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日記の練習

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記事一覧

口の花火を耳から(日記の練習)

口の花火を耳から(日記の練習)

2023年7月30日(日)の練習

 FUJI ROCK FESTIVAL '23の二日目に出演した長谷川白紙のライブがSNSで話題になっていたので、参加したひとがアップロードした動画をいくつか見る。長谷川白紙の楽曲の感じ、変拍子やポリリズムを多用するしライブ(とくにそれほど詳しくない参加者もいるであろう音楽フェス)でもりあがるかしらと思っていたけど、そんなことは門外漢の杞憂だった。映像演出も凝っ

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御茶ノ水橋で橋上の人となる(日記の練習)

御茶ノ水橋で橋上の人となる(日記の練習)

2023年7月29日(土)の練習

 東京古書会館「中央線はしからはしまで古本フェスタ」二日目(最終日)に行く。明け方に寝たので起きた頃には夕方だろうと思っていたのに、九時前にすっと起きてしまったので、二度寝は諦めてお昼前には神保町へ。
 一日目(初日)は金曜日開催にもかかわらず開場前からひとが殺到したそうで、夕方にはほとんど空っぽの棚もあったようだ。いくつかの古書店は朝から本を補充した旨の投稿を

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カステラ工場のある街(日記の練習)

カステラ工場のある街(日記の練習)

2023年7月28日(金)の練習

 知り合いの方と、そのひとが教えてくれた中目黒のお茶屋で会う。住宅街のなかをすこしはいったところで営まれていて、一階は茶器や和食器を取り扱っているから、一見して二階に喫茶があるとは気づきにくい。席に着くと、お冷やのかわりに水出しの緑茶をだしてくれる。これからして、とても美味しい。
 冷やしぜんざいと昆布茶をいただきながら、お互いの近況などを話す。性懲りもなく青柳

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光の暴食(日記の練習)

光の暴食(日記の練習)

2023年7月27日(木)の練習

 朝、あまりの暑さに駅にむかって通り抜ける路地の端で鼠がのびていた。四肢をだらしなく方々にのばしていて、もしかして車に轢かれでもしたかと思ったが、瞳はきょろきょろと動いている。鼠さえのびてしまう暑さよ、と駅までの道を歩いていたが、よく考えると鼠ののびていた場所はクリーニング店の裏口で日陰になっていた。ただ涼んでいただけなのかもしれない。

 蔵前のCielo y

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次の一夏(日記の練習)

次の一夏(日記の練習)

2023年7月26日(水)の練習

 明日の仕事で気もそぞろで、仕事のことで仕事が進まない。

 米川千嘉子『一夏』(河出書房新社)を読み終える。格式ある文語体と強靭な修辞力に圧倒される歌集。そのうえで甘やかな詩的世界を仮構するのではなく、生活から目を逸らさない姿勢が、いくつもの秀歌を生んでいた。歌集を読んで居住まいを正されたのは、もしかしたらはじめてかもしれない。あとがきのかわりに巻末に付されて

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パイナップル恋歌(日記の練習)

パイナップル恋歌(日記の練習)

2023年7月25日(火)の練習

 気の遣う連絡をえいやと昨日いくつか送ったら、その返事が各方面からまとめて打ち返されてきて、気遣いの二ターン目にはいった。

 駅前のNEWDAYSでDel Monteのカットパイナップルが売っていて、思わず買ってしまう。先月風邪をひいて臥せっていた時、動けるうちにと消化によさそうなフルーツゼリーをいくつか買ったのだが、普段は買わないパインゼリーを買ったらそれが

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購った本のことしか話したくない(日記の練習)

購った本のことしか話したくない(日記の練習)

2023年7月23日(日)の練習

 秋葉原のブックオフに行く。ひさしぶりに収穫が多い。
 いちばん嬉しかったのは『青山二郎全文集(下)』(ちくま学芸文庫)。昨年、秋葉原のブックオフで上巻だけ購入して以来、一年半かけてようやく下巻の単品に巡り会えた。それが同じ店というのは縁を感じる。そもそも昨年の冬の日、先に新宿で下巻を見つけたのがよくなかった。数日後に秋葉原で上巻を見つけて、これで上下巻が揃うと

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再読と満腹(日記の練習)

再読と満腹(日記の練習)

2023年7月22日(土)の練習

 中学生以来、北村薫『夜の蟬』を再読する。読み返してみると、当時は気づかなかった語り手である〈私〉の心情の揺れや機微に改めて気づくことも多く、楽しい。
 主題に呼応するよう随所に仕込まれたモチーフの転がし方、それに日常への観察にねざしたささやかな謎と解決で、ほとんどドラマチックなことが起こらないなか中編の分量を読ませるのだから、この巧みさは脱帽するほかない。むし

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本を読むひとたち(日記の練習)

本を読むひとたち(日記の練習)

2023年7月21日(金)の練習

 行きは大岡昇平『野火』を、帰りは沼正三『家畜人ヤプー 第二巻』(幻冬舎アウトロー文庫)を読んでいるひとをそれぞれ見かける。『野火』は背に図書館のシールが貼られてあって、新書判の見たことのない版だった。『野火』は文庫版だけでも知る限り品切を含めて四つは版がある。三年前に神奈川近代文学館の「大岡昇平の世界展」を見た時、展示されていた文芸誌〈展望〉1951年1月号に

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他愛のない空腹(日記の練習)

他愛のない空腹(日記の練習)

2023年7月20日(木)の練習

 九州に住んでいる友人(交換日記のメンバーでもある)が他愛ないメッセージを送ったあと「こういうのを日記で書けばいいのか!」と天啓を得ていた。その通りだと思う。しかし、この他愛ないけど聞くとちょっとくすっとなる話を濃縮還元して文章に落としこむのが難しい。

 くどうれいん『桃を煮るひと』(ミシマ社)をようやく読み始める。日記を書き始めて改めてエッセイを読むと、文章

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瓦礫の音(日記の練習)

瓦礫の音(日記の練習)

2023年7月19日(水)の練習

 近所の家が解体工事をしている。私の部屋にも音が届く。
 朝はそれほどはやくないので、最近は目覚まし時計の音よりも先に朝八時から始まる工事の音で目が覚める。
 かつて家のあったその場所を夜になって通ると、住宅地のなかをいったいどのようにしてはいってきたのか、それほど広くない敷地面積のなか瓦礫のなかに重機が置かれている。動いていない重機は、いつもどこか眠っているよ

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鹹湖(日記の練習)

鹹湖(日記の練習)

2023年7月18日(火)の練習

 夜、九州に住む友人から「鹹湖」の読み方を訊ねられる。「鹹水」という言葉もあるし「かんこ」ではないかと返すと、塚本邦雄の歌集『水葬物語』を読んでいたらでてきたという。

 遠い鹹湖の水のにほひを吸ひよせて裏側のしめりゐる銅版畫

 辞書を引くと鹹湖すなわち塩湖とある。第一回高村光太郎賞を受賞した詩人の会田綱雄にも『鹹湖』という詩集があるらしい。
 どういう評釈が

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映画館へ(日記の練習)

2023年7月17日(月)の練習

 連休最終日。友人と『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY』を映画館で観る。途中までは新宿ピカデリーで観る筈の話が、友人が新宿ピカデリーの上映回には間に合わないというのでTOHOシネマズ池袋へ。却って時間に余裕ができたのもあって『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第二期の続きを観る。第十一話「過去・未来・イマ」まで。最終話ま

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