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「一緒にクレープ食べよっ♪」#ショートストーリー#青春

高校は川崎市立の高校だから、乗り換えの溝の口駅でほどんどの友達と別れる。
昴くんとわたしは偶然隣の駅同士だったから、最後まで一緒。わたしが先に降りて、昴くんは次の駅まで。だから、何となくもっと話したい時は、わたしが自分の降りる駅を乗り過ごし、たかしくんの降りる駅まで着いて行く。わたしがペロっと舌を出しておどけて見せると、昴くんも諦めて「あと30分だけ」のお願いを叶えてくれて、わたしの何でもない会話に付き合ってくれる。

夏休みに入ると、わたしと昴くんはクラスの出し物『駄菓子迷路屋さん』の看板の制作に励む。

「綾乃、何でメガネ君を連れて来たの?」
「そうだよ、最近一緒に居ること多いよね?」
「どうしたの?綾乃らしくないよ。」と
裕子や香織が一緒に作業しながら、小声でコソコソと聞いてくる。

「わたしらしくないとはどう言うこと? らしいとか、らしくないなんて、何処から目線の何様基準?  全然関係ないよ。それにメガネ君は絵がすごく上手。だから一緒に看板作ろうと誘ったの。それに、そんなに気になるなら、大人しいメガネ君に聞いてごらん。『わたしとメガネ君の関係はどうなっているんですか?』って」と返すと
裕子や香織に突かれた真理子が、「えー」と言いながら何故か照れた顔つきで、縁日風に描き上げている看板の作業している黒縁メガネの昴くんに寄って行き、さっきのセリフそのままに「メガネ君と綾乃の関係はどうなっているの?」と可愛らしく質問する声が聞こえてきたから、わたしは吹き出しそうになった。

その後の会話は小声になり、こちらまで聞こえなかったけれど、真理子が昴くんに話し掛け、次に昴君が何かを話し出すと真理子がペコペコと何回もお辞儀をするのが見えた、いったい何の話をしているのだろう?

真理子が帰ってくると裕子と香織が真理子を囲み
「どうだって?」と下町のおばちゃん顔負けで真理子に話を聞き出そうとするのも何だか可笑しい。
真理子は「メガネ君にそれとなく聞いたんだけど「別に…何でもないよ」って面倒くさそうに返された…。それより、メガネ君に「きみ達おしゃべりするよりも、手を動かさないと文化祭に間に合わないよ」って言われちゃった…へへっ」とニコニコ笑いながら真理子は急に手に持った筆を「がんばーーー終わらせねばーーー。」っと言いながら盛んに動かし始めた。

「えぇっ!それだけ?」と言って、筆を止めたのはわたし。
「何でもあるよ。わたしと昴くんは仲良しなんだから。ねぇ聞いている?メガネ君〜!!」これ見よがしに大声で声をかけてやった。下を向いたまま作業をしている昴くんの前髪が揺れて顔が見えない。
「あ〜や〜の〜」と少し引いてる裕子や香織や真理子の顔にもわたしは動じない。

これが終わったら、今度はわたしの降りる駅で「一緒にクレープ食べよ♪」って誘うんだ。







最後までお読みいただきありがとうございました。

楽しんでいただけましたら幸いです。

タイトルのイラストは
山本巳未様 のイラストを使わせていただきました。
山本巳未様 ありがとうございました。

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