はこの世のすべての映画を見てやろうと息巻いてましたが、年を重ねるとそんなこと不可…

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幼い頃はこの世のすべての映画を見てやろうと息巻いてましたが、年を重ねるとそんなこと不可能だという現実に気付かされます。それどころか見た映画の記憶さえだんだん薄れていく。あんなに大好きな作品だったのにーーーせめてもの抵抗として、記録していきたいと思います。ほぼ自分のためだけに。

最近の記事

トニー・スコット監督作を一挙振り返る

先日、CINEMORE編集部の依頼を受けて、トニー・スコットが遺した監督作16本(厳密にいうと、初期にはTV映画なども撮っていたので、”劇場長編監督作”ということになるかと思いますが)について一挙に振り返って記事作成してみました。 作品によってはだいぶ私の記憶が薄れていたものもありましたので、とりあえず全作品を見直して、なおかつ手持ちの資料を読み直した上で、各レビューを執筆致しました。 すでに鑑賞済みの方(あるいはファンの方)の脳裏に各々の映画の興奮と舞台裏が蘇るような筆

    • 近所のシネコンで『ブラックパンサー2』と『すずめの戸締まり』を。どちらも本当に素晴らしかった。前者には興奮し、後者には感動して涙がこぼれた。まだ余韻が響き続けている。画像は入場時にもらった冊子。

      • COMAPNY TANK11月号「シネマでひと息」

        COMPANY TANK11月号の「シネマでひと息」というコーナーで、今回は『アフター・ヤン』について取り上げさせていただきました。この連載も早いもので4回目。隔月発刊の雑誌なので、あと2回で1年がぐるりと廻ります。 毎回、編集担当の方と「次はどの作品で行こうか?」と頭を悩ませながら決めているのですが、他の映画メディアとは一味違う”おしごと系”の視点でのチョイス、執筆になるので、とても新鮮です。今回も「未来をどう予測するか」という目線でコゴナダ監督が映像に焼き付けた未来予想

        • 驚愕のラスト映画5選

          Safari Onlineで「驚愕のラスト映画5選」を執筆いたしました。すでに長らく続くシリーズ記事なのですが、これまで紹介されてきた45本に新たな5本が加わる形となります。 改めて鑑賞しなおした上で書かせていただきましたが、やっぱりどんでん返し系は書くのが難しい!その上、いろいろ気付く点も多く、すなわちこれらのジャンルは単にラストであっと驚かせるだけでは成立しないんですよね。それに至るまでの構成や整合性、テーマなど全てを総合的に組み上げていかなければ、名作の域には到底届か

        トニー・スコット監督作を一挙振り返る

        • 近所のシネコンで『ブラックパンサー2』と『すずめの戸締まり』を。どちらも本当に素晴らしかった。前者には興奮し、後者には感動して涙がこぼれた。まだ余韻が響き続けている。画像は入場時にもらった冊子。

        • COMAPNY TANK11月号「シネマでひと息」

        • 驚愕のラスト映画5選

          『あのこと』。痺れる映画だった。60年代のフランスで、成績優秀なアンヌが思いがけず妊娠し、たった一人で出口を探しもがく。眩い陽光さす中、後ろ姿を丹念に捉え、彼女の意識、思考、決意に寄り添うカメラ。自分にとってこんな映像体験は初めて。原作はノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノー。

          『あのこと』。痺れる映画だった。60年代のフランスで、成績優秀なアンヌが思いがけず妊娠し、たった一人で出口を探しもがく。眩い陽光さす中、後ろ姿を丹念に捉え、彼女の意識、思考、決意に寄り添うカメラ。自分にとってこんな映像体験は初めて。原作はノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノー。

          『少年たちの時代革命』鑑賞。素晴らしかった。香港の民主化デモを背景に、状況憂い自殺しようと彷徨う少女と彼女を救うべく奔走する若者らの群像劇。各々の個性、立場、境遇が的確に描かれ、たくさんの傷を抱えた彼らの胸の内側が際立つ。ラストの描写、添えられる一言に、胸がえぐられる想いがした。

