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探究学習プログラム#15 -田園調布学園 じゃがりこを用いた新しいコミュニケーションアイデアを探究するプロジェクト-

プロジェクトの概要

1-2月にかけて、田園調布学園中等部の3年生は、MONO-COTO PROGRAM 実践編「じゃがりこを用いた新しいコミュニケーションアイデアを探究するプロジェクト」を実施しました。本探究活動の目的は、デザイン思考を活用しながら、生徒が自らの解答を提案することを通し、社会と接続した課題発見・課題解決の経験を得ることです。

今回は、菓子や食品の製造・販売を行っている カルビー株式会社様からテーマ課題をいただきました。

生徒たちは、チームで課題を発見し、解決するアイデアを考えました。最終プレゼンテーションでは、クラス内発表で選抜されたチームがカルビー株式会社の方々に向けてアイデアを提案しました。

プロジェクトの流れ

1. 授業1回目 オリエンテーション

カルビー株式会社の方々から、テーマ出題と説明を受けました。また、カルビー株式会社の概要や取り組みについてもご説明いただき、生徒はアイデアについてイメージを膨らませることができました。
今回のテーマは、「じゃがりこを用いた新しいコミュニケーションアイデアを提案する」です。さらに、そのアイデアを具体化するためにアウトプットの制約として 動画の制作が求められました。

オリエンテーションの様子
テーマ説明についてのスライド

2. 授業2・3回 チームのワーク時間

生徒たちは、それぞれのチームごとにテーマ課題に取り組み、プロジェクトを進めました。田園調布学園では中学2年生から基礎編・実践編を繰り返し行ってきたため、今回が中学校最後の実践編となります。デザイン思考の基本であるユーザーやインサイトの知識を活かしながら、各チームが作業を進めていきました。

ワークの様子

3. 授業4回目 中間発表

これまでのチーム活動を、弊社ファシリテーターに共有する中間発表を行いました。現状を言語化することで、チームの状況を客観的に判断することができます。中間発表の実施により、生徒たちは次にする行動が明確になりました。

4. 授業5・6回目 チームのワーク時間

中間発表でもらったフィードバックをもとに、それぞれのチームで作業を進めます。今回のアウトプットが動画であったため、多くのチームが動画制作に取り組み始めました。自分たちが設定したユーザーやシーンが相手に明確に伝わるような動画を制作するために、教室や中庭など様々な場所で動画撮影を行いました。

中庭で動画撮影をしている様子

5. 授業7回目 クラス内発表会

クラス内の全チームがプレゼンテーションを行い、そこからクラス代表チームが決定するクラス内発表会を行いました。

審査の観点
・デザイン思考プロセス(ユーザー/シーン/インサイト/プロトタイプ/テスト結果)が語られているか?
・審査員的に、インサイトとアイデアの納得度は高いか?
・テーマに対する整合性はあるか?(動画の質)

選出方法は弊社ファシリテーターが上記の審査観点から得点をつける形で行い、1クラス1チーム、合計5チームが選出されました。

6. 授業8回目 最終発表会

カルビー株式会社様から合計9名の方にご来校いただき、選抜された各チームへのフィードバックをいただきました。
選抜されたチームからは、「特別な日に贈るじゃがりこブーケ」や「推しの誕生日に活躍するじゃがりこ」が提案されました。

最終発表会の様子

代表チームのプロジェクトとインタビュー

最終発表をした5チームから代表して1チーム(Aさん・Bさん・Cさん・Dさん・Eさん・Fさん)のプロジェクトとインタビューを紹介します。

プロジェクトの概要

代表チームは、「めくりこ」というアイデアを考案しました。「めくりこ」は、じゃがりこ のパッケージ部分を剥がすと絵が描けるようになっています。このアイデアにより、女子中高生が自分たちの「かわいい」を じゃがりこ を通して表現し、思い出を創り上げることが出来ます。

プレゼン資料(1)
プレゼン資料(2)
プレゼン資料(3)
代表チームが制作した動画の一部(1)
代表チームが制作した動画の一部(2)
代表チームが制作した動画の一部(3)

