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「才能」との出会い「忘却についての一般論」

<文学(54歩目)>
見事なストーリーテーラーの技に身を任せてみる。ちょっと読後感が不可思議です。

忘却についての一般論 (エクス・リブリス)
ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ (著), 木下 眞穂 (翻訳)
白水社

「54歩目」はアフリカのアンゴラを代表するジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザさんの作品です。

先入観なく色々な作家の作品を読んできましたが、特にアフリカの作品には特徴がありました。
精霊的、呪術的なものが多い。これは欧米市場で「アフリカ」というステレオタイプから好まれる作品の傾向が出来ていて、その延長線上の作家が特に翻訳されているのだろうと感じていました。

そして、現在の国の発展の度合いも大きく影響していて、南ア・マグレブ諸国等々の作家はかなり欧米現代社会的な作品が多かったので、今回のアンゴラの作品にはブラックアフリカ的な作品を予想していました。しかし、大きく裏切られました。

この作品は、映画監督からノンフィクションの台本を求められて書かれたようです。

在アンゴラのポルトガル人の女性が、アンゴラ独立戦争からの混乱の中で、1961(昭和36)年の独立以降のアンゴラ内戦を生きる為に、自宅に籠城して外部との一切のやり取りを遮断して28年間を過ごした「事実」をもとにしてストーリーが組み立てられている。

そこには、稀有な経験をされた主人公のルドヴィカ・フェルナンデス・マノの人生と交錯した様々な登場人物の人生が描かれています。

作者もそれは「フィクション」とされていますが、どの人物も魅力的(性格がということではなく、キャラが立っている)で、抗いがたい人生を過ごした人たちの寓話が描かれています。

読んでいた際に感じたことは、どの人生もそれぞれが作品になりうると感じたことです。

おそらく、アグアルーザさんの周囲にもモデルの方がいるのでしょうが、技巧と生き生きとした登場人物に引き込まれました。

「運命」と「愛(love)」を強く感じた作品です。
作品に大きく絡む伝書鳩の名前が「アモール(愛)」「ナモラード(恋人)」「アモローゾ(愛らしい)」「クロモローゾ(もの悲しい)」「エンカンタード(見事な)」とあるのですが、それぞれのポルトガル語がこの作品に陰影をつけています。
想定以上に素晴らしいです。

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