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『プレデター』最大の謎=戦いをやめれば絶対に助かるのに、なぜダッチは戦うのか?【『プレデター:ザ・プレイ』配信記念企画Youtube生配信】

8月5日、待ちわびたこの日がついにやってきた。
その日はこれまで人類と異星人との間で幾度となく繰り広げられたある狩猟(人間狩り)解禁の日である。

ということで人間狩り大好き宇宙人ことプレデターが大暴れするシリーズ最新作『プレデター:ザ・プレイ』がディズニープラスでついに配信!

これを勝手に記念して今夜(8/11)の20時半からYoutubeでは大プレデター特集を行います!
この配信さえ見れば『プレデター』全作を深く見れるに違いない!(た…たぶん)といった内容です。

しかしそのボリュームはこの記事には収まらないので、ここでは記念すべき1987年の第一作『プレデター』について語ろうと思います!(同じ内容を配信でも話しますので悪しからず)

そしてこの第一作目から脈々と続くシリーズの共通項を踏まえると、あることが分かってきますので是非ともこの記事の先は配信も見て頂ければと思います。

■この映画の最大の突っ込みどころ「武器を捨てろ!」

シリーズのファンはお分かりでしょうが、このプレデターという狩人はただひたすら残忍なだけではなく、ある種の美学ともいえる狩猟哲学を持ち合わせています。

戦う意志を持たない者や武器を持たない者、妊婦は殺さない。
そして自身らと同等に戦う者に敬意を払い、称えることさえある。

彼らの狩りは単なるレジャーではなく、戦闘や生存に生の目的と尊厳、最大の価値を重んじる儀式的行いのような側面があります。

この儀式的狩猟に最初に巻き込まれるのが、アーノルド・シュワルツェネッガー演じるダッチ。

屈強な彼が癖の強い特殊部隊を率いて南米コロンビアのジャングルでプレデターとの死闘を繰り広げますが、実はこの戦いの最中すでに彼らはプレデターとの戦いで生き残るヒントを見出しています。

それは武器を捨て戦意を失くして脱出することです。

これはこのシリーズ最大の突っ込みどころであり、海外ではリバイバル上映中「武器を捨てろバカヤロー!」と罵声が飛ぶのだとか。
ではなぜダッチを含めこの特殊部隊の隊員たちは武器を手放せず、戦いをやめられないのか?

今回はそこにスポットをあててお話します。

■敗北のトラウマを引きずるアメリカ

この映画では、月夜の森の中で黒人兵士のマックがプレデターに狩られた仲間の死体の前で過去の戦場での思い出を回想する場面があります。
仲間の死は過去の想い出と戦争を思い起こさせ、おまけに映画の舞台のジャングルはまるっきりベトナム戦争(以下:ベト戦)を想起させます。

それ以外にもジャングルをご機嫌な懐メロ(リトル・リチャード『Long Tall Sally』)を響かせ飛ぶUH-1ヘリ、そのヘリ内でダッチがベトナムでの戦利品を自慢したり、この映画はベト戦を連想させる場面が多々あります。

しかしそのベト戦はといえば、米ソ冷戦下で最大の代理戦争でありながら結果は米軍の完全撤退という事実上の敗北で幕を閉じます。
それは第二次世界大戦で悪しき独裁者からヨーロッパを開放した戦勝国としての誇りと名誉を失墜させ、それ以後悪しき資本主義国家という汚名がアメリカに付いて回ります。

この『プレデター』でゲリラのアジトをダッチの部隊が襲撃する場面は、じつに鮮やかかつ圧倒的なほどの強さで描かれますが、それは映画という文脈でベト戦の敗北の挽回を果たしたいかのような気合すら感じます。しかしこの作戦もダッチたちは騙されて参加させられていたことに後に気づき怒りを露わにします。

その構造はかつてトンキン湾で米戦艦が北ベトナム軍の哨戒艇に攻撃されたと情報の捏造を基に戦争に本格突入した事実(トンキン湾事件)と重なざるを得ない。
つまりこの映画での序盤までの流れは完全に米国のベト戦への介入経緯と、それに翻弄されジャングルで死んでゆく兵士たちという構図をそのまま入れ込んでいる。

ベト戦を引きずる映画といえばその代表作は『ランボー』ですが、ランボーが背負う帰還兵の哀愁は国の為に命を懸けたにもかかわらず、誰からものその貢献を称えられないのは、開戦理由の虚偽や対ゲリラ戦の失敗、そして国内外世論の反戦運動から来るものです。

プレデターのキャラクター的構造はランボーに酷似している気がしますが、どうでしょう?

しかし兵士という存在が戦う意義とその能力を活かせる場所は戦場であり、再びランボーは戦場に戻っていくというのは何とも哀しい物語ですが、この『プレデター』も上記の構造に気づけば相当なベト戦トラウマ映画です。

彼らはベト戦の汚名を"兵士として"果たすためにプレデターに対しても「武器と戦意を捨てて逃げ帰る」という安パイで生き残れる方法は取れるはずもなく、敗戦国の汚名を背負った亡霊を、プレデターから勝利を勝ち取ることで供養せねばならないのです(事あるごとに軍隊の葬送曲のような曲が流れるのは鎮魂であるはずだから)。

かなりメタな内容ですが、こう考えるとダッチがプレデターに降参できない理由が明白になるような気がしませんか?

さて、ここから先のお話は今夜のYoutube生配信でしていくとしましょう。
この先は……

・戦いをやめれない理由その二 = 人類はヤクザだから
・駄作認定の『プレデターズ』と『ザ・プレデター』を弁護しよう
・『プレデター:ザ・プレイ』は、新しい建国神話なのか?

などなどちょっと小難しいかもしれませんが、こんなラインナップで『プレデター』全シリーズと最新作『プレデター:ザ・プレイ』を語ります!
乞うご期待!


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