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82年生まれ、キム・ジヨン なぜこんなに息苦しいのか

あらすじ

キム・ジヨン(チョン・ユミ)は結婚を機に退職。育児と家事に追われ、常に誰かの母であり妻であり、閉じ込められているような感覚に陥ることがあった。
疲れているだけだと夫のデヒョン(コン・ユ)にも自分にも言い聞かせていたが、ある日からまるで他人が乗り移ったような言動をするように。
ジヨンにはその間の記憶はなく、傷つけるのが怖くて真実を告げられないデヒョンは精神科医に相談に行くものの、本人が来ないことには何も改善することはできないと言われてしまう。
何故彼女の心は壊れてしまったのか。少女時代から社会人になり現在に至るまでの彼女の人生を通して、見えてくるものとは……。
チョ・ナムジュのベストセラー小説を、映画化。

感想など

小学校の頃から、言いたいことがあってもおしとやかでいるよう躾けられた。
高校生の時は、レベルの高い進学校に通うためバス通学した時に、バスの中で男子高校生に痴漢され、近くにいるおばさんに助けられたが、父に「短いスカートを履くな、男性にやたらと笑顔を振りまくな、遠くの塾に通うな」と責められた。
広告代理店では、仕事ぶりでチーム長に認められながらも、同期の男性社員より昇進が遅れ結婚していると家事や育児との両立が難しいという理由で企画部へ選抜されなかった。
両親に「早く子供を作れ」と急かされたら、夫に「なら早く子どもを作ろう」と育児などで起きる環境の変化を他人事のように考え妊活を勧められた。
正月に義理の両親に会いに行けば、ご馳走作りなどの手伝いをさせられてくつろげない。
かつての職場のチーム長に誘われて再就職しようとして、ベビーシッターや保育所を探してもなかなか見つからず、夫が育児休暇を取って協力しようとしても、義理の母が反対する。
公園でベビーカーに子どもを乗せて一息ついていると、サラリーマンから「いいよなぁ、旦那の金でコーヒー飲める身になりたいよ」と皮肉られる。
女性であるというだけで、真綿で首を絞められるような閉塞感。
ジヨンの母は、兄弟の中で一番勉強出来て先生を目指したかったが、父の失業から工場に勤めて兄弟の学費を稼ぎ先生の夢を諦めた。
ジヨンの姉やジヨンの職場のチーム長のように夫に言いたいことを言って主張してる女性もいるが、差別的な発言をする男性社員に一度は怒っても場の空気を悪くしないために男性社員に敢えてフォローするような発言をチーム長がしたり、男性のプライドを傷つけないような某大物の発言を敢えて借りるなら「わきまえた」言動をせざるを得ない男尊女卑が根強く残る状況が、韓国にある。
ジヨンの母の代より前から、強固な家制度を基盤に後継ぎの男性を優遇する男尊女卑的な社会が続いてきた。その中で、社会的な障壁にジヨンの母やジヨンたちは苦しみ壊れていった。
男尊女卑的な状態に慣れてしまってる男性は、女性からの男尊女卑的なものへの怒りや抗議が理解出来ず、他人事のように受け取るか否定してしまう。
ジヨンの異変をきっかけに、微かな希望を感じられるようにジヨンの周囲は変わっていくけど、それでもジヨンや母が声を上げなければ男性や社会が変わらない状況は、変わりない。
片方が閉塞感や苦しみを感じる社会は、もう片方も苦しい社会。
互いに相手の言うことに耳を傾けて、お互いが生きやすい社会を作ることが大事だと改めて思える映画。

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