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「北北西に進路を取れ」ヒッチコック監督

North by Northwest by Alfred Hitchcock

1959年のアメリカ映画。スパイアクションであり、ラブストーリであり、サスペンススリラーでもある。とにかくスタイリッシュで、謎や危険が次々と捲き起こる合間にハッとするほど美しいシーンが登場する。

洋画のスタンダードみたいなものを想像していたが、スタンダードにするにはレベルが高すぎる作品だ。ちなみに多くの名監督が観るべき映画ベスト10の中に入れている。

監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ケーリー・グラント、エヴァ・マリー・セイント、
   ジェイムス・メイソン、マーティン・ランドー
脚本:アーネスト・レーマン
音楽:バーナード・ハーマン
撮影:ロバート・バークス
製作国:アメリカ合衆国 上映時間:136分

ヒッチコックが太ったおっさんであることは知っているが、彼の「天才ぶり」はどこまで知られているのだろうか。皆に尊敬される所以はおそらく一つではないと思う。

物語を簡単に言うと…い、言えない…。複雑すぎる。

主人公が何かしらの陰謀に巻き込まれ、恋に落ちた女は敵側の人間…。しかしその女を悪の枢軸から救い出すぞ!と超イケメンが大活躍…というような内容である。

これだけ聞くと「陳腐な007風の映画」に聞こえるかもしれない。いや、まさにその通りなのだが、このストーリーラインはあくまでも「主軸」でしかなく、その「主軸」の間には紆余曲折があり、セリフ、行動、小道具、全てが伏線で謎を呼ぶ。

そのたたみかけ具合が「ブラボー!」と拍手する暇もない程。終始謎が洪水のように供給されるので、ゆっくり見られたのが最後の5分くらいだった。なんなんだ。

カットの切り替えや撮影的な派手なアクションがないのも特徴的。どーんと引いた画角で物語が展開する中にたまーに現れるクローズアップ。この緩急にゾワゾワした。これがすごい。かっこいい。潔い。

現代の映画であれば、もっと手に汗握るカット割りやアクションなどが登用されるのだろうが、そうすると途端に「普通の映画」になるのだろう。

…いや、もしかしたら、この作品は「神の視点」から撮られていて、カメラがこの距離感でないと成立しないのかもしれない。考えすぎか?

あわよくば技術を盗んでやろう…ひひひ。と思っていたが、盗むには修行が足りぬ。これは末恐ろしいほどに隙のない映画であった。この作品を盗むには相当な賢さと忍耐力が必要だと思われる。

正直、自分は「面白い」とは感じられず、ここまで完璧だともう成す術がないというか。もう少し観る者の想像力に委ねて欲しいというか。

しかしながら凄まじさ100%である。凄まじすぎて「面白かったで〜す♪」と気軽に言えないというだけかもしれない。「息を飲むほど素晴らしい!」と感じたシーンが少なくとも5つあった。通常の映画では一つか二つなので、思い返すだけで息がつまる思いだ。

個人的に感動したのは、この作品をオマージュした監督が何人もいること。(裏を取っていないので違う可能性もある)気づいた所では『暗殺の森(ベルトリッチ監督)』『突破口(ドン・シーゲル監督)』。それぞれの大事なシーンが、この作品からの引用と想像する。この作品を見てから上記二つを見たかった。

さらに『ビッグ・ロバウスキー(コーエン兄弟)』の私の大好きなシーンもここからの引用だった!(と思う)

インチキな悪者を扮するベン・ギャザラのメモをDudeが盗み見しようとしたら…チンチンの勃ったへのへのもへじだった。というシーン。

見る度に虚しい気分になるシーンが「北北西へ進路を取れ」から来ていたことを知っていれば、虚しさが倍増したと想像する。次見る時が楽しみ。

過去の名作に遡ると現代作品の面白さが増す。映像作りは、先人の作り上げた土台を元に作られているんだな…先が長い。

ヒッチコック監督作品、もっと見なくては。

この作品から個人的に学んだこと…
主人公が超強引という設定は、物語をぐいぐい展開する良いエッセンス。

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