残り火

なにをはなしたかしら
思い出しながら
電車は
わたしを運ぶ
あかりの消えた
人のいない部屋へ

雪が降るなか
暖色のひかりの下
六人は
中原中也を追いかけた
周りでは
カフェの客たちが
好きなように
喋り
笑い
そんな声に
負けじと
時に声を張り

ひとりだと
別の銀河ほど
遠かった彼の言葉は
みんなの熱をくぐると
一歩近づいたような気がした

視覚的言語なのに
言葉から映像が浮かばなかった
彼の観念の映像を
言葉にしているのか
そんなことを
話した帰り道
赤信号で
停まる車の
ヘッドライトに照らされた
粉雪だけ
やけに覚えている

詩とは
小説とは
そんなことを
生意気に語り
そんな不毛な言葉に
生きる熱を
その残り火を
持ち帰る夜

2024.12.25

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