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第8回:「PDCAはもう古い」に惑わされない、改善サイクルの回し方。

こんにちは。CXコンサルティング部の富岡です。
日々、クライアントのマーケティング課題の分析や解決策の立案、実行支援を行いながら、自社の新規サービス開発に携わっています。

今回は、仕事をする中でよく耳にする、「PDCAがうまく回らない…」という声に対し、CXコンサルタントの一人として、私の考えをお伝えしたいと思います。



1.よく聞くPDCAの悩み


PDCAは業務改善のもっとも一般的なフレームワークとして浸透しており、マーケティングの現場でもよく活用されています。ただ、PDCAがうまく機能しているケースというのは思いのほか少ないように感じます。

現に、さまざまなクライアントからPDCAに関するご相談をいただきますが、私の聞く限り、その悩みの多くは「スピードの遅さ」に関することで、その理由は以下2つに大別されます。

  • PDCAの各フェーズで担当部門が分かれており、連携が取りづらい

  • Plan(計画)に多くの時間を費やし、Action(改善)まで行くのに時間がかかる。

組織の縦割り構造を解消できぬまま進むDXや、扱うデータの大量化などを背景に、このようなPDCAを運用するにあたっての問題点が浮き彫りになってきたのではないでしょうか。


2.PDCAはもう古いのか?


最近よく、「PDCAはもう古い」という論調を目にします。
“変化への柔軟な対応が求められる現代には合わない考え方である”とか、“OODAループに置き換えよう”であるとか、検索してみるといろいろな記事が出てきます。

たしかに、PDCAは1950年代に出てきたフレームワークで、“古い”です。
また、もともと製造業における生産業務の改善を目的に提唱されたもので、中長期のサイクルが前提となるため、“変化への対応はしにくい”と言われています。そのため、PDCAに代わる新たな業務改善手法への注目が高まっています。

ですが、私の個人的な意見としては、フレームワークが古いか新しいかは問題ではなく、現状に合った捉え方と取り入れ方をすれば良い話だと思っています。


3.うまく回る改善サイクルの捉え方


PDCAは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を順に繰り返していくことですが、改善サイクルをスピーディに回すには、このサイクルの捉え方と起点が重要です。

まず捉え方についてですが、PDCAってよくこのような図で表されますよね。

私はいつも、この図を見ると、勘違いのもとだなぁと思うんです。
組織の縦割りの話も出ましたが、PDCAは実際には各フェーズで担当する部門や実行単位が変わってきますよね。

Webプロモーションを例にすると、目的に沿った広告媒体の選定や配信予算の計画は企画部門で行い、その先の媒体手配や必要な広告クリエイティブの制作などは運用部門で行われるケースが多いと思います。

ですので、本来はPlanとDoは1対多ですし、PlanとDo以降でプレーヤーが変わることが多いにもかかわらず、上記の図ですとPDCAは“常に1つの場所で1本のらせんで回る”という勘違いに陥りやすいな、と。

私なりに実態に沿ったPDCAを図で表すとこうなります。


ポイントは、Planから複数のDoが走るということと、PDCAとは性質の異なる改善サイクルがもう1つ存在するということです。
私はもう一つの改善サイクルをCAサイクルと勝手に命名しています。
上の図にあります通り、複数のDoから構成される計画全体の最適化を目的とするのをPDCAサイクルだとすると、各Doの個別の改善をめざすのがCAサイクルです。

先ほどのWebプロモーションの例ですと、広告媒体の選定や配信予算の計画はPDCAサイクル、各広告媒体の配信設定のチューニングや広告クリエイティブの改善に関してはそれぞれCAサイクルを回す、というイメージになります。

PDCAサイクルが半年から1年といった中長期的な頻度なのに対して、CAサイクルは数週間から1カ月といった短期で高頻度に回します。また、PDCAサイクルが失敗を避けることに重きを置くことに対し、CAサイクルは変化に柔軟に対応することに重きを置きます。

つまり、各Doを担当する運用部門がCAサイクルで各施策の最適化を進め、そこで得たノウハウを企画部門が総合的に解釈してPlanに反映させることでPDCAサイクルを回すという構図になります。

次に、起点についてです。
PDCAというものだから、Planが起点となるのが当たり前と思うかもしれませんが、ここも大きな落とし穴です。PDCAに関する悩みの一つである、“Plan(計画)に多くの時間を費やし、Action(改善)まで行くのに時間がかかる。”については、Planから始めてしまうことにより陥ることだと、私は考えています。

