こどもの感情コントロールを支援するゲームアプリ "Mightier" 【#1: こども向けヘルスケアサービス@米国】
子どもも大人同様、学校や習い事、友達との付き合いなど、社会の様々な場面で感情を上手にコントロールしながら周囲と関わることが求められます。しかし、まだ子どもたちにとって、感情をうまくコントロールするのは難しいものです。
そんな子どもたちやその保護者を救うサービスが、Mightierです。Mightierのプログラムは、子どもたちが好きなゲームを通して自宅で実施できます。ゲームをタブレット端末でプレイしながら、子どもたちは心拍数の生体情報データを、つまり感情の変化を、リアルタイムでゲーム上で確認することができます。
ゲームが難しくなると、心拍数も上がりその情報がゲーム画面上に表示されます。そこで子どもたちは心を落ち着かせ、心拍数を下げるため呼吸法などのリラックス方法を練習します。落ち着くとまたゲーム再開ができる、という仕組みです。
本製品は、ボストン小児病院(Boston Children’s Hospital)とハーバード大学医学部(Harvard Medical School)で開発および試験を積み重ねてきた実績のあるプログラムになっています。
About "Mightier"
・国:米国
・創立年:2016年
・資金調達ラウンド:シリーズB (2021年12月)
・主な投資家:DigiTx Partners (シリーズBでのリード投資家)など
・総調達金額:約$27M
・サービス:小児の感情コントロールを支援する治療ゲームアプリ
・事業モデル:
・B2B2C - 健康保険会社、雇用主、病院を介して利用可能
・D2C - オンラインでサブスク形式で購入可能
*米国国内だけでなく、日本を含めた海外への配送もしているそうです。
子供のメンタルヘルスを取り巻く米国での課題
米疾病管理予防センター(CDC)によると、5人に1人の子供がメンタルヘルス、感情コントロールが上手くいかない、または行動に関連する問題を抱えており、80%が必要なケアを受けていないというデータがあります。
また、働く親の5人のうち4人が子供のメンタルヘルスを心配しており、3人に1人が過去2年間に子供のメンタルヘルスの問題を理由に転職または退職しているというデータもあります。これらの数字は、子どもたちの心の健康問題が深刻化していることを示しています。
また、Mightierが委託した調査によると、働く親の44%が過去1年間に子供のメンタルヘルスの課題に対応するために仕事を休んでおり、52%が仕事に支障をきたしていることが明らかになりました。さらに、調査では、小児メンタルヘルスのサービスに満足している保護者は半数以下であることが分かり、治療を受けるまでの平均待ち時間はなんと6ヶ月もかかることが判明しました。
子供だけでなく、保護者の負担も大きいことが伺えます。
対象:6-12歳の感情を上手くコントロールができないお子さんとその保護者
エンドユーザーは、感情の調節が困難な6-12歳のお子さんとお子さんをケアされる保護者の方です。この感情コントロールが難しいお子さんの中には、ADHD、反抗挑戦性障害、不安障害、自閉スペクトラム症などの診断を受けた方も含まれます。
Mightierが提供するもの:子どもたち向け&親向けの両方
主に子供が利用するものと、親が利用するものの2つでサービスは構成されています。
子ども向け
Mightier ゲームアプリ : 25種類以上のゲームを通して、感情の調整方法や落ち着くためのテクニックを学べます。
心拍センサー : 腕に装着するセンサーで、ゲームプレイ中の心拍数をリアルタイムで計測します。心拍数が上がるとゲームが難しくなるので、自然と心を落ち着かせる方法を身につけることができます。
Mightierタブレット (オプション) : Mightierのゲームをプレイするための専用タブレットです (別売)。
マンスリースキルパック (オプション) : 工作や遊び、お話を通して感情を理解し、表現するためのスキルを養います。
保護者向け
Mightier 保護者向けアプリ : お子さんの進捗状況をリアルタイムで確認できたり、アドバイスやサポートを受けられます。お子さんの成長を見守り、目標設定をすることもできます。
保護者専用コミュニティ : 同じようにMightierを利用している保護者同士で情報交換や体験談をシェアできるコミュニティです。
カスタマーサポート : 月曜日から金曜日までの間、プログラムや技術的な問題についてサポートを受けられます。
