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読書メモ『なんで家族を続けるの』

内田也哉子さんと中野信子さんの対談本『なんで家族を続けるの』(文藝春秋・2021年発行)を読みました。

この本は、『週刊文春WOMAN』の創刊一周年記念イベントでの二人の対談と、その後の連続対談の内容が再現された本です。
本は内田也哉子さんの子ども時代や両親にまつわるプロローグから始まります。そして、それぞれ世間一般に認知されている「暖かい家庭」とはかけ離れた家族の中で生きてきた、二人の対談が始まります。対談では、二人の両親の記憶や結婚生活など家族の経験を元に、家族の本来の多様さ、毒親や不倫の背景にある人間の性質、社会やイエでの女性の役割、幸せとは何か、その他たくさんのテーマについて語り合います。本は、中野信子さんのこの本への思いや、これからの家族の形への見通しが書かれたエピローグで終わります。

ここからは私個人の感想になります。
思っていた内容とは違ったけど(私はこの本を、家族に苦しむ人たちに「家族を続ける必要はない」と背中を押すような内容かと思っていました)、とても面白く読みました。

内田也哉子さんの語りは丁寧で詩的な感じがしました。内田也哉子さんの語りから、中野信子さんの深く鋭い分析が語り出される。それぞれ言葉の選び方も目の付け所も違うのにかみ合ってるところが、運命的な感じがしました。

個人的に印象的だったのは「幸せとは何か」について語られている部分で、人間の脳は「変化分、差分を検出する」ようにしかできていない、というところでした。
自分が「不幸な・ダメな」状態の時、「あとは上がっていくだけ」と思える独特の安心感は、私もわかるような気がします。
私はしばらく良い状態、比較的楽しい状態が続くと、ふと辛さや傷みがないことが不安になる時があります。なので、ネガティブになっている時も実は嫌いじゃないし、ネガティブになっている時の方がむしろリアリティがある、というところは共感できる気がしました。
私の場合、辛い時の方がちょっとした幸せにも気づきやすいところがあり、それも「あとは上がっていくしかない」ことと関係してるのかもしれません。

また、社会常識的な結婚や家族を目指すことは必ずしも幸せのために重要ではない、と思えて、肩の力が抜けたような感じもしました。
私の願いは、私の大切な人と一緒に楽しく生きていくこと。
多分、多くの人が同じように願っていると思いますが、そんな当たり前のことを実現することが、なかなか難しい世の中だったりする気もします。
私にとって幸せなパートナーシップ、家族ってなんだろう。
考え続けたいと思える本でした。