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そして、母はごはんを放棄した

もうだめだ…何にも作る気がしない。日曜日。さわやかな朝に似つかわしくない、この世の終わりのような母の姿に息子たちは凍りついていた。

ごはんの無限ループ

3月の上旬から幼稚園と小学校が休園・休校になり、1日に3回キッチンに立っている。当たり前と言えば当たり前なのかもしれないが、これがかなりきつい。

一日の始まりである朝ごはん。食べ終わると、子どもから恐怖の質問が飛んでくる。「お母さん、昼ごはんは何?」。さきほど、食卓でごはんを食べていた子どもたちの姿は幻だったのか。いや、現実だ。成長盛りの子どもたちは、食べても食べてもお腹が空くらしい。そして大人と同様、外出自粛中の生活の中では、ごはんが楽しみの一つにもなっているようだ。昼ごはんが終わればまた晩ごはんがやってくる。無限ループだ。

ごはんというと作ることだけに目がいきがちだが、在庫管理、仕入れ、補充の作業も大変だ。とにかく冷蔵庫がすぐに空っぽになる。スーパーへ買い出しに行き、家に搬入して、冷蔵庫へ詰め込んでいく。この作業にも飽きてきた。冷蔵庫補充ゲームということにして、楽しむしかない。

お昼ごはんにメニュー制度を導入するも・・・

毎日、献立を考えるのが面倒なので、お昼ごはんにメニュー制度も取り入れてみた。メニューの中にあるものであれば、何でも注文してもいいという制度だ。「焼き肉弁当とフライドポテト」「ラーメンとフライドポテト」といったわがまま放題、栄養偏り放題の注文が飛んでくる。ラーメンを茹でながら、お肉を焼きながら、ポテトを揚げる。厨房は大忙しだ。2週間ほど実行してみて思った。何だこの苦行は。ということで、メニュー制度は1日おきに導入するということに落ち着いた。

ごはんを作ってもらうことのありがたさ

私がごはん作りたくない妖怪としてリビングに現れた日曜日の朝、長男がハムチーズトーストを作ってくれた。昼ごはんは夫がチャーハンを作った。夜ご飯はデリバリーにした。1日キッチンから離れ、私は正気を取り戻した。

それにしても、自分以外の人が作ったごはんは本当においしい。胃も心もじわっと温かくなる。週に5日も給食を頂けるのはなんてありがたいことだったのか。給食の献立を考え、材料を仕入れ、作ってくださった方々には本当に感謝だ。私がごはん作りを放棄したことで、子どもたちはごはんを作ってもらえるありがたさを実感したのだろうか。

月曜日のお昼。作ったあんかけ焼きそばを見て「えーー!あんかけ焼きそばの気分じゃないのに」と言われた。全然感謝してないやん。意気消沈した。

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