見出し画像

痛みを伴う回顧⑤

少し期間が空いてしまった。
ずっと考え事してるのもあれだし、年明けからは社労士の勉強を始めていて。作業時間はすべて勉強に充てていたため。

前回の記事。

前回の締めが2012年の年末ごろの話であった。
抗がん剤治療を終えて、何をするわけにもいかないためゆっくりと時間を過ごしていた時期だった。
正確な時期は相変わらず覚えていないけれど、2013年の年明け頃には入院をしていた気がする。抗がん剤で弱った癌細胞を除去するための手術、一連の治療の締めとなるような手術のためだった。
その期間、嫌なニュースが続いた。

好きなバンドがいた。Pay money To my Painというバンド。
そのボーカルであるKさんが亡くなったとのことだった。Twitterでそんなニュースが流れてきた。その瞬間、大きく感情が動いただとか取り乱したとかはなかったけど、こんなときに知りたくなかったとは思った。ショックだった。
心不全とのことで、自殺などではなかった。元々精神の疾病を抱えていたとは知っているのでそこは不安だった。でも死のうとしたのではなく、生きようとしていたんだと信じることができる点にまだ救いを感じた。

とか言ってる矢先だった。
自分の手術が終わった。全身麻酔であるため、起きた時には何が何だかわからない。
ようやく自分の病室で目を覚ましたときだった。ケータイに着信が残っていた。
大学でバンドを組んでいたメンバーからだった。ただそのタイミングではまだ麻酔の影響なのか眠いというのか意識がフワフワしている状態であったので、その場での折り返しはせずに寝た。

少し落ち着いたタイミングで折り返しをした。
相手は泣きじゃくっていた。いや、最初は狼狽をしていただけだったが、聞いているうちに声が崩れていった。

「⚪︎⚪︎が死んだ」と。

⚪︎⚪︎とはそのバンドでボーカルをしていたやつだ。

何が何だかわからない。細かいやりとりは覚えていない。覚えているのは彼が死んだということだけだ。

どういうことだ?こっちは癌で死ぬ可能性があって、それでも生きるために結構しんどい治療を受け続けている時に?彼は死んだ?
意味がわからない。こっちが生きようと必死になっているときになんで死ぬんだ。
確か、その場で自殺である旨も聞いたんだと思う。だから余計にそう思った。

悲しみなのか怒りなのか混乱なのか
よくわからなかった。電話口にいる相手が泣きじゃくっているのをよそに、泣くこともしなかった。ただ実感がなかった。実際、頭が働いていない時期だったのもある。

何がなんだろうが、僕は今は手術明けで動くこともできない。本人が死んでいるので本人に確認することもできない。テンション的には死んだ本人に電話して「死んだって聞いたけどマジで?」とか聞きかねないレベル。そう思うとなんだかんだ混乱はしていたのかもしれない。

どう電話を切ったのかもわからないが、いろいろなことが頭を巡っていたと思う。

(後日談でいうと、彼の四十九日には親族以外で唯一お招きをいただけて、最後に遺影と向き合うことはできた。遺書にバンドとメンバーのことについて記載があったことでお声かけをいただけたようだ。本来は死因が死因であるため、親族だけで執り行うことが多い。)

そんな暗い出来事がいくつか続いて、その入院はそんなに長くかからなかった。退院して、なおも検査した上で治療もひと段落。あとは定期的な通院を続けることで落ち着いた。(それから10年以上経った今も定期検査は受け続けている)

こうなると晴れてただのニート(既往歴有)の誕生である。
とにかく苦しい出来事が多かった。生きづらいと思う事実が多かった。生きようと頑張っていたが、他方で生きていたくない気持ちもあった。

その瞬間は気づいていなかったけれど、おそらく精神的に結構参っていた。今も「適応障害でうつ状態」であるが、この症状もかなり強く出ていたんだと思う。特にうつの部分は強かった気がする。

うまく説明ができないけれど、性格が変わってしまっていたような。大学時代の友人にかたっぱしから連絡をしたり。そんなこと普段はしない。

とはいいつつ普通に転職した。
色々ビハインドはあるけども、中小企業の経理部で採用してもらえた。
余談だけど転職がうますぎる。すぐ内定もらえる。褒められたことではないけども、初対面の印象がめちゃくちゃいいんだと思う。笑 最終的に今の会社で6社目ですからね。全部普通の会社ですよ。

転職には成功したけど、仕事がうまくいくかどうかは別として。まぁ仕事の話は本筋から外れるのでこれは割愛する。

とかやってるうちに、突然彼女に振られた。
急に数日間メールが途絶えて、ちょっとムカついてきたのでしつこく電話したら出たんだけどその場で振られた。(あれこっちからなんも連絡しなかったら自然消滅になってたのかな。4.5年程度付き合ってそれもどうかと思うけど


当時はめちゃくちゃムカついた。
色々なことがあった時期でもあって、追い討ちかけるような状態だったので恨みに近い感情もあった。
今になると納得できる部分も多い。
病気の内容もそうだし、仕事のこともそうだし、相手からしたら考えてしまう内容だよな。
加えて言うと、多分当時の自分の性格が終わってた。彼女を大事にしてましたか?って聞かれれば自信ないというか、長く付き合ってたこともあるし雑になってた部分や、自分に?世界に?イライラし続けていた時期でもあって、八つ当たりみたいに怒りを表してしまったこともあったろう。
俺だったら別れる。シンプルに人間性が終わってた。
(色々あって未だに当時から今のことに猜疑心はあるが。)

彼女に振られて少しして、また会社も辞めた。
たった3ヶ月のことだった。

こうして無事「マジでなんもない人」が完成した。
仕事もない。彼女もいない。守るべきものはない。病弱。
この時期の何もなさすごい。
好きなもんも大事なもんも死んでいく。消えていく。
よくある表現だけど、何もかも失って、夢や希望とかなんもなくなった。

------

ここから夏にある会社に拾ってもらうまで。
本当に終わってた。
何も期待しないことにしてたし、望むことも罪な気がしてた。

ある日、ふと死んでみようかなって思った。
綿密に計画したわけでもない、思いつき。
いいこともないしこれからも起こらないし。
ちょうど練炭とかよくニュースでやってたし。
テープで車に目張りして、中で練炭を炊けばいいんだろ?
よっしじゃあ練炭探そーって。
近所のホームセンターに行ってみた。
アナログ人間だから通販とか思いつきもしなかった。(今となっては本当にバカでよかった。)

小一時間ウロウロしたけど売ってなかった。考えてみれば練炭でーすとか言って売ってるわけないんだけど。
でも、売ってなかった。売ってなかったから仕方ないかって軽い気持ちで帰った。死ぬって強い意志があったわけでもなかった。
普通に晩御飯食べて、普通に寝た。

それからは死のうと思ったことない。
生きてるってそんなことなのかもしれないね。

死ぬことは劇的でもない。
ましてはドラマチックにエモーショナルでもない。
感動的な死なんて、それこそ映画の中にしかない。

-----

少し最後は急いで畳んだ感があるけれど
これで若き頃の振り返りは終わろうかな。
勝手にシリーズ化して勝手に疲れた。

あんまり思い返さないようにしていたので、本当に忘れている(思い出せなくなっている)ことが多かった。

とりあえず、生きていてよかった。とは思う。
今そうなれていてよかった。
今も適応障害で失職中だけど、どうせなんとかなるよ。だって俺天才だし。無敵だし。守るもんあるし。幸せだし。

今日も家に帰って
家族に会いたいなあ。

ここから先は

0字

¥ 150

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?