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知っているようで知らなかった!?:富嶽三十六景トリビア3選!

 日本のみならず、世界でその名を馳せたのが葛飾北斎。現在の日本国のメインビジュアルに採用されていたり、印象派に強く影響を与えたことで有名ですね。

 今回はそんな彼の代表的なシリーズである”富嶽三十六景”にまつわるトリビアを紹介します。作品をよく見ていなければ気づけない事やちょっとした豆知識などを取り上げます。

【三十六景なのに作品数は〇〇枚!?】

 そのタイトルのように富士山を描いた作品が36図あると思っている方が多いと思いますが、実はそうではありません。当初は『神奈川沖浪裏』や『山下白雨』などの有名作品を合わせた36図で構成されておりました。しかし、これら36作品の評判があまりにも良いので第2シリーズを描くようになります。そこで10図の追加が入り、最終的には計46枚で富嶽三十六景と言います。ちなみに最初の36図を”表富士”、あとの10図を”裏富士”と呼称します。

【1枚の作品に2つの季節!?】

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『富嶽三十六景 甲州三坂水面』

 季節は夏でしょうか。青々とした木々に覆われた山の間には、富士が厳格に鎮座しております。その山肌は露わになり、富士山特有の茶褐色の岩や砂が見えるようで、その力強さや雄大さを感じますね。

 手前に目をやると大きな湖が広がっており、一隻の小舟と湖面に映る富士山が見えるではないですか。所謂、逆さ富士というやつです。ただこの画面、とても不思議だとは思いませんか。そう、湖面に写った富士山は夏のゴツゴツとした岩肌ではなく、雪を被った冬の装いなのです。

 つまりこの作品は1枚の作品に2つの季節、夏と冬が織り込まれた、日本の花鳥画(1作品に四季が描かれる)にも似た粋な浮世絵なのです。

【富士が描かれていない富嶽三十六景がある!?】

 富嶽三十六景には富士山が各名所と共に描かれていますよね。そうでなければ富嶽三十六景と言えないではないですか。しかし、表富士、裏富士を合わせた46図の中で、1つだけ富士山が描かれていない作品があるのです。それが、裏富士のひとつである『諸人登山』です。

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『富嶽三十六景 諸人登山』

 本作は、行者が富士山信仰で登山する場面です。『甲州三坂水面』と同じ夏の富士ではある物の、この山の険しさを表している点が大変興味深いですね。しかも、この作品が富嶽三十六景シリーズで最後に描かれたと言われているのです。最後に悠然たる遠景の富士ではなく、その荒々しさを残し、それに立ち向かい巡礼する人々を残したのはなぜなのでしょうか。


 富嶽三十六景には北斎の画業が集約されており、その腕はもちろんのこと、ユーモアや粋を感じる作品が多くあります。皆さんはどの作品がお好きでしょうか?

 ちなみに、5月の末には北斎の生涯を描いた『HOKUSAI』が上映されるようです。気になりますね。


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