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アメフト元監督は指導者(リーダー)か?

はじめに

情報学分野の大学教員で、リーダーシップとは無縁でしたが、いくつかの異なる興味を「情報」というフィルターで通して見たときに、「リーダーシップ」という観点でまとめられるんじゃないか!?と思いつき、「この思いを伝えたい!」という状態です。

媒体としてnoteに興味があったので、まずはnoteで配信してみようと思います。様々なフィードバックをnoteから得られるのではと期待しています。全体で4, 5個のテキストを束ねるマガジンになる予定で、指導者(リーダー)と管理者(経営者等)を分けるものついて、例を用いながら具体的に説明します。

さて、初回は、日大アメフト部のタックル問題を取りあげ、自分のリーダーシップ理論では「この件に関する元監督」がどのように見えるか考えます。結論からいうと、彼の内面に依存して「彼はこの件に関しリーダーではない(管理者である)」か「失敗したリーダーである」となります。

システム1&2によるリーダーシップの定義

人間は2つの思考システムを持ちます。直観的なシステム1と論理的なシステム2です。システム1は、色や味などの感覚など、より広く認知システムといえるでしょう。2つを分けるものは「注意力」で、システム1は無意識に働く一方、システム2は意識しないと働きません。難しい計算はシステム2で処理されますが、同時にいくつものタスクを処理することはできません。

リーダーシップを「システム1で描いたビジョンを広めていく過程」と定義します。相手のシステム1で認識してもらうことがポイントで、単に「こうしなさい」といったからといってシステム1として認識するとは限りません。別の言葉でいうとメンタルモデルが変わる、行動変容を起こすとも言えると思います。

例えば、「犬」と聞いたときに思い描くイメージは人によって異なるでしょう。これはシステム1の大きな特徴です。他の特徴として、(今回は詳しく述べませんが)感動や閃きなどもシステム1の領分で、これらは人に伝えずにはいられない、ある種の脅迫観念があるため、リーダーが困難なことにチャレンジできるのは、個人の性格や資質ではなく、「システム1の強い衝動」であるという立場です。

言い方を変えるとリーダーシップには「ビジョンが最も重要」と言えます。注意して欲しいのは、同じ人でも複数のビジョンを持ち、複数のリーダーシップを発揮したり、別の事に対してはフォロワーになったりということがありえます。また、組織が先にある必要はありません。

アメフトの元監督はリーダーか?

提案の理論を使うと、ある人がある事柄に関するリーダーかどうかは、「システム1で得られたビジョンがあるかどうか?」「これを相手のシステム1まで伝えられたか」などで判断することができます。

システム1の動きを直接見ることができないため、「元監督は勝利などの(システム1とは異なる)外的な目的があり、これを達成するために一連の指示をした」場合と「元監督は、自分のビジョンに従い、これを当該選手に伝えようとした」場合に分けて考えましょう。

前者の場合、システム1ではないため、提案理論でいう「リーダー」ではなく、管理(management)しているといえるでしょう。システム1はボトムアップで自主的ですが、管理はトップダウンです。この場合、目的のためにケガをさせるという手段を選んでいるのですが、問題となるのは、口頭での指示(システム2)では「ケガをさせろ」とは言わないものの、スタメンからはずすなど精神的に追いつめ、システム1で理解させたことです。この構造は「いじめ」に見られるものと同様です。

では後者の場合はどうでしょうか。この場合、元監督は当該選手の内面まで変えようとしていた(システム1まで届けようとしていた)となります。実際、以下の記事で彼は『やっぱ、今の子、待ちの姿勢になっちゃう。だから、それをどっかで変えてやんないと。』ということも言っています。

この場合、定義に従えば、彼はまさしくリーダーであろうとしていたということです。ただし、手段が悪く、当該選手には届かなかったようです。このようなプレッシャーをかけるやり方では、その場では指示に従うが...ということになりがちです。このことから、「リーダーシップをとろうとしたが、上手くいかなかった」と言えます。

まとめ

2つのケースに分けて分析しましたが、後者のほうは妻とこの件を話していて、その可能性を指摘されて書きました。元監督の対応から見ると、後者である可能性が高いのではないかと思います。これについては、別途書きたいと思いますが、こちらの場合、元監督は悪いことをしたという意識は希薄で、より救いようがない気がします。

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