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空港、心の湿度。

誰しも、心が踊る場所があるのではないか。

理由はわからないけど、とにかく無性にワクワクしてしまう。

ドーパミンかエンドルフィンかよくわからないけど、何かしらの脳内物質がドパー!っと大放出してるような。

僕にとって、空港は、そんな場所の一つだ。

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どんな空港でも高揚感があるかというと、そうでもない。

国内線フロアではなく、国際線フロア。
羽田空港ではなく、成田空港。
ニース空港ではなく、フランクフルト空港。

どうやら、各国を代表する国際空港の、国際線フロアが好きなようだ。

そこにいるだけで、何人もの旅立ちに立ち会っている気分になる。

数分に一回、何十人、何百人もの人たちが、どこか遠くに旅立っていくのだから。

そこには、どんな出逢いと別れがあるのだろう。

ある高校生が、留学先のホストファミリーと涙の別れの途中かもしれない。

ある若者が、今まで”自分の世界の全て”であったこの国から、広い世界に一歩踏み出すのかもしれない。これまでの自分から脱皮して飛躍するために。ブルブルと震えながら。

ある老夫婦が、新婚旅行で行った国に、もう一度旅立つのかもしれない。あの頃の自分たちに出逢い、今日の自分たちの生を改めて祝福するために。

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僕にとっても、国際空港は神聖な地だ。

海外経験ゼロのまま一ヶ月の留学を強行したときの、抗えない不安と高揚感。

一年の留学を終え帰国の途につくときの、掻きむしりたくなるような喪失感と渇望。

就職して初めて海外に出たときの、自らへの高まる期待感。

妻と念願叶ってヨーロッパを旅するときの、夢のような現実感。

空港には、すべてが詰まっていた。

ギュっと凝縮された感情と出逢いと別れが、たった一粒に絞り出された想い出となって、僕の心の湿度を保っている。

空港には、すべてが詰まっている。