見出し画像

【歌から妄想してみた】第三回 Take@chance(miwa)

歌から妄想してみた(本企画主旨)。第一回のDamaged lady第二回の一等星になれなかった君へに続いて、第三回目となりました。今日のテーマ曲はmiwaのTake@chance(すみません、音源貼れません)であります。2012年にリリースされたguitaliumというアルバムに収録された曲です。2012年のこのころ、僕はmiwaのオールナイトニッポンのヘビーリスナーでありまして深夜に起きて年頃の女性と会話している気分を楽しんでいたのであります。その頃は武道館ライブが目標であったmiwaさんでありますが、今は毎年武道館ライブを開くほどまでになり、類まれない努力があったのだなと尊敬します。僕は懐古かもしれませんが、このguitaiumはmiwaさんのなかでは、一番良い作品だと思います。僕にとって、miwaさんのストロングスタイルが一番見えるアルバムです。

さて、企画に戻りましょう。この曲を使って実際に妄想をしてみました。この曲、歌の名前からもわかる通り、失敗を恐れず挑戦しようというものになっています。そして、その支えとなっている同じような境遇を持った人がいることも述べられています。

そんなこの歌から僕は、夢に挑戦するシンガーソングライターの姿を妄想しました。まだ19歳。そして、同じような境遇のボーイフレンドがいます。では、実際の妄想をご覧ください(以下太字部分妄想)。

         【One more take @ chance】

 カーテンから漏れるほどの強い日差しで目が覚めた。枕元にあったスマートフォンで時間を見ると、午前10時。アラームの設定時刻は7時。少し、寝すぎたか。昨日寝たのは午前1時だったから、9時間寝ている。十二分に寝たはずであるのに、まだ眠たい身体。ムチを打って何とかベッドから出て、シャワーを浴びる。外に着てでても恥ずかしくないけれど、完全に外行ようではない服を着る。そして歯を磨いて、水を飲む。朝ごはんは食べない。正確に言えば、食べることができない。冷蔵庫には水と、牛乳しか入ってないのだ。牛乳をせめてもの変わりに少しだけ飲むと、部屋に掛けてあったギターを慎重にケースにしまい、背負う。そして、家をでる。
 家のすぐ近くにある土手をしばらく歩く。すれ違うのは、日曜日の朝とだけあってランニングをする男の人や女の人、犬を散歩する男の人や女の人、平日のこの時間より年齢層が若い。どこか、それが新しい場所に来て、新しい人にあったような思いを抱く。毎週のようにここには来ているので、顔をみたことある人は多いが、平日にその人たちはいないことが多いため、どこか新たな出会いのように思えてくるのであった。
 土手から川辺におりる、幅の広い階段に腰かける。そして、ポケットからスマートフォンを取り出して、見る。正久からlineが来ていた。「最近どう?僕は、もう少しで配属先が決まります。」というメッセージ。正久は自衛官になっている。私は、「頑張ってね。昨日の路上ライブは客が3人に集まりました。」というメッセージを返す。前回は2人だったから、3人は進歩だ。そう言い聞かせた後、スマホの電源を切って、ギターケースからギターをとりだし。自分で創った曲や、有名アーティストの曲を弾くのである。
 時間を気にすることなく、没頭して弾くときに私は一番の幸せを感じる。このギターさえあれば、生きていける。心からそう思う。お金なんかなくても生きていけるのでは?ギターさえ弾ければ生きて行けるのでは?ギターは私にとって命と同義だ。
 気が付けば、手元の時計で一時間半ほど弾いていた。スマホの電源をつけると、正久から返信が返ってきていた。「少なっ」。「うるさい!」と返しておいたのであった。
 おなかも少々すいてきたし、夕方からのバイトの時間もあるので急いで、ギターをしまい、帰り道を急ぐ。途中、すき家により牛丼とサラダをテイクアウト。家に帰ると、それを急いでかきこむ。すると、机においていたスマートフォンが鳴る。正久からだ。「じゃっちょくら筋トレしてくるわ。またな。」「休みであるのに筋トレなんてご苦労。」即座に返信をする。そしてまた牛丼とサラダを食べる。戸棚に飾ってある写真をみた。
 去年の夏、二人でとった海の写真。まだ二人とも高校三年生だった。私が海の家でライブをした後に、二人でのんびり過ごした。あの、時がとまったような感覚と綺麗な海の景色はいまでも忘れられない。今はお互いが違う場所で夢を追っている。この先々どうなるかはわからない。しかし、彼が頑張っている限り、私は頑張れるのではないか。そして、私が頑張る限り、彼は頑張れるのではないか。だから、二人はずっと頑張れるのではないか。そう思って、サラダのトレイの底に残っていた最後のコーンを口に入れると、容器を綺麗に洗ってゴミ箱に捨て、再びギターを持って弾く。このままずっと弾いていたい。あっと言う間にバイトに行く時間が来た。