          『少年たちの時代革命』鑑賞。素晴らしかった。香港の民主化デモを背景に、状況憂い自殺しようと彷徨う少女と彼女を救うべく奔走する若者らの群像劇。各々の個性、立場、境遇が的確に描かれ、たくさんの傷を抱えた彼らの胸の内側が際立つ。ラストの描写、添えられる一言に、胸がえぐられる想いがした。

          『ファイブ・デビルズ』を鑑賞。過去に何らかの悲劇に見舞われたらしい小さな町。母と幼い娘。ギクシャクした夫婦関係。一見、これらの要素がしっかりと細部を司り、不穏な物語をぐんぐん膨らませていく。常人離れした嗅覚能力を持つ娘が、思わぬ形で時空を跳び、母の過去と対峙する構造が面白い。

          『ファイブ・デビルズ』を鑑賞。過去に何らかの悲劇に見舞われたらしい小さな町。母と幼い娘。ギクシャクした夫婦関係。一見、これらの要素がしっかりと細部を司り、不穏な物語をぐんぐん膨らませていく。常人離れした嗅覚能力を持つ娘が、思わぬ形で時空を跳び、母の過去と対峙する構造が面白い。

          トルナトーレ監督によるドキュメンタリー『モリコーネ』を観る。音楽という名の船に揺られるようなひととき。157分、隅から隅まで名曲揃いで、一瞬たりともテンションが落ちない。いかにその作品にふさわしい音を創造するか。巨匠のこだわりと情熱、物腰の柔らかさに触れられる至福の一作だった。

          トルナトーレ監督によるドキュメンタリー『モリコーネ』を観る。音楽という名の船に揺られるようなひととき。157分、隅から隅まで名曲揃いで、一瞬たりともテンションが落ちない。いかにその作品にふさわしい音を創造するか。巨匠のこだわりと情熱、物腰の柔らかさに触れられる至福の一作だった。

          『犯罪都市 THE ROUNDUP』鑑賞。マ・ドンソクの型破りな刑事ぶりが今回も魅せる。コンビネーション抜群の同僚どうしのセリフ応酬に笑わせられ、かと思えば悪人による残忍犯罪と死闘アクション、そのさらに上をゆくドンソクの鉄拳がすごい。https://hanzaitoshi.jp

          『犯罪都市 THE ROUNDUP』鑑賞。マ・ドンソクの型破りな刑事ぶりが今回も魅せる。コンビネーション抜群の同僚どうしのセリフ応酬に笑わせられ、かと思えば悪人による残忍犯罪と死闘アクション、そのさらに上をゆくドンソクの鉄拳がすごい。https://hanzaitoshi.jp

          『ノースマン  導かれし復讐者』試写した。『ライトハウス』のエガース監督が破格のスケールとズシンとくる映像感覚で紡ぐ壮大な叙事詩。数百人がうごめく戦闘シーンをゆっくりと横滑りしながら長回し活写するカメラには息を飲む。スカルスガルドの肉体、殺気走った目もすごい。ビョークも出るよ。

          『ノースマン  導かれし復讐者』試写した。『ライトハウス』のエガース監督が破格のスケールとズシンとくる映像感覚で紡ぐ壮大な叙事詩。数百人がうごめく戦闘シーンをゆっくりと横滑りしながら長回し活写するカメラには息を飲む。スカルスガルドの肉体、殺気走った目もすごい。ビョークも出るよ。

          『ケイコ 目を澄ませて』鑑賞。岸井ゆきのの存在感、強靭な身のこなしに圧倒される。これはすごい。聴覚障がいを抱えたボクサーが、人々と関わり合いの中でどう変わっていくのか。潰れかかったジムでの練習。刻々と描写される日々の暮らし。言葉の枠を超えて溢れる感情と、人々の生き様が胸を貫く。

          『ケイコ 目を澄ませて』鑑賞。岸井ゆきのの存在感、強靭な身のこなしに圧倒される。これはすごい。聴覚障がいを抱えたボクサーが、人々と関わり合いの中でどう変わっていくのか。潰れかかったジムでの練習。刻々と描写される日々の暮らし。言葉の枠を超えて溢れる感情と、人々の生き様が胸を貫く。

