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ノーリフティングケアのすすめ

<はじめに>
 先日モルテン主催の車いす勉強会に参加して、少しばかりテンションが上がっている「おせん」です。私は昔バスケットボールをしていたのですが、モルテンさんとはその頃からの(勝手な)お付き合いの為、介護業界にまで参画しているという事を知り、とても嬉しかったです(笑)…すいません、本題へ。。。
 今回は「移乗」に焦点を当てて考えていきたいと思います。いつもながらゆる~く調べてみましたのでお付き合いいただければ幸いです。

<背景>
介護保険制度が始まった頃の移乗動作というのは、今ぐらい情報もなかったですし、ほとんどが持ち上げて介助していたのを覚えています。看護助手をしていた頃は上司から気合と根性でなんとかしろ!と指導を受けていました。そしてそれが当たり前の時代でした。
時は流れ、Body mechanicsが発展、力のいらない移乗とか○○式移乗術が流行り、そして今は福祉用具の発展、ロボティクスが主流になってきている印象を受けます。私どもの施設でも、トランスファーボードを買っていただいたり、ロボット等を使ってみた事もありましたが、結局は今までの介助方法がベターかなという雰囲気になり、中々完全な導入には至らなかったのが現状です。
皆様の施設や病院ではどのような方法で移乗介助を実践されているのでしょう。気になるところです。

本日の内容)   ♢持ち上げ介助はなぜよくないのか?
         ♢ノーリフティングケアとは?
         ♢まとめ
 

♢持ち上げ介助はなぜよくないのか?


 この問いに対するヒントに「腰痛借金」という考え方があります。昔、施設内勉強会で教えてもらいました。東京大学医学部附属病院特任教授であられる松平先生によると、腰痛借金とはいわば腰痛を発生させる「蓄積された負担」をいいます。借金が増えれば破綻してしまうのと同じように、腰痛借金が増えれば増えるほど、多ければ多いほど、より重い腰痛を抱える事につながると言われています。(1)近年言われている「スマホ首」や「ストレートネック」猫背などの不良姿勢がこれらに影響していると考えられます。
更に介護や看護、重い物を持ち上げる仕事に就いている人や、常に良くない姿勢でいる人の場合は、腰痛借金がハイペースで増えていくそうです。
徐々に私達の身体を蝕んでいると考えると、怖くなってきますね。
それではもう少し細かく考えていきたいと思います。

<持ち上げ介助に警笛を鳴らす要因>                           

要因1 少子高齢化と高齢者層

 少子高齢化についての詳細は割愛しますが、令和4年度は65歳以上の者1人に対して現役世代2人で支える時代でした。(2)そしてそれは今後ますます深刻化すると言われています。高齢者層については、今後益々、高身長で体重の重い方が増えるそうです。そうなると持ち上げ介助では対応できないケースも増えそうです。下図に示すような悪循環も予想されますね。

要因2 コロナ禍の密着介護

 今ではコロナも5類となりましたが、予断を許さない状況です。
三密である「密閉」「密集」「密接」に加え、移乗介助による「密着」も今や「ハラスメント」になるかもしれないですね。

要因3 厚生労働省「腰痛予防指針」

平成25年に「職場における腰痛予防対策指針」(3)が改訂されています。
介護・看護作業における抱上げに関して「移乗介助、入浴介助及び排泄介助における対象者の抱上げは、労働者の腰部に著しく負担がかかることから、全介助の必要な対象者には、リフト等を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱上げは行わせないこと。また、対象者が座位保持できる場合にはスライディングボード等の使用、立位保持できる場合にはスタンディングマシーン等の使用を含めて検討し、対象者に適した方法で移乗介助を行わせること。」と明示されています。

♢ノーリフティングケアとは?


ノーリフティングケア:オーストラリア発症のケアメソッドで、人力のみの移乗を禁止し、患者さんの自立度を考慮して福祉用具を活用しようという考え方…とされています。       日本ノ-リフト協会HPより

<ノ-リフトの色々>
○電動ベッド         ○リフト
○トランスファーボード    ○移乗ロボット
○スライディングシート    ○Etc
 

♢まとめ


1. 持ち上げ介助を日に何度も行う事は身体を傷めてしまうリスクが大きい
2. ノーリフティングケアには色々な種類があり、適応を考えるべきである

<おわりに>
 正直、私が10代・20代の頃は先にも述べたように持ち上げ介助なんて当たり前で、腰痛なんて無縁でした。しかしだんだん歳を重ねてきて「ああ、昔のようにはいかないな~」と感じる事もでてきました。実際、施設がフィールドの場合には(職員同士の助け合いがあるので)それこそ気合と根性でなんとかなるのかもしれません。ただ、在宅がフィールドとなると話は別。主たる介護者も高齢化しており、場合によっては持ち上げ介助が原因で共倒れになる可能性もあります。
 もちろん持ち上げ介助による移乗方法が全て悪いと言ってる訳ではありません。しかし、全てがそれのみで解決するとも思っていません。
今は様々な展覧会に行くと、便利な福祉用具が溢れています。いっぱい色々なモノに触れて感じて学んでいきたいなぁと思います。

今回も拙い記事にお付き合いいただきどうもありがとうございます。
※ゆる~い記事になります。詳しい内容に関しては成書をご参照ください

<参考・引用文献>
1.松平浩・勝平純司(2016).「腰痛借金 痛みは消える」.辰巳出版.pp4-8 pp104-121.
2.内閣府.「令和5年版高齢社会白書」.内閣府.令和5年版高齢社会白書(全体版) (cao.go.jp).(参照2023-07-13).
3.厚生労働省労働基準局.「職場における腰痛予防対策指針及び解説」.厚生労働省.
問診票-1ol (mhlw.go.jp) .(参照2023-07-13).

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