インタビュー

プロジェクトについて

Q.コンセプトが決まるまでの流れを教えてください。

A 最近、女子中高生の間で落書きが流行っていることもあり、今回のプロジェクトで落書きからコミュニケーションが生まれるものを作りたいと思いました。私たちの世代では、落書きはみんなで楽しむもので、書いているときに「かわいいね」などのコミュニケーションが生まれることがよくあります。そこから、落書きを使ったアイデアがいいんじゃないかと考えました。また、かわいいものが完成したら写真を撮ってSNSにあげることもあります。

Q.「めくりこ」はパッケージをめくって内側に描けるのが独自性だと思います。なぜこの形にしたのか理由を教えてください。

B 従来のじゃがりこから大きくパッケージを変更すると、仮に販売するとなった時に売上が落ちてしまう可能性があると考えました。そのため、表面のパッケージは変えずに内側だけで楽しめる「めくりこ」にしました。

A 「めくりこ」は落書きを楽しみたい人は楽しみ、普通に食べたい人は食べられる、両方のニーズに応えるアイデアが詰まっています。

Q.コンセプトが決まって「めくりこ」ができるまでの流れを教えてください。

B 最初は、表面のパッケージを真っ白にして落書きをするというアイデアがありました。しかし、実際に描いてみるとじゃがりこのパッケージは丸い形状なので、描きづらいという問題がありました。そのため、パッケージをめくれるようにすることで、落書きがしやすくなると考えました。

Q. 「めくりこ」を誰かに使ってもらったりしましたか?

C 他のクラスの人に使ってもらいました。その際、流行っている落書きの方法をインスタグラムを見ながらどのデザインにするか決めていました。そこでコミュニケーションが生まれていたと思います。

Q.動画作りの流れについて教えてください。

A 私たちは期限ギリギリになって急いで編集しました。期限の2日前に、みんなで朝早く集まって動画撮影を行い、その後は家で編集作業を行いました。動画の中では、日常の楽しそうな様子をできるだけ伝えるように心掛けました。

Q.カルビーの方からフィードバックをもらった感想を教えてください。

D 新しく斬新なアイデアと評価されましたが、実現するのが難しいと言われたのが印象に残っています。フィードバックを受けて、今後の改善点や課題を見つけることが出来ました。

A 私たちは普段から カイロ に落書きをすることや、スケッチブックに絵を描いて写真を撮って楽しんでいます。これは社会人の方にはあまり浸透していないことに世代間のギャップを感じました。しかし、今回の「めくりこ」では落書きを用いることで女子中高生ならではのアイデアを提供できたと考えています。

C 他クラスの代表チームがポジティブなフィードバックをもらっていたので、刺激になりました。私たちのチームは、プレゼンテーションで相手に伝わりやすく発表することや、印象に残るプロトタイプが作れなかったのが反省点です。

Q.このチームは最終発表会への熱意が他のチームより強いと感じました。モチベーションはどうやって保ちましたか?

A 授業の時間をみんなで使って頑張ってきたので、最終発表会で発表したいという気持ちが強くなりました。クラス内発表会では他のチームも面白いアイデアを提案していて、自分たちのアイデアがどれだけ伝わるか不安に思いました。クラス代表に選ばれるとは思っていなかったので選ばれた時は驚きました。

インタビューの様子(1)

プロジェクトを通して感じたこと

Q.プロジェクトを通して楽しかったことを教えてください。

 E カルビーの方に協力していただき探究をする機会はなかなかないと思います。みんなで1つのアイデア作り上げて、クラスの代表になり、最終発表会で提案できた時は達成感がありました。

A 探究を通して、家族との会話が楽しくなりました。学校から帰宅後、「今日の授業ではみんなでこんな案が出たんだけど、どう思う?」と家族に話してアドバイスをもらうこともありました。家族の協力もあったからこそ、クラスの代表チームに選ばれた時は嬉しかったです。

C デザイン思考を学んでから日常生活でも「もっとここを改善できそう」という気づきが増えました。今回の授業を通じて実際にプロトタイプを作ることで、アイデアを実現する一歩を踏み出せたような気がします。

