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各社の取り組み(その2 Amazon)

①Kindle

今年もMazonは、展示、セッション共に元気だった。
最初に行ったのはKindleのアクセシビリティに関するセッションだ。視覚障害者に対するアクセシビリティはすでに長年、前提として語られてきているが、今年は「Reading Disability」への対応として、読字障害に焦点を当てていた。

識字障害、ADHD,ASDなどが列記されているパワポ
読字に影響を与える障害について

それもこれまでのようにDyslexia(学習障害)だけではなく、ASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠陥障害),さらにはDyspraxia(統合運動障害)やTBI(Traumatic Brain Injury:外傷性脳損傷⇒高次脳機能障害につながる)なども読字には困難が伴うという認識のもと、Kindleのアクセシビリティ機能を充実させているという。このジャンルは日本では発達障害と呼ばれ発達遅滞と同一視される傾向があり、小学校では特別支援学校への入学を勧められることもある。だが実際には大学や企業の中で見つかることも多い。内閣府の定義でも発達障害とは知的に問題のないケースとされている。
欧米ではこのジャンルは障害とはみなされずNeuro Diversity(神経多様性)と呼ばれている。脳や神経の特性として捉えるという考え方で、いわば情報処理や情報伝達の一部に課題があるという理解である。近年日本でも経済産業省を中心に、発達障害ではなくニューロダイバーシティと呼び、その概念を広めようとしているが、長年の誤解を解くのは容易ではなさそうだ。

Reading Rulerなどの紹介
Kindleの読み上げ以外のアクセシビリティ機能

Kindleのアクセシビリティ機能は、おなじみのTTS(Text to Speech)に始まり、拡大、フォント、行間隔などの画面の仕様を変更できる設定機能、そしてReading Rulerである。これは読み飛ばしを避けるために、文章の上におく色付きの定規のことで、学習障害には必須の機能だが、今ではソフトウェアでこのルーラーを置くことが出来る。Kindleは最初から基本機能に入っているが、AdobeやWindows環境では4ドルくらいで入手できるアプリとなっている。このようなKindleのアクセシビリティ機能は、残念ながら日本では正規に提供されているわけではない。TTS機能もそのままでは提供されていないので、KindleのファイルをiPhoneに送り、IOSのKindleアプリを開いてVoiceOverで読むしかない。ルーラーなどのアクセシビリティツールも、無料アプリはあるがメーカーの正規版ではないようだ。日本に508条がないことが、日本ではUDな製品を出さなくていいという方向に進むのは、とても残念なことである。

②Alexa

声を使わないで指示できるAlexa

Alexaのアクセシビリティに関するセッションは、毎年のことながら満員だ。声を使わずに済むものも出ていて、聴覚障害や発話障害の人にも使えるようになっている。これってオートスキャンできたら、そのままスイッチコントロールで重度障害の人にも使えるよね。アレクサは、スキルと呼ばれる手順を覚えこませる必要があり、多少のコーディングの知識がないと難しかったが、これもかなり進化してきた。かつてプロシジャーと呼ばれていたような、手順をならべておいてその通りに実行するという機能のスキルを作ればいい。Routineという機能で、7時45分に目覚ましを鳴らして起こし、8時にライトをつけて、珈琲を淹れる、という手順を紹介していた。毎朝同じルーチンなら、一個ずつ指令を出さなくてまとめてやってくれるほうが助かる。

Hunchesという機能も便利そうだ。日本語では「勘」とかいう訳語になってしまうが、なんとなく直感で、おかしいなあとか気にかかると思えることなのだろう。例えば家を出てから、アレクサに「なんか、Hunchesない?」と聞く。アレクサは接続されているいろいろなスマートデバイスを検知して、家の玄関の鍵が施錠されていないことに気づくと、教えてくれるのだ。「玄関の鍵がかかっていないようです。施錠しますか?」これって、外出先からスマホ経由で施錠できるってことなんだろうな。高齢者にはなかなか便利な機能だ。またSmart Plugも同様に、リモートで家電のオンオフや状況確認ができる。帰宅する30分前にエアコンや炊飯器、お風呂のスイッチが遠隔で入れられたらうれしいかも。

Hunchesの概念を、家の鍵で説明している
Hunches は日本語にしにくいが「勘」みたいなものか

アマゾンでは他にもたくさんのセッションを出していたのだが、あまり参加できなかったのが残念だ。特に昨年出会ってファンになった全盲のエンジニア、Joshの話を、手違いで聞き逃したのがすごく惜しかった。今年はこういったのがかなりある。ま、400近くもセッションがあって、それもパラレルで走っているのだから無理もないが。





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