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マネの衝撃的絵画は『草上の昼食』だけではない!?:寓意だらけの『ナナ』

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 エドゥアール・マネ『草上の昼食』1863年

 19世紀後半、印象派に先駆け、当時の画壇に新しい風を巻き起こしたマネ。1863年に発表された『草上の昼食』は、その主題が破廉恥な内容として捉えられ、笑いとスキャンダルを生みました。当時の絵画は、神話や歴史を主題にした作品を王道として扱っていた為、それにそぐわない物は絵画として認められなかったのです。『草上の朝食』は男性2人の間にいる裸の女性が問題でした。神話画ならヴィーナスなどの女神が、その物語の文脈で素肌が露わになることはあります。しかし、この絵にはそのような神話的物語が見えず、売春婦とその客が郊外で昼食をとっている”当時”を切り取っているのです。この表現が下品だと認識され、スキャンダラスな絵画として知れ渡ったのです。現代の私たちが見たら、ヴィーナスの裸もこの女性の裸もある種の破廉恥さを含んでいると思うかも知れませんが、当時の人々にとって”神話画”として鑑賞できるか否かがとても大事な要素だったのがわかりますね。

 『草上の昼食』はさまざまなところで語り尽くされているので、このくらいにして、今回はマネが描いたもう1つのスキャンダラスな絵画を紹介します。

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エドゥアール・マネ『ナナ』1877年

  この作品『ナナ』は高級娼婦が、化粧をし身支度をしている場面を描いております。鏡の前で化粧道具を両手に持ち、可憐な姿に変身している彼女。実はまだ下着姿なのです。私たちが見ると白のスカートなのかなと思うこちらは、ペティコートというスカートの中に履く下着だそうです。そうだとわかる理由の1つに画面左手に見えるスカートが挙げられます。現代の見立てに変換したら、これまた破廉恥な絵画ですよね。

 彼女が化粧しているのを待ちきれず、苛立っているのが右手に座る客の男性。彼は唇を噛みしめ、顔は強張っており、右手に持つステッキは強く握られています。紳士な出立ちが台無しですね。

 さて、この絵画の物語はわかったところで、次に見ていただきたいのが、本作にちりばめられて寓意です。それぞれのモチーフにはどんな意味が込められているのでしょうか。

①壁紙に描かれた鶴の意味は?

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 この頃のヨーロッパでは中国や日本の絵画や工芸が大変気に入られ、重宝されていました。その為、東洋的なモチーフである鶴が、画面右上の壁紙に描かれているのは納得がいきますよね。ただそれだけが描かれた理由ではありません。この鶴の意味は俗語で『売春婦』なのです。先ほど解説した、ペティコートと相まって、性的な図像をより強める効果をもたらしているのです。

②男性の組んだ足の意味は?

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 苛立ち、少しでも気を紛らわせたい男性は足組をしていますね。これは身体と感情表現に止まらず、俗語を含んでます。足組し、彼女を蹴り飛ばそうとしている仕草がうかがえることから、こちらも性的な表現として認識されていたそうです。

③消えたロウソクの意味は?

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 彼女が化粧している奥に目をやると、短いロウソクがあり、そこに火はありません。さて、こちらはどのような意味があるでしょう。火が着いているというのは、情熱や欲情の象徴として認識されますよね。つまり、登場人物である男女の間には、情熱がなくなっていると考えられます。ロウソクが短いことから、長い間の付き合いだったのかと考えさせられますね。

『ナナ』との出会い

 このように一つの絵画にはその主題にあったモチーフが多く配置されています。その意味を知ると絵画鑑賞がより楽しくなりますね。

 最後に、この度『ナナ』を調べるきっかけになったのが、こちらのイラストです。毎日、絵画を模写しイラストにされている”るいこさん”の作品を観て興味が湧きました。絵画の好きなジャンルが固まっていると、なかなか他のジャンルへ手を出しづらくなってしまっている僕は、るいこさんのイラストから新し出会いを見つけています。皆さんも普段と違った作品に出会ってみませんか?

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