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ポンコツ一家/にしおかすみこ

この「ポンコツ一家」の連載第一回はWEBで無料公開され
大きな反響を呼んだ。

 
帯にもあるように
にしおかすみこさんの家族は
母親は80歳、認知症
姉は47歳、ダウン症
父親は81歳、酔っ払いだという。

にしおかすみこさん自身も、自分のことを元SM一発屋女芸人で、45歳の独身で行き遅れだと揶揄する。

 
「全員ポンコツ一家である。」

 
にしおかすみこさんはそんな風に家族を表現した。

 
ポンコツ、というのは家族だからこそ言える
愛と絆故の表現だと思う。

 
母親が認知症になり、できないことが増えたり、口が悪くなったことを
絶妙な表現で書くにしおかさん。

 
にしおかすみこさんの文章は初めて読んだが
こんなに文才があるとは知らなかった。

 
ありのままに書いている。

介護の大変さだけでなく
母親の温もりや家族への想いをふんだんに書いている。

 
家族それぞれが噛み合わず
ちぐはぐな言動をしていても
どこかまとまり、支え合っている。

 
家族故の煩わしさ。愛しさ。

読んでいて笑うところも多いが
切なくなるところも少なくない。

 
特に印象的なシーンは花瓶の花と肉じゃがのシーンだ。
これは読んでいる私も泣いてしまう。

私も母が認知症になったら
玄関に花を飾ろうと思う。

 
私はにしおかすみこさんより年下だが
まだ未婚で行き遅れである。

両親と暮らしている。

 
例えば10年後
私もにしおかさんのように家族の誰かを介護しているかもしれない。

小さくなる親の姿、老いていく親の姿を
何度だって見ては切なくなる。

 
少子高齢化の今、認知症の家族介護をする可能性は
誰にでもあるといえる。

 
例えば10年なんていわず
もうこんな未来はすぐそばまで来ているのかもしれない。

私はにしおかさんのように
認知症やダウン症、酔っ払いの家族に優しくできるか自信はない。

 
身内で介護はあまりオススメではないと私は思っている。
どうしたって感情が入るし
距離感が近すぎるからだ。

私は福祉施設で10年以上働いているが
受けられる福祉サービスは受けた方がいいというのが持論だ。

自分と家族のためにも家だけで見るのはいつか限界を迎える。

 
にしおかさんは自分の気持ちを優先して施設を頼らず
懸命に家族のそばにいて
心からすごいと思う。

 
表紙もとてもかわいいが
カバーをめくったらまた別のかわいさが待っている。


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