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連作短編集】東雲塔子の事件簿 木島香の困惑(2)

 先週の水曜日。私とあまね先輩は書庫の清掃をする事になっていた。

 その日の担当エリアは部屋の雑巾がけと本の整理。

 書棚はかなり高さがあるものもあり、上の物をとったり掃除をするのには脚立や台に乗る必要がある。

 その時も、あまね先輩が脚立にのって棚の整理をしてくれることになった。

「下で押さえておきましょうか?」尋ねてみたが、

「大丈夫大丈夫、本も殆どないし、すぐ済みそうだから。カオちゃんはそっちの事やっといてよ」

「そうですか? じゃあ、気を付けてくださいよ」

 そう答えて私は雑巾がけをする為のバケツに水を汲む為に書庫を出たのだが、戻ってすぐに、

「うわっ……あ、あっぶなっ」という声に驚いて、先輩の方へ目を向けるとガタンガタンと脚立が揺れていた。

 高所での作業という事もあったのかもしれない。上の方であまね先輩がバランスを崩してしまったらしい。

「も、もう。だから言ったじゃないですか~」

 私は驚きながらも、脚立の方へ小走りで向かった途端に、ツルンっと足を滑らせて無様に転んでしまった。

 しかも恥ずかしい事に履いていた校内履きの靴が片っぽが勢いよくすっ飛んで行ってしまう。

 と、同時くらいにガシャーンと脚立が倒れる音も聞こえてきた。先輩も落ちてしまったのだろうか。と頭の片隅で想いながらも今は自分の事で手一杯。

「い、痛たたたたたたたた」

 完全に尻もちをついた状態でまごまごする私。と、そこへ、

「だ、大丈夫?」

 とあまね先輩が駆け寄ってきてくれた。

「あ、あんまりだいじょうばないですけど……」

 お尻を強打したのだから当然痛みがある。でも、それ以上に恥ずかしさがこみあげてきた。

「怪我してない? 保健室行こうか?」

「そこまでのことじゃないですよ。それより、あまね先輩は大丈夫だったんですか? 脚立倒れた音がしましたけど」

「ボクは大丈夫。カオちゃんが転んだのを見たら、ほっとけなくて飛び降りちゃったんだ」

 どうやら、あの音は脚立が倒れたのではなく、飛び降りて脚立を倒した音だったらしい。

「もう、無茶しないでくださいよ……でも、ありがとうございます」

「いいんだって。カオちゃんのピンチならボクは例え火の中、水の中飛んでくるさ」

 意外にキリッとした顔に笑みを浮かべてドンと胸を叩く先輩。

 冗談の様なセリフだが大真面目で言っているのが分かるから性質が悪い。勿論、言われて嬉しくない訳でもない……が。

「ああ、でも。そもそも先輩が脚立をガタガタさせてたから悪いんじゃないですか。下で押さえましょうかって言ったのに」

 私はちょっと照れ隠しに憎まれ口っぽい返しをしてしまう。

「む~~~。ごめ~~ん」

 言われた先輩は途端に先ほどとは打って変わってフニャンとした顔になってしまうのだった。

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