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湖の個性

湖というものは、とても豊かな表情をみせる。

天気によって、
時間帯によって、
季節によって、
色や光の具合が変わり続ける。

ただ、そういった豊かな表情の中にも、同じ湖であれば一貫した個性が見える。

今回は、僕がドイツに住んでいた時に大好きだった湖たちの個性について、色の違いを切り口に語ってみよう。

まずは湖へ注ぎこむ川

山から流れてきた雪解け水が、山あいを走る。この段階では、少し緑色がかかった透明な水。

こうやって湖へ注ぎ込んでいく ↓

では、ここから湖の話がスタート。

ただし、まず前提として、ドイツには「湖で遊ぶ文化」がある。

特に僕の住んでいた地域では、
■ 湖で泳いだり、
■ 湖の周囲をハイキングしたり、
■ 湖でSUP(スタンドアップパドル)を使って遊んだり、カヌーに乗ったり、
といった、いろんな遊び方がある。

そしてその地域では、湖へ遊びに行くことは特別なイベントではなくて日常生活のよくある過ごし方の一つ。つまり湖は、人々の日常に溶け込んでいる存在、という前提で読んでいただければ。

(1) 透明な緑色

この湖には、登山の途中で出会った。このエリアに入ったときには、あまりの美しさに頭がクラクラした。西洋絵画に描かれる天国って、こういう場所からインスピレーションを得ていると思う。

こんな美しい場所なんだけど、あまり有名ではなくて知る人ぞ知るエリア。有名になって人が押し寄せると良い雰囲気が失われてしまうから、良い場所ほど隠せるうちは隠されている。

手前は透明だけど水

更に少し山を登ると、二つ目の湖が ↓

山頂からは二つの湖が一望に見える。
左が1つ目の湖、右下が2つ目の湖。
上から見ると、湖は不思議と濃い青色に見える。 ↓

(2) 透明な緑色 その2

地元育ちの同僚いわく、20年くらい前、この湖は人がほとんど訪れないひっそりとした秘境だったらしい。今は中東からの旅行者が多く訪れて、駐車場付近は人で混み合う。そうは言っても、少し歩けばハイキング客がパラパラと散策している程度に人は減る。

この湖は自転車・ハイキング・SUPで遊ぶために何度も訪れた。

こんな透明で緑色の湖でも、ホラ、上から見るとやっぱりこの青色 ↓

ちなみにこの湖は、秋になって光が弱くなると、独特の緑色がかった鈍色(にびいろ)になる ↓

(3) 水色のようなエメラルド色のような

この湖は近い割に居心地が良く、数えきれないくらい訪れた。友人家族とビーチへ行って、泳ぐかSUP。

湖の周囲の土地は、むかし貴族だったドイツ人ファミリーが所有していて、多くのエリアをタダ同然で公共に解放してくれている。 ↓

(4) エメラルド色

ここは保全区になっていて湖に近づける場所が限られているため、専らハイキングで訪れた。そのため湖が遠景。水深が浅いからなのか、エメラルド色 ↓

(5) 乳水色

この湖は入場料が200円くらいかかる。そのぶん人が少なくて、ビーチの芝生も充実。

遠浅だから子どもを連れて行って遊ぶのに重宝した ↓

(6) 爽やかな水色

この湖はとにかくデカい。気候の良い季節には、数百のヨットやボートが湖の上に浮かんで、優雅な時間を満喫。人生の成功者たちなんだろう。 ↓

(7) 青色

上品で雰囲気の静かなリゾート地。都会からのアクセスもよい。 ↓

この湖は真ん中に小さな島が浮かんでいて、小さなレストランもある快適な空間。よくSUPを使って家族で上陸して、のんびりくつろいでいた。

どうでもいいけど、うちの息子はその島でくつろいでいる時に、スマホを使って歌丸さんの落語を聞いてケタケタ笑っていた。息子は、この島の上で歌丸さんの落語を聞いた最初で最後の人類になるのだろうか。ひょっとすると、いつか息子に続く人が現れるのか。気になって仕方がない。

(8) 紺色

グルリと360度を山に囲まれた湖。初めて見た時、雪山に囲まれた景色の衝撃的な美しさは忘れられない。 ↓

この湖の春の麓はこんな感じ。自転車で湖を一周走った時 ↓

(9) 黒色

ドイツ人同僚
「あの湖、水はとても綺麗なんだけど、なぜか黒く見えるから、ちょっと苦手なんだよね」

と敬遠されていた。でも僕にとっては、他にはないその独特のクセが好きだった。

(10) 七変化

この湖は2つの湖が繋がっていて、かなり複雑な地形をしている。場所によって水の色が全然違っている不思議な湖。

透明な緑色
青色と水色と
蒼いぞ

まとめ

なんで湖の色ってこんなに違って見えるんだろう。

今でも僕は、この地域の山や湖の写真が投稿されるSNSのグループに登録していて、日本に居ながらにしてこれら山や湖の写真を日常的に見ている。巡る季節を感じながら。

そして、湖の色を見れば、それなりの確率でどの湖の写真かを当てることができる。

それほどに、湖は個性的な色をしている。

なぜ湖の色は違って見えるのか。ネットで調べてみると、専門家の方々が科学的な説明をしてくれている。

カルシウムの量とか、浮遊物の量とかの微妙なバランスで色が変わるみたい。色とは光の波長であり、何かの具合によって反射する光の波長が決まってくる、ということらしい。

だけど正直なところ、僕が見てきた湖の状況と色を思い浮かべながら専門家の説明を読んでも、どうにも納得できる論理に聞こえない。だから僕の中では未だに、湖の色が変わるメカニズムは腑に落ちていない。

でも、メカニズムが分かったところで、それになんの意味があるのだろうか。

事実として、僕の知っている湖は、一つ一つが個性的な色を湛えている。

それの意味するところは、一つ一つの湖は固有の光の波長を放っているということ。あたかも、人が個性を放っているように、

僕はそれら湖の個性を知っていて、そしてその個性が大好きだ。

という事実だけで良しとしよう。

そう思えることを、人は愛と呼ぶのかもしれない。

by 世界の人に聞いてみた


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