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性暴力予防ポスターのイラスト類似問題から想う、デザイナーの「参考」への意識。

デザイナーとしてこういう話題は決して他人事ではないので、本当にヒヤッとします。

最初にこの話題を知ったときは、トレース疑惑なのかなと思っていたら、それとは違う「類似性」という問題で取り上げられていたので、何が問題なのかちゃんと捉えておきたいなと思ったので書き出してみます。

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<何があったの?を簡単に>
今回話題になっていたのは、内閣府が「若年層の性暴力被害予防月間」の一環で製作した啓発ポスターに使用されていたイラストが、
・イラストレーターのたなかみさきさんの作品との類似性について指摘があった
・制作を請け負っていた会社での制作過程でたなかみさきさんの作品を参考にした事実があった
ことから、使用取り止め、配布済みのものはできる限り回収を行うことが内閣府男女共同参画局のTwitterでも公表され、話題になっています。


私は、絵柄が似ているか否かよりも「作家性の強さ」が気になった

改めて、今回の様子が違ったのが、トレース疑惑や著作権侵害したという話題ではないく、あくまでも「似ているから取り下げ」という点です。

多くの人は、この“似ている”ということから絵柄やタッチなどをあげていましたが、私は「作家性の強さ」が気になりました。

作家性:
クリエイターが創作を手掛ける際に、作品にその人特有の個性やメッセージ性が特徴や作風となって現れるさま、その傾向。

作家性 (さっかせい)とは【ピクシブ百科事典】 より

失礼ながら私はたなかみさきさんを今まで存じ上げていなかったので、これを機にInstagramを拝見し、そのイラストに込めているメッセージ性の高さを感じました。
さらに調べると、ご本人はJ-WAVEラジオのナビゲーターをされていたり、「性」をテーマにメディアへ発信する活動をされているのも伺えます。

そのイラストに表れる作家性の強さゆえに、類似したテーマで、類似した絵柄・タッチが使われてしまった結果、

今回問題になったポスターが、「たなかみさきさんから発信されたメッセージに感じてしまう」のが一番大きい問題なのでは?と私は思いました。

実際にTwitterでも「たなかみさきさんが描いたのかと思ったからショックだった」という意見も多く見受けられました。たなかみさきさんを今まで知っていたか否か、どのぐらい知っているかも、意見がわかれるポイントになっているように思います。

デザイナーが参考のする時、それは「ひとつの作品」なのか、単なる「素材のひとつ」なのか

あくまでも想像ですが、今回このポスターを制作した方のミステイクは、このイラストレーターさん個人が大事にしているメッセージ性を読み取らずに、イラストを同じ「性」を扱うテーマの“素材”として見た・扱ってしまったというところではないかと考えました。
それはそのイラストレーターさんへ、とても失礼な行為ですよね。

おそらくもっと、というか私のように30分そこそこでも調べていたら、たなかみさきさんへ依頼する可能性や、依頼ができないのなら似た絵柄で表現するのは良くないと判断できた可能性は十分あるのではと思います。
(※これはあくまでも本当に私の勝手な想像なので、制作した方にはさらなる事情があった可能性も十分あります…!一方で、たなかみさきさんが描いたと誤認するように意図的にやっていたら、悪質なので私はこのような行為は許せません〜!し、自分自身もほんと意図せずにやってしまうことのないように気をつけないと冷や汗が出ます。)

私もデザインの参考を探す時にPinterestなどで、ただビジュアル(画・絵)として眺めている時は多々あります。今回の件を知って、いいなと思ったもののリソースをちゃんと辿って背景を知ることを怠ってはいけないなと思いました。

必ずその作品を表現した“人”、個人がいる。
そして、昨今のAI事情で、その必ずが必ずで無くなっていく現状もあります。だからこそ、デザイナー自身が、自分が機械的になっていないか?もより一層意識する必要性が出てきそうに思います。

デザイナーが問題を起こす側にならないために、普段から大切にしていたい表現者へのリスペクト

今回はとくに作家性の強さを感じたので、そう表現しましたが、強い・弱いに関わらず、デザイナーとしてクリエイターやイラストレーターなど表現している方へのリスペクトは決して忘れずにいたいです。

そして、参考にするのが問題か、著作権の問題になるかどうかの前に、そもそもその作品へのリスペクトがあるから調べる。
そういうデザイナーで在りたいと、改めて強く思った今回の話題でした。

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