Planから始めてしまうと、どうしても失敗を避けるために確度の高い計画をしようと、リサーチや分析に時間と労力をかけ過ぎてしまいます。その結果、緻密な計画通りにことを進めることで精いっぱいとなり、いつのまにか計画通りにことが進むことが目的となってしまう。

このようなことにならないためには、PlanではなくCheckから始めてみてはいかがでしょうか。PDCAではなく、CAPDに置き換えてみる。


かのレオナルド・ダ・ヴィンチが「知恵は経験の娘である」と言ったように、確度の高いPlanを立てるには、多くの経験値が必要です。Planよりも前に、CheckとActionを繰り返してたくさんの経験値をためることが先なのです。(あのスヌーピーもフランシス・ベーコンの言葉を引用して「最上の証明とは経験である。」と言っています。)

つまり、いきなり目標達成のための明確な計画を立てようとせず、現状を少しでも良くするための試行錯誤を繰り返して、何が失敗で何が成功だったのかを経験することで、質の高い計画が立案できるようになる。

マーケティングにおいても、まずは、運用部門がCAサイクルを素早く繰り返すことに集中することで、全体のPDCA(CAPD)がうまく機能すると思うのです。


4.身近なCAサイクルの例


私の個人的な改善サイクルの考え方について述べてきましたが、最も重要なことは“考えるよりも先に動く”ということです。そういった意味で、CAサイクルを素早く繰り返すことに意識を集中しましょう。

とは言うものの、具体的な例がないと分かりづらいですよね。実は身近なところでCAサイクルと言えるものがいくつかあります。すでに皆さんも体験しているかもしれません。

●1on1ミーティング

上司が部下の育成やモチベーション向上を目的に行われる1on1ミーティングですが、皆さんの会社でも取り入れているところが多いのではないでしょうか。2週間~1カ月に1度行われるのが一般的で、日々の業務の中での悩みや部門目標に対する行動の進め方のすり合わせを行います。

上司の視点では、部下一人ひとりの価値観や適性、心境を細かく確認(Check)しながら、部門の生産性を上げるための試行錯誤(Action)を繰り返す。部下の視点では、上司の価値観や心境を確認(Check)ながら、自分の考えや思いを理解してもらうために思考の言語化の試行錯誤(Action)を繰り返す。という意味でまさに現場主導型のCAサイクルになっています。

●実家の味

私の母の料理にはレシピがありません。すべての工程が目分量で進行しますし、そのときどきで入っている具材も異なることもしばしば。にもかかわらず、いつ帰っても同じ“実家の味”が出てくるのです。

一度、お気に入りの牛すじ煮込みの作り方を教えてもらったことがありますが、材料だけが明確で、各分量はかの長嶋茂雄ぶりの「ドバっと」「チョロっと」「ツーっと」という表現で、無論私には再現できません。母の調理を見てみると、中盤に1回味見をして何か足し、最後にもう1回味見をしてはまた何か足して、仕上がります。母いわく、「その時使う材料や鍋、気温とかでなーんか味が変わるのよね」とのこと。

なるほど、これもCAサイクルなんだなと。日々の調理環境の影響を味見で毎回確認(Check)して、足りないと思われる調味料を足してまた味見(Action)。この長年のCAサイクル経験値が、母にしか再現できない目分量(Plan)と調理法(Do)を形づくっているのだと思います。

マーケティング成果の向上も、上記2つの例のように、事(Do)が起きている現場でのCAサイクルを中心に進めることが重要です。

  • 接客品質の向上と、そこから得られた顧客の本音に近い声を、製品やサービスに反映する。

  • アクセス解析でユーザー行動を確認しながらUI改善を繰り返し、より使いやすいWebサイトにしていく。

  • 個別の商談品質の追求と、多種多様なクライアントニーズから共通項を見いだし、サービスを水平展開する。

など、店舗従業員やWebサイト運用担当者、営業、相談窓口オペレーターなど、ビジネスの現場で顧客と直接相対する人々が主役となり、多くの仮説をぶつけて反応を確認する。その先にあるべき姿が見えてきます。


5.CAサイクルが回らない…そんな時は。


いざ、皆さんの部門内でCAサイクルを回そうと思っても、そう簡単ではないと思います。

通常業務でもリソース不足なので新たな改善施策に取り組めないであるとか、改善を実行するための技術的な環境が不足しているであるとか、悩みは尽きないと思います。そんな時は、ぜひアウトソーシングを検討してみてください。

世の中にはマーケティング改善の伴走支援サービスが数多く存在します。当社もそんなサービスを提供する企業の一つですが、このnoteをお読みいただき、相談相手の一候補として認識いただけましたら、筆者としてはこの上ない喜びです。


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