                   〇
 
 今日は、目覚まし通りに目が覚めた。7時だ。昨日より睡眠時間は3時間も少ないのにも関わらず、今日の方が目覚めがよい。今日は朝ごはんをしっかりと食べる。といっても、昨日バイト先の先輩にフルグラをもらったから食べるのだ。このフルグラは恐らく、2週間は朝ごはんとして使うことができる。ナイス先輩。
 今日の午前中にすることは、本を読むこと、ギターの弦を変えること。
「メロディはそこそこ水準は高いのだけれど、歌詞が微妙だねえ。シンガーソングライターになりたいなら詩の方も鍛えないと。」
 オーディションの行く先々で私になされるアドバイス。もっと、語彙力を増やしたい。私は言葉を組み合わせる作業が苦手だ。メロディは感覚で作ることができるけれど、歌詞はメロディほどにはそれができない。だから、苦手だけれど本を読む。Kindleで0円の文学作品。夏目漱石の「坊ちゃん」を読み始める。 途中から、文字を追うだけになる。仕方なく、「スヌーピーの言葉」という簡単な文章で書かれているものを本棚から取り出した。丁度開いたところに「配られたカードで勝負するしかないのさ」という言葉。すると、途端にキターが目に入る。本は床に広げたまま、そっと置いた。
 丁寧に弦を変える。この作業は、無になれるから好きだ。一本一本外して、新たな弦を取り付ける。昼時であることも忘れて、最後の一弦から六弦までのチューニングを終えたのであった。読書はたった30分でも退屈をしたのに、この作業は何時間してもちっとも退屈をしない。そして、新しい弦でその喜びを、即興でできたメロディでかき鳴らす。結構これがいいものだったので、メモ紙にコードを書き留めておいたのであった。
 書き終わった後で、床に置かれた「スヌーピーの言葉」を見て、はっとする。言葉を生み出す能力を鍛えなくてはならないのだ。しかし、身体が本に赴かず、しばらくその場で考え込むと、ご飯をつくろう、というように思い立つ。目玉焼きとその横でピーマンを焼く。そして、あらかじめ炊いていたご飯と共に食べるのである。ご飯が終わり、片付けをすると、眠たくなり眠ってしまった。1時間ほど眠って起きた後はもうすっかりバイトに行く時間であった。
 「スヌーピーの言葉」を本棚のもとあったところにしまい、一応のメイクをするとバイト先に向かうために、家をでるのであった。家を出た時に言葉が浮かんできた。「失敗さえ間違いじゃないでしょ。」
 自転車をこぎながらさらに言葉はでてくる。「会えなくても、心はいつでもつながっているだよ。」なんだ、読書なんかしなくたって、人の言葉を学ばなくったて、心に浮かんでくる言葉はあるのだ。新しい曲ができそうだ。よかった。

                 〇

 またオーディションに落ちた。今までに何回落ちたことがあっても、堕ちることはその都度落ち込むものだ。
 そんな今日は駅前で路上ライブをする。前回は3人。今回は何人来るのか。一曲目の時は1人、二曲目になると3人になった。お、これで記録更新。そして、三曲目。さらに三人集まった。大幅に記録更新だ。結局、合計で六曲歌って、入れ替わり立ち替わりがあったものの一曲以上聞いてくれたお客さんは、合計10人に上った。
 終わって、ギターケースに入った合計3067円を大切にポケットにしまったときに私は思う。まだ行ける。オーディションに落ちて落ち込んでいた心が、少し浮き上がってくる。
 恐らく、この繰り返しだろう。落ちては、すこし浮き上がり、落ちては、少し浮き上がる。落ち込む姿は想像できても、諦めるといったことは想像できない。そうだ。今度からは、ネットにも投稿してみよう。恐らく10人以上は集まるだろう。
 帰り道、大きなギターケースを背負って、富士そばに寄るのであった。少し奮発して食べたかつ丼セットの味はおいしかった。そして、帰り道で楽譜を買うために本屋と音楽ショップが合体した店による。楽譜を買い終わって店を出ようとすると、パッと目に入った英単語帳がなつかしく思え、手にとってみる。わからない単語の方が多かった。パラパラと単語帳をめくっていると、「take a chance」 という熟語があった。そこでめくる手を止めた。「take a chance」という言いやすいのと、「リスクをとってなにかをする。」という意味がまたいい。今の自分を表しているようである。
 「Take@chance」新しい歌の名前だ。

「明るいトライアンドエラーの繰り返しができたらいいな。」暗く、不安で迷う僕は常にそう思います。日常をひとつの物語のように捉え、落ち込むことときにも自尊を忘れない。妄想に出てきたこの女性は僕の理想の投影なのかもしれません。

このような、細かなところに幸せを感じる余裕とチャレンジを繰り返す強さというものを是非身に付けたいものです。

次回は、AAAの「ハリケーンリリ・ボストンマリ」であります。次回はどんな妄想が生まれるのでしょうか。お楽しみに。

ダクト飯作品↓

「ダクトに埋もれた短編集」

学生でお金がなく、本を買うお金、面白い人と会うためのお金が必要です。ぜひ、サポートよろしくお願いします。