Q.プロジェクトを通して大変だったことを教えてください。

A 私は動画作りです。編集を担当していましたが、一度完成したものをチームメンバーに見せたら「これやだ」や「ここを消して」など修正する部分がたくさんありました。提出期限ギリギリまで編集していたので、かなり大変でした。

 D 心配だったことになりますが、クラス内での発表です。私たちのチームのアイデアには自信がありましたが、他のチームの発表を聞いていると周りのチームも魅力的なアイデアばかりだったので不安でした。最終的にクラス代表に選ばれることが出来たのでよかったです。

B プロトタイプを作るのが難しかったです。じゃがりこの本来の形を崩さずに作りたかったので、分解してじゃがりこの構造を調べたり、内側の素材を変えてみたりと、様々な工夫を考えました。

Q.プロジェクトを通して学んだことを教えてください。

D 将来、企画職に就きたいと考えているので、このプロジェクトは一種の職業体験になりました。自分たちが良いアイデアだと思っていても、周りの人に意見を聞くことで問題点が見えたりすることがありました。そのため、協力してプロジェクトを進めることの重要性を実感しました。

A チーム作業で様々な意見が出たことが、まず1つの学びでした。また、プロトタイプを制作することで、発想を新たに膨らませることができたのでモノづくりの楽しさを知ることができました。

C 今までは少人数でチームを編成していたので少ない意見をまとめることが多かったです。今回はチームが大人数だったのでまとまるか不安でした。実際にやってみたら、アイデアもたくさん出て問題点もたくさん解決できたのでよかったです。

フィードバックの様子


テーマスポンサーについて

Q.「MONO-COTO PROGRAM」基礎編と実践編の違いを教えてください。

B 実践編では、初回のオリエンテーションで企業側からテーマの方向性について説明があります。そのため、どの方向に進めばよいかが明確になり取り組みやすくなりました。

A 基礎編と実践編の大きな違いは、企業の協力の有無です。実践編では、自分たちが良いアイデアを考案できれば社会実装する可能性もあります。そう考えると、「挑戦してみよう!」というモチベーションになりました。


Q.テーマオーナーからのフィードバックにはどんな価値があると思いますか。

E 実際に商品開発に携わる方からフィードバックをいただくことは貴重な機会です。そのような方からのフィードバックには、自分たちが見落としていた視点がありました。今回は、カルビーのようなロングセラーの商品を作る際に考慮すべきポイントを学ぶことが出来ました。


Q.このプロジェクトをさらに進めるとしたらどんなことを意識したいですか?

B フィードバックを受けて、より現実的なアイデアに改良したいと感じました。私たちのアイデアはパッケージを剥がして利用するため、既存のじゃがりこから大幅な変更が必要で実現可能性が低くなってしまいました。そのため、既存のじゃがりこの特徴や魅力を損なわずに新しいアイデアを実現する方法を模索したいです。

E プレゼンテーションの話し方を特に意識して練習したいです。他の代表チームと比較して、相手に伝わるようなプレゼンができなかったと感じました。もっと相手に伝わりやすいプレゼンテーションを行うことで、より効果的にアイデアを提案できるようにしたいです。


Q.次回、「実践編」をやるとしたらどんなテーマスポンサーでやってみたいですか?
C じゃがりこのような身近なテーマに挑戦したいので、文房具をテーマにしたいです。文房具は日常生活で欠かせないアイテムです。ユーザーを掘り下げることによって、女子中高生ならではの新しいアイデア考えたいです。

B 女子中高生があまり訪れないような飲食チェーン店をテーマにしたいです。女子中高生にとって魅力的な場所やメニュー、店内の雰囲気を考案することで売上向上につながるようなアイデアを提案したいです。

D 新しいSNSの開発をしてみたいです。InstagramやBeRealを使用していますが、不便に感じる場面もあります。より使いやすく、女子中高生が求めるコミュニケーションやコンテンツに特化したSNSを開発してみたいです。

インタビューの様子(2)


本記事の詳細は、弊社担当までお問い合わせください。
・プログラム:https://mono-coto-program.com/
・イベント:https://mono-coto-innovation.com/
・Facebook:https://www.facebook.com/curioschool
・担当: s-daimon@curioschool.com(大門)

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