こんばんは、烏丸百九です。
あっという間に（詠唱キャンセル）！

またしてもギリギリの更新タイミングになってしまい申し訳ありませんが、本日は今週に入り日本でも（ごく一部で）話題になっていた、韓国人アニメーターの方が「フェミニスト過激派」とのレッテルを貼られてクビになった事件から、韓国の（アンチ）フェミニズムやジェンダー平等について大雑把に論じてみたいと思います。

男女差別主義、LGBTQ差別、極右主義や政治的過激主義の問題について触れていきますので、閲覧の際にはご注意ください。

あと、内容の性質上、韓国の（一部の）政治家、インセルの人々、自称”フェミニスト”に対して批判的な内容となりますが、当たり前ですが私はあらゆる形態のコリアンルーツの人々に対する差別には絶対に反対ですので、そういう主義主張の人は記事を拡散しないでください。親アジア左翼に転向しろ。

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事件の概要～「フェミニストの指」でパニック発生？

事件自体を知らない方のために、内容を簡単に説明した韓国の日刊紙「ハンギョレ」のウェブ版記事を翻訳してみました。機械和訳なので、一部変な箇所があるのはご笑覧ください。リンクは私が貼っております。

★（翻訳）ゲーム広報映像に0.1秒の「人差し指のシンボル」...「男性がまた反発する」と韓国Nexon社屈服

チェ・ユンテ記者

Nexon、メイプルストーリー広報映像非公開・謝罪「フェミニズム検閲」に参加か？

Nexonが最近公開したゲーム広報映像のキャラクターの手の形をめぐって、男性利用者が「男性嫌悪」を象徴する「ピンセットハンド」である、と抗議して映像が非公開になり、制作会社が謝罪する事件が起きた。ゲーム業界に蔓延している「フェミ思想検証」がまた起きたのだ。

23日、Nexonはゲーム「メイプルストーリー」の女性キャラクターである「エンジェリックバスター（註：上の画像の少女）」が歌を歌いながら踊るゲーム広報アニメーションを公開したが、一部の「男尊女卑的な」サイト利用者が「フェミニスト」疑惑を提起した。エンジェリックバスターが1フレーム(約0.1秒)の間に取った動作をめぐって、「反男性を意味する手の形だ」とし、「作った人がフェミではないか」というものだった。

'人差し指の形'は、数年前から男超（註：「男性が大多数を占める集団」を意味する韓国のスラング）コミュニティの利用者が、韓国人男性の陰茎の大きさが小さいとバカにする、男性嫌悪の象徴として'フェミ思想検証'の手段として使用している。2021年にはコンビニエンスストアチェーンのGS25の広報物でこのような手の形が発見され、一部の利用者が抗議し、GSリテール側が当該広報物を撤去して謝罪したことがある。

コミュニティの利用者は、このアニメーションを作った外注業者の職員が過去、自分のSNSに（自分が）フェミニストであることを明らかにし、女性の人権を擁護する文章を掲載したことを根拠に、ゲーム制作会社であるNexonに苦情を入れた。これに対し、同社は去る26日、「広報物制作過程で細心の注意を払わず、ご心配をおかけしたことをお詫びする」とし、該当映像を非公開にした。

その後、利用者たちはこの外注業者が作った作品を検閲して「人差し指の形」を見つけ、「会社がフェミだ」と非難した。この業者が映像を制作したと指摘された別のゲーム、「ダンジョン&ファイター」の制作者も「冒険者（利用者）に不快な感情を与えたり、望ましくない表現はサービスを提供する立場で絶対に容認できない事案」とし「問題となった範囲が広範囲に及ぶ可能性があるため、漏れなく検討し、措置事項については再度お知らせするようにする」と謝罪文を掲載した。この他にも「ブルーアーカイブ」、「エピックセブン」、「アウタープレーン」、「エターナルリターン」などの有名ゲームの制作者も次々と謝罪文を掲載した。これらの映像を作った外注業者の「スタジオルーツ」は26日午後、「物議を醸して申し訳ない」とし、当該社員の作業を中断させるという告知文を掲載した。

専門家は、ゲーム業界の「フェミ思想検証」がスポーツ競技のように続き、ゲーム会社もこれに同調していると指摘した。キム・ミンソン韓国ゲーム消費者協会協会長は、「あるゲーム利用者が根拠もなく"製作者がフェミ"という主張を上げると、DCインサイド（註：「韓国の5ちゃんねる」の異名を持つ匿名掲示板。インセル主義者が多いと言われる）などで拡大再生産される。その後、新たな被害者のSNSの行跡を探す'スポーツ'の試合が始まる」とし、「ゲーム会社は過激主義的で過大に代表された少数ユーザーの意見だけを聞いて急いで決定を下すことを繰り返し、特に弱者である下請け業者など外注労働者が簡単な'損切り'のターゲットになっている」と指摘した。

