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【のーがたのーと】直方のカフェ&バーは登録有形文化財!?老若男女の憩いの場/「塩cafe」塩川孝子さん 塩川直登さん


直方駅から、レトロな商店街を抜け、閑静な住宅街に溶け込みつつも、どこか独特の雰囲気をまとった木造の建造物。直方の夫婦が登録有形文化財をリノベーションしてできた、古民家カフェ&バー「塩cafe」です。
 


「絶対に壊させない」守ったのは築90年の登録有形文化財

国の登録有形文化財である建物を改装した「塩cafe」

「文化財を取り壊すのはもったいない、直方の街並みを守りたいという思いで買い取った。」

こう話すのは、直方市職員で一級建築士の塩川直登さん。

2021年の12月から、妻の塩川孝子さんと夫婦二人三脚で改装を行いました。

図面にはなかった天井を取り除き、吹き抜けにしたそうです。

文化財であるため手のくわえられない壁や床はそのままに、当時の図面どおりに建物を復元していきましたが、作業には多くの課題があったそうです。しかし、店内を見渡せば工夫とアイデアで困難を乗り越えてきた様子が見て取れます。

「塩cafe」の「和モダン」な内装。

当時の茶箱を再利用した椅子、建材の端材ふんだんに使用したトイレの壁、DIYで作られたステージ。「塩cafe」に漂う「新と旧」「和と洋」が調和した独特の雰囲気の正体は、店内にちりばめられた夫婦の工夫の結晶でした。

DIYで作られたステージ、お客さんが自由に利用できるピアノが置いてあります。

ただ建物を買い取るだけでなく自分たちの手で工夫を凝らして、文化財を守っていくという強い意志を感じました。

そうして、2021年4月、「塩café」がオープンしました。


テーブル上でグツグツ、ただよう味噌の香り。新しい直方名物「どてん」

ここで、オーナーであり女将(おかみ)である塩川孝子さんイチ押しのメニューを紹介していきます。

「どてん定食」1000円 単品 800円 ※(その日によって具材が変わることがあります。)

「どてんを直方名物にしたい。」

「どて煮」と「おでん」を組み合わせた「どてん」は当店のオリジナル料理とのこと。
 
具材たちがグツグツと鍋の中で踊る音と、そこから漂う味噌の香りが食欲を掻き立て、ひとたび箸を運べば、よく味の染みた具材が口の中で一気にあふれ出します。我に返るころにはごはんも「どてん」もすっかり空になっていることでしょう。


特別な日を彩る、女将自慢のサプライズケーキ

サプライズケーキ (3日前までに要予約、金額要相談)

女将(おかみ)の孝子さんは昔からお菓子作りが趣味であり、カフェメニューのスイーツもすべて手作りで作っています。3日前までに電話で要望を伝えればサプライズのサービスをしていただけるそうです。特別な日を「塩cafe」で過ごしてみるのはいかがでしょうか。

「塩cafe」にはほかにも多くの女将こだわりのメニューがあります。抹茶ラテやほうじ茶ラテに使うお茶葉は「前田園本店」から、コーヒー豆は「このみ珈琲」からとどちらも直方市のお店から仕入れており、素材にもこだわりが感じられます。

「塩cafe」の人気メニュー・抹茶ラテを作る孝子さん。


「塩cafe」から、直方の賑わいをもう一度

オープンから1年が過ぎた「塩cafe」、その経営の原動力となっていたのは夫婦の直方に対する強い思いでした。

直方市に祖母が住んでおり、幼いころからよく直方の商店街を訪れていた直登さんはこう語ります。

「 塩cafe がめちゃくちゃ盛り上がれば、お客さんが駅まで電車で来て、そこから商店街の中を通って必ずここまで来る。そうして商店街を元気にできたらいいな、っていう思いがある。」

また、小倉出身で直方に兄が住んでいるという孝子さんは、

「 塩cafe の経営は町おこしなので、ここに来る間の商店街に賑わってほしいという思いを込めてやっています。昔は、商店街は賑わいがすごかったらしいですよ。そんな感じに戻るようにしたい。」

直方への想いを語る孝子さん

夫婦ともに、直方の商店街に賑わいを取り戻したい、という強い思いがありました。

さらに、多くの人が気軽に来れるための工夫があるといいます。

「普通のお店はどの年代向けっていうのを決めると思うんですけど、それを決めてないんですよ。なので、駄菓子を置いて子供達も来れるようにしたり、お酒を置いて男の人も来やすいようにしたり。」

昼はカフェ、夜はバーに姿を変え、老若男女に愛される「塩cafe」。誰もが過ごしやすい空間の秘密はここにありました。


子供向けの駄菓子は夜にはおつまみとしても活躍します。

古きを温ねて、新しきを知る。進化し続ける塩カフェ

直登さんが、登録有形文化財を守るため買い取った建物は計三棟。そのうちの最も手前の建物をカフェとして活用していますが、奥に眠る残りの二棟も活用する計画があるそうです。

現在、最も奥にあるレンガ造りの蔵をコンサートホールに改装しており、今年の夏完成予定とのこと。

現在改装中の蔵、2023年の夏に完成予定。

また、カフェとコンサートホールに挟まれた建物についても構想が。

「座敷のところがあるんですけど、そこを綺麗にして壁の葺き替えもしたら休憩スペースにする。昔の縁側に座って中庭を眺める感じ。そんな場所にできたら、そこでも飲めたら面白いな。最終的には民泊にもできれば。」

今後の展望について笑顔で語る直登さんでしたが、その目の奥には硬い決心が見て取れました。

大正時代に建てれた文化財を守りつつ、直方の未来に思いを馳せる「塩cafe」。

これからも夫婦の挑戦は続いていきます。


店舗情報

「塩cafe」
営業  :10:00~22:00(平日15:00~17:00は閉店)17:30以降は要連絡
     昼飲みOK、夜カフェOK
住所  :〒822-001
     福岡県直方市殿町12-23
     直方駅から徒歩10分
電話番号:080-7981-3343
Instagram: shiocafe_nogata

※掲載内容は記事作成時の情報となります。


文・編集:甲斐健太郎
取材  :甲斐健太郎、難波、鶴、青木 
撮影  :青木

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