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バレンタイン

 二月一四日。バレンタインデー。好きな相手にチョコを渡すイベント。その前日の二月一三日。一人でバレンタインデーのチョコを買いに行く。現在は特に渡す相手もない。自分の小さき欲望だけを抱いて買いに行く。隣ではカップルがイチャつきながら「このチョコそこまで甘くないよ」「これがいいんじゃないかな?」選ぶ。特に害はないはずなのに、カップルの姿を声を聞いて酷く苛立つ。カップルの姿が声が雰囲気がかつての自分が記憶の底から蘇る。告白して片思いから脱した砂糖菓子のどうしようもない甘み。デートのプリンアラモードのキュンとした甘酸っぱい味。一方的に別れを告げられたじわじわ広がるブラックチョコの苦み。本当は蘇ってほしくない。蘇るだけでも涙が幾重にも零れる。胸が締め付けられる。辛い。苦しい。ミルクチョコを急いで買う。逃げるようにその場から去る。後どのくらい時間が過ぎ去ればブラックチョコの味が消える?

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