見出し画像

ルールズ/新藤晴一

これはポルノグラフィティのギタリスト新藤晴一さんの2作目の小説だ。

メジャーデビューを目指すロックバンド「オーバジンズ」の奮闘を描いた作品で
きっといくつかは実話だったり、当時対バンしていたバンドのエピソードを拝借したりもあったんじゃなかろうか。
ファン目線で見るといちいちニヤニヤしちゃう。
ポルノや晴一さんを重ねてしまう。
かと思えば、ラストあたりにポルノっぽいバンドがちらりと登場する演出(笑)
 
 
前作「時の尾」よりも構成などを固めてきた印象だが、やはりラスト辺りはやや駆け足気味。
音楽専門用語もたくさん出てくるので意味がよく分からない箇所も割とよくある。
中国エピソードはリアルなんだか、どうなんだか。

例え話や比喩表現はなるほど晴一さんらしさが満載。
個人的にはゴルフに例えた健太父やファーストフードに例えた健太の例え話が好きです。

タイトルに「ルールズ」とあるが、そんなに内容にマッチし過ぎている訳じゃないし、シンプルに「オーバジンズ」でもよかったのかなとも思う。
聞き慣れないタイトルで面白いし。ちなみに、ナスという意味らしい。

 
 
【ここからは長い余談になる】
 
話冒頭で作曲していたメンバーがバンド脱退し、それで主人公の健太は作曲に悪戦苦闘するのだが、なんだかそれがTamaちゃんに通じるところがある。

ポルノグラフィティの売りはなんといっても昭仁さんの声で
デビュー前にコンテストではいつも二番どまり、昭仁さんソロデビューの話もいくつかあったそうだ。

ポルノは作曲に弱い。
デビューシングルからしばらくのシングルは本間さん作曲(プロデューサー)だし
カップリング、アルバム曲さえ本間さん作曲だらけだった。
これは通常のロックバンドでは希有で
基本メンバーが作詞作曲するのが当たり前だと思っていた私は心底ビックリした。
みんなが知っているであろう
ポルノグラフィティ代表曲の「ミュージック・アワー」「サウダージ」「アゲハ蝶」「メリッサ」…全て本間さん作曲なのだ。

本間さん以外にはTamaちゃんが他の曲をいくつか作曲し
昭仁さんや晴一さん作曲の曲が5曲にも満たない。
そんな中、デビュー5周年手前でTamaちゃんは脱退した。
 
 
私は当時、内心、終わった…と思った。  
作曲している人が抜けたら終わりじゃないかと思った。

実際、Tamaちゃんが抜けた後に発売されたアルバム「Thxmp(サンプサンプサンプ)」は個人的にはポルノグラフィティアルバムで一番好みではないアルバムだし
10周年を機に本間さんもポルノ作曲から手をひいた時も
やはり終わった…と思った。

 
昭仁さんや晴一さんは頑張っていた。 
Tamaちゃんが抜けてから作詞作曲を一人で担当する率は高かったし
二人で合作(片方が作詞して作曲する)曲も増えた。
 
本間さんがどういった経緯で抜けたのかは謎だが
おそらく、「自分たちで作詞作曲を手がけたい」思いはメンバーの中に強かったと思うし
昔のヒット曲と闘っていた姿は見られた。

 
だけど、私の周りではポルノグラフィティ離れは加速した。
「昔はよかったよね。」そんな声が多かった。
実際私もそれは痛感していた。
あまりにも色んなジャンルに中途半端に仕掛けている印象があった。
 
  
・シングルなのにパッとしない。
・冒険して失敗している。
・カップリング曲なのに印象に残らない。
・アルバム曲がいいものと微妙なものが入り乱れ、統一感に欠ける。
・ライブウケや売れ線を狙いすぎている。悪くないが、ヘビロテしたいまでじゃなく、メッセージ性が弱い。
   
 
そんな時期が続き、私はついにポルノグラフィティの新曲シングルを買わなくなった。
HPも見なくなり、新曲にも疎くなった。
「サウダージ」からファンになり、ずっと買っていたのに。
アルバムは買い続けていたが、好きなアーティストで絶対的な一番はポルノグラフィティと言えなくなり
やがて好きなアーティストは「スピッツと奥華子」と公言していた。

それは、アジカンについても同じで
やはり昔のアジカンが好きだった感は否めない。
アルバムは買っていたが、ポルノと同じ感想に近かった。
昔はずっと、「ポルノグラフィティ、スピッツ、アジカン」が私の三大アーティストだったのに。
(もちろん、それでもライブツアーには毎回行き、良い印象ではあったのだが)

 
ポルノグラフィティはチケットがとれず、私は気づくと3年ぶりという久々感でポルノのライブに行った。
その3年の間も好きなアーティストは増え
久々のポルノライブチケットに興奮しながらも
仕事の多忙さから以前より楽しめずに当日を迎えた。それが2019年。

 
それなのに、だ。
私はそのライブ終演後にポルノグラフィティにすっかり再燃した。
20周年ということもあり、今年はコラボやイベントがたくさんあり、行けたことも大きい。
東京ドームも想像以上に想像以上に素晴らしすぎて
今に至る。
 
 
今は一日中ポルノグラフィティに夢中だ。
17歳の頃に戻ったくらい、夢中で毎日恋してる。

そして、東京ドームを機にしばらく聴いていなかった曲を聞き返すと
歌詞を見返すと
なんと素晴らしいことか。

 
20周年時のシングル「VS」ではないが
ポルノグラフィティはずっと闘っていたんだなと思った。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?