Mightierの効果的な利用方法としては、 1週間あたり3回、1回15-20分、計90日間 を目安に継続することが推奨されています。
お子様が習得しやすいように、 規則正しい「Mightierプレイルーティン」(つまり、感情コントロールを行う習慣を身につけること) を確立することが大切です。 定期的なプレイを通して、だんだんと難しくなるゲームに対応しながら、落ち着くためのスキルを身につけていくことができます。
Mightierが効果を発揮するメカニズム
Mightierは、以下の3つのメカニズムに基づいて効果を発揮します。
ゲームによるエンゲージメント
子どもたちが大好きなゲームを通して、楽しみながら学習に取り組むことができる
モチベーションを維持し、継続的な学習を促進する
スモールステップ学習
簡単なゲームから徐々に難易度を上げていくことで、達成感を積み重ねながら自信を高める
習得したスキルを日常生活に活かせるようにサポートする
バイオフィードバックによる学習
心拍数などの生体情報をリアルタイムで視覚化することで、自分の感情状態を客観的に認識できる
落ち着くためのテクニック(深呼吸、こわばった筋肉を緩める方法など)を効果的に習得できる
(おまけ:少し詳細に記載)子供たちはゲーム中に心拍数モニターを装着し、感情を見て直接感情とつながることができます。子供たちがプレイすると、ゲームは心拍数に反応します。心拍数が上がると難易度が上がり、子供たちはゲームで報酬を得るために心拍数を下げる方法 (クールダウン/落ち着く、または「一時停止」の練習) を練習できます。時間の経過とともに継続的に練習することで、子供たちは現実世界の課題に直面してもクールダウン (「一時停止」) を自然とできるようになっていきます。これは、子供が社会の中で何か動揺する前に取るべき微妙な「一時停止」または呼吸の方法であり、感情的な高ぶりを抑えられるようにします。
Mightierの効果:数字で見る変化
Mightierのプログラムを利用したご家族の声をもとに、その効果を数字で見てみましょう。
87%のご家族が、お子さんの 行動改善 を 3 ヶ月以内に実感しています。
73%のご家族が、Mightier を使ってからお子さんとの ケンカ・ぶつかり合いが減った と報告しています。
68%のご家族が、お子さんに関する ストレスが軽減 したと答えています。
これらに加え、Mightier 導入による経済的なメリットも見逃せません。Mightier を取り入れた企業では、従業員1人あたり年間 $300~$600以上のコスト削減が見込まれます。これは、子供のメンタルヘルスケアへの対応にかかる親が費やしている時間やコストの削減によるものです。
Mightier は、お子さんのみならず、ご家族や職場環境にも良い影響をもたらす可能性を秘めています。
*より詳しい試験のデータはこちら(英語)
利用者の声
同社ホームページに記載のある利用者のコメントを日本語にして記載します。
"Christine (8歳の息子の保護者)
Alex (6歳の息子の保護者)
販売形態・ビジネスモデル
同製品は健康保険会社、雇用主、病院経由で紹介されてアクセスできる形も米国ではありますが、ここでは利用を希望する方が直接購入する場合について説明します。
サブスクリプション形式で購入することができ、月、半年、年単位で選択できます。月単位だと最も月額が高いのですが、40ドルとのことです。年単位で利用すれば月々28ドルの計算になります。
Mightierはアメリカ国外、つまり日本を含む世界各国への配送を行っているそうです。
最後に
Mightierは、子どもたちの感情コントロール能力を向上させるためのゲームとバイオフィードバック技術を組み合わせたプログラムを開発・提供する会社です。Mightierは、子どもたちの感情認識能力、感情コントロール能力、集中力・学習能力、問題行動の減少など、さまざまな効果が期待されています。
Mightierは、世界中の子どもたちにメンタルヘルスケアツールを届けることをミッションとしています。現在、アメリカ国内では無料の標準配送を提供しており、アメリカ国外への配送も行っています。
Mightierは、子どもたちのメンタルヘルスの向上に貢献する、画期的なプログラムです。ぜひ、Mightierのウェブサイトを訪れて、詳細をご確認ください。
おしまい。
※このブログ記事は、個人的な趣味で書いているものであり、あくまでも情報シェアのみを目的としています。
参考記事
おまけ:前回記事
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