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【短編小説】 渡り鳥

雪が降る冬の日、一羽の渡り鳥が寂しげに空を飛んでいた。彼は世界中を旅してきたが、心には何かが欠けているような感じがした。孤独な旅が続く中、彼はある町にたどり着いた。

その町は雪国で有名で、雪景色に包まれていた。渡り鳥はしばらく雪を見つめていた。すると、そこに美しい雌鳥が現れた。彼女もまた渡り鳥で、寂しさを抱えていたらしい。彼らはお互いに引かれるようにして、そのまま出会った。

時は経ち、2羽の愛は深まっていった。彼らは共に旅をすることを決め、雪国の町で過ごすことにした。夜は温かい巣で寄り添い、昼は雪原を共に飛び立った。

だが渡り鳥たちには知らなかったことがあった。雌鳥は既に病気にかかっており、長く生きられない運命にあったのだ。

ある日、渡り鳥は雌鳥の体調が悪くなっていることに気づいた。彼は傍にいて支えることしかできなかったが、それでも雌鳥は笑顔を絶やすことはなかった。

雪がまた降り始め、雌鳥の体調はますます悪化していった。最後の日、彼女は渡り鳥に囁いた。
「私の愛は永遠だから、私はいつもあなたの側にいます」

雌鳥は静かに息を引き取った。渡り鳥は彼女の体を優しく抱き締め、涙を流した。彼は彼女の側にいたことを後悔しなかった。

渡り鳥はまたひとり、旅を続けることになった。
もう隣に彼女はいなかった。だが深い愛情で満ちていた彼女との日々の記憶は、孤独に打ちひしがれそうな彼の心を支えた。

渡り鳥は彼女と出会ったこの雪国に別れを告げ再び長い、果ての見えない旅に出た。


#童話 #掌編小説 #鳥 #渡り鳥

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