          この小説「小さな言葉たちの辞書」が、いつか映画化される日を夢見続けようと思う。

          夜中の4時半ごろ、小説「小さなことばたちの辞書」を読み終えた。僕は日頃から恥ずかしいほど読むペースが遅くて、読み終えるまでに3週間ほどかかってしまったのだが、それでも日々ページをめくるたびに尽きぬ知的好奇心と、登場人物への愛おしさがこみ上げて胸がいっぱいに膨らんでいくのを感じた。 19世紀から20世紀にかけて、マレー博士らによって「オックスフォード英語大辞典」が編纂される。その写字室(スクリプトリウム)と呼ばれる職場を遊び場にして一人の少女が成長していく。その過程で彼女は「

          この小説「小さな言葉たちの辞書」が、いつか映画化される日を夢見続けようと思う。

          いきなりで恐縮だが、個人的に『コン・エアー』は最高の映画だと思っている。

          たしか、たまたま時間が噛み合ったというか、都合がよかったんだと思う。忘れもしない1997年の11月1日。朝、家を出るときにはこの映画を見る予定なんてこれっぽっちもなかったのに、夕方ごろになると他に予定がなくなってやっぱり新宿の映画館の客席に座っていた。 事前に仕入れた情報はまるでなし。期待も全くしていなかったと思う。その上、劇場から帰るころ「ひどい映画だったね」と友人と文句を垂れながら出てくる自分の姿さえ想像していた。でもこれが2時間の上映ののち、天地がひっくり返ったみたい

          いきなりで恐縮だが、個人的に『コン・エアー』は最高の映画だと思っている。

          カンバーバッチ主演『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』: とびきりの愛情と独創性で心を豊かに満たしてくれる秀作

          これはお見事!な一作。ベネディクト・カンバーバッチのファンにとっても、それから大の猫好きな人にとっても、最高のひと時をもたらしてくれる映画ではないか。「SHERLOCK」以来、風変わりな異能者を演じさせれば並ぶ者がいないカンバーバッチだが、天才数学者役の『イミテーション・ゲーム』や、かの発明王役の『エジソンズ・ゲーム』などに続き、今回は今から100年以上前に大人気を博した一人の天才画家の半生を見事に演じている。 猫のイラストで一斉を風靡した画家 何が面白いって、まずはこの

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          2022年を代表する名作『秘密の森の、その向こう』に涙が止まらなかった・・・

          こんな映画はじめて観た、なんて言うのは、昔から映画の感想や宣伝でよく見る惹句だが、本作に関しては久々にその思いに激しく貫かれた。思い返すたびに、とめどなく涙がこぼれてくる。 一見、静謐感に満ち、穏やかで、なんてことのない子ども映画のように見える。だがワンシーン、ワンシーン丁寧に織り込まれていくごとに、そこには深い感情と気づきが湧き上がってくるかのようだ。 この物語ははじめ、最愛の祖母の死からはじまるが、少女が一室一室に「さようなら」と告げて回るシーンから、彼女の心はこれま

          2022年を代表する名作『秘密の森の、その向こう』に涙が止まらなかった・・・

          ブラッド・ピットの映画人生を紐ときながら、改めて幻の主演作『リック』の重要性に気付いた

          つい先日、Safari Onlineにてブラッド・ピットの映画人生にまつわる記事を執筆した。主演作『ブレット・トレイン』はすでに劇場での上映が終盤を迎えている頃だし、いささかタイミングを逃してしまったことは否めないが、しかしいざ彼の人生と向き合うと、興味が止まらなくなってしまった。 ブラピの映画人生は面白い。そして彼の出演作はもっと面白い。何が面白いかって、彼自身、決して自信満々で演じているわけではなく、常に「これでいいのか?」という迷いや不安や葛藤を抱えながら、そのブレの

          ブラッド・ピットの映画人生を紐ときながら、改めて幻の主演作『リック』の重要性に気付いた