ダイフク

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1分で読めるようなショートショートや短編小説の練習、発表の場としてnoteを始めました。忌憚のないご意見や感想をコメントで頂けると嬉しいです。

最近の記事

【1分小説】代償

久しぶりに友達の愛梨の家にお邪魔することになった。数ヶ月前は憔悴し、やつれ切っていた彼女は笑顔で出迎えてくれて、見違えるほど溌剌としていた。 彼女は私をリビングに通すなり嬉々とした声で 「見てよこれ。こないだ電話で話したやつよ」 「あぁ、これが全自動・・・」 「そうそう、全自動オールインワン掃除ロボットね。ほら、一生懸命床掃除してる姿、なかなか可愛げがあるでしょう?」 掃除ロボットと呼ばれたそれは、素早くリズミカルな動きで黙々と床を磨いていた。その健気な姿は、なんとなく愛ら

    • 【1分小説】夏の迷い人

      彷徨う彼が辿り着いたのは、夏の美しい風景が広がる静かな場所だった。彼の心は疲れ果て、どこか空虚なまま歩いていた。初めて訪れたはずの場所が、どこか懐かしい雰囲気に包まれているように感じられた。木漏れ日が踊り、風が寂しさを静かに語りかける。彼は初めて訪れたはずなのに、その地の人々は親切に迎え入れてくれた。異国のような場所でありながら、どこか故郷のような安らぎを感じた。 スマートフォンやインターネットのないこの場所で、彼は自分の心と向き合う時間を得た。仕事や義務の束縛から解放され

      • 【短編小説】卒業

        澄み渡る空と、穏やかな陽光に包まれた卒業式の日。 今年は10年に1度と言われるほどの大雪に見舞われたが、厳しい冬の寒さも、春の訪れと共に静かに去りつつあった。雪が溶け、命が芽吹く気配がそここに漂っていた。 舞台に立つ卒業生たちの姿は、まるで花が一斉に開花したように美しく、逞しく輝いていた。その一方で、彼らの眼差しにはまだ少年少女の純真さが宿り、その端々に青春の輝きが滲み出ていた。過ぎ去った日々の思い出を抱きしめながらも、未来への新たな一歩を踏み出そうとしていた。 卒業式の

        • 【短編小説】旅立ち

          窓辺に座る彼女は、小さな箱を手にして微笑んでいた。その箱には、幼い頃からの大切な思い出が詰まっていた。 他にも彼女の部屋は懐かしいアルバムや古びたぬいぐるみで溢れ、一つの棚には古い手紙が整然としまわれていた。彼女はその手紙を一つ取り出し、過去の言葉に思いを馳せた。 その手紙は親友からのもので、遠く離れた土地での新しい生活への祝福と別れの言葉が綴られていた。時間が経つにつれて、彼女たちはそれぞれの人生を歩んでいった。 箱にはガラスでできた貝殻、ビーズでできた指輪、初めても

        【1分小説】代償

          【短編童話】金色の羽

          昔々、森の中に小さな雀の姫が住んでいました。彼女の名前は小雪。彼女はその美しい歌声で森を満たし、動物たちに楽園のような場所を提供していました。 ある日、小雪は美しい金色の羽を見つけました。その羽はまるで太陽の輝きを受けているかのようで、小雪はその輝きに心奪われました。小雪は金色の羽を身につけ、ますます美しくなりました。 しかし、金色の羽には特別な力がありました。小雪の歌声が森に響くたび、彼女の心も金色に変わり、欲望と孤独が心を埋め尽くしました。 小雪はどんどん独りぼっち

          【短編童話】金色の羽

          【短編小説】 渡り鳥

          雪が降る冬の日、一羽の渡り鳥が寂しげに空を飛んでいた。彼は世界中を旅してきたが、心には何かが欠けているような感じがした。孤独な旅が続く中、彼はある町にたどり着いた。 その町は雪国で有名で、雪景色に包まれていた。渡り鳥はしばらく雪を見つめていた。すると、そこに美しい雌鳥が現れた。彼女もまた渡り鳥で、寂しさを抱えていたらしい。彼らはお互いに引かれるようにして、そのまま出会った。 時は経ち、2羽の愛は深まっていった。彼らは共に旅をすることを決め、雪国の町で過ごすことにした。夜は

          【短編小説】 渡り鳥

          【短編小説】 サングラス

           今日、僕はサングラスをかけて外を歩いてみようと思う。昨日、お母さんに100円ショップでねだって買ってもらったのだ。お母さんは顔をしかめていたけれど、このかっこよさが分からないなんてどうかしてる。真っ黒のレンズが凄くかっこよくて、鏡に映る僕はなかなかさまになっている。いつも大人の人からは子供あつかいされるし、クラスのみんなからはチビチビってバカにされている。隣の席のみさきちゃんからは弟扱いまでされている。けれどサングラスをかけた僕の姿を見たらもうそんなことはしないはずさ。

          【短編小説】 サングラス

          【ショートショート】羽の付いたボール

           俺は福引きで見事特賞を当てた。  しかし受け取ったのはへんてこなボールだった。どこからどう見ても普通のサッカーボールに、おもちゃの天使の羽をくっつけただけの、ちょっと可愛いボールにしか見えない。  特賞の下には、ハワイ旅行や最新の家電など豪華ラインナップ。それに比べて1番当たりのはずのこいつは、見れば見るほど安っぽくてお粗末な商品に見える。 いや、しかし特賞の景品だ。ただのボールであるはずがないだろう。きっと何か凄い秘密が隠されているに違いない。  説明書を読むと『

          【ショートショート】羽の付いたボール

          ショートショート:ずっと一緒

          今日は光輝君との初デート。 「やぁ〜お待たせーみっちゃん」 あぁ、やっぱり光輝君はかっこいい。今日も一段と輝いている。いつも見惚れてぼーっとしてしまう。みんな夢中になるわけだ。 「どうしたの?」 「なーんでもなーい。行きましょ」 夢みたい。あの光輝君が私の隣を歩いている。 初めて光輝君を見たあの日、私はもう恋に落ちていた。凄く足が速くてかっこよかった。みんなキャーキャー叫んでたっけ。 光輝君を私だけのものにしたい。だから今日は絶対失敗できない。光輝君を失うくらい

          ショートショート:ずっと一緒

          「流行の枕」 ショートショート

          Fさんは最近、夜寝付けない事が多くて悩んでいました。そのせいか会社でもミスが目立つようになり困り果てていました。  ある日、寝具を変えてみたらどうかと会社の同僚のアドバイスを受け、家の近くの国道沿いにできたばかりの大手家具チェーン店に休日Fさんは訪れました。  店内の、商品が所狭しと並べてある棚を見て回っていると  「お客様、何かお探しですか」と店員に声を掛けられました。  「実は、最近夜寝付けなくて困っていてね。それで枕を変えてみようと思ったのだけれど。ほ

          「流行の枕」 ショートショート

          はじめに

          今日から少しづつ短編小説やショートショートを投稿していきたいと考えております。奇譚のないご意見頂けたら嬉しく思います。

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