青年ユニオンが9月8日から10月3日まで、ゲーム業界の労働者62人を対象に受けた通報67件を分析した結果、サイバー嫌がらせ・セクハラ・性差別など労働権侵害被害の88.7%が女性労働者に発生したことが確認された。実際、7月には過去のSNSに書いた文章を理由に女性イラストレーターが契約解除され、10月にはモバイルゲーム「ガーディアンテイルズ」のコスチュームコンテスト当選作品の作家が、「フェミニズム」を支持する発言をしたという理由でゲーム実装の機会を失った。

（翻訳終了）★

今でも強い影響力を持つ「メガリア」の恐怖

ハンギョレ紙の記事だけ読むと、例によって例のごとく、我が国でも暇アノンなどがいつもやっている「女性に「フェミニスト過激派」というイチャモンをつけ、ネットで叩いて嫌がらせをしようとする」無理筋の攻撃にしか見えないのですが、問題なのは（男性のファンが多いとは言え）韓国の少なくないクリエイターや大企業が、これらの「イチャモンクレーム」に屈服し、表現の自由の観点上非常に問題のありそうな「検閲」行為を平然と行ってしまっている点です。韓国社会にとって、過激派インセルというのはそれほどに恐ろしい存在なのでしょうか？

「n番部屋事件」などの凶悪犯罪を行った事でも知られる韓国の一部の過激派男性ユーザーが問題視されているのは事実でしょう。しかし、この「フェミニストの指」が問題になった背景には、「メガリア」と呼ばれる自称「フェミニスト」グループの存在があります。

★（一部翻訳）大企業まで襲った… 韓国産業界を揺るがす「人差し指の手の形」の議論

ゲーム業界で始まった「フェミ人差し指の議論」は、 サムスン電子まで襲った。女性優越主義のコミュニティである「メガリア」で男性の性器を卑下するという意味で人差し指の形を使っており、以後、多くの企業で似たような形のイメージを使用しながら浮かんだ論議だ。人差し指は代表的な男性嫌悪のイメージとして位置づけられた。

ゲーム業界だけでなく、韓国産業界全般に「人差し指の議論」は広がっている。去る28日に（大手鉄鋼メーカーとして知られる）ポスコ社の公式YouTubeチャンネル「ポスコTV」に、3ヶ月前に掲載された'2023ポスコ下半期新入社員採用'タイトルの映像で人差し指の形が確認されて論議になった。ポスコ側は特別な立場表明なしに映像を非公開処理した。

（翻訳終了）★

この記事でも言及されている「メガリア」とは、かつて存在した韓国の過激な自称「フェミニスト」向けサイトであり、男性批判のためならば差別主義や過激行動主義、犯罪行為すらもときには肯定する悪名高いウェブサイトとして知られていました。

メガリアは韓国「MeToo」運動の盛り上がりに合わせて2015年に開設され、紆余曲折の末に17年には閉鎖されましたが、このような思想や行動は韓国の社会運動内において一定の命脈を保ち続け、今でも『韓国フェミニズム≒メガリア』という見解を持つ人は国内外に少なくありません。上記したようなインセルやアンチフェミニスト達の「無理筋クレーム」も、「人差し指の形＝メガリアのシンボル」という固定観念に基づいたものであることは明白でしょう。

しかしながら、普段このnoteを読んでいる皆様には当然の見解だと思うのですが、男性批判のためなら差別や犯罪行為も許してしまうメガリアの思想は、どう考えても「フェミニズム」ではありません。少なくとも、欧米の主要なフェミニスト思想家や政治家、例えばベル・フックスもジュディス・バトラーもエマ・ワトソンも、「メガリア」を通常の「フェミニズム思想」の潮流には位置づけないでしょう。フェミニズムとは（様々な主張はあれど、大前提として）家父長制度の批判とジェンダー・セクシャリティの平等を求める思想運動であり、通常はあらゆる差別に反対する性質のものだからです。

韓国国内で「フェミニスト」を自称する人々の中に、差別主義的な「メガリア主義者」が一定数混じっており、多くの韓国の人々にとって社会的恐怖を齎しているのは残念ながら事実なのだと思います。
しかしながら、かつてのTERF主義と同様に、「差別を推進するフェミニズム」は本質的にフェミニズムとは遠く、むしろ極右排外主義に近しいものであり、韓国国内でのインセルやアンチフェミニスト男性の「強さ」「圧倒的支持」のコインの裏側が「メガリア」であって、女性側の差別主義者グループの存在感の現れだと考えるのが妥当でしょう。

日本も同様の状況ですが、欧米初の「フェミニズム思想」が大衆レベルで理解を得られないまま、主張の相反する男女の差別主義者グループ同士が争っている状況に、多数の人々が巻き込まれてしまっている事実は（まともな）韓国人フェミニストや一般市民にとって実に不幸なことだと思います。

韓国極右のアンチLGBTQ活動

最後に、こうした韓国の政治状況が「（フェミニズムが求める）ジェンダー平等」には程遠いことの証左として、韓国極右のアンチLGBTQ運動について少し触れておきます。