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スポーツ用品販売から紐解くこれからのスポーツ市場

8月半ばに上場しているスポーツ企業のIR発表が相次いだ。
3月に本決算を迎えるメーカー及び小売り3社を抜粋して、4月1日~6月30日までのIR発表実績を比較してみた。

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金額の単位は百万円

コロナ禍において最初の緊急事態宣言が発出した昨年は燦々たる結果を迎えたが、概ね回復の傾向が窺える。
これ以外のスポーツ上場企業IRをみても暗雲から抜け出た感は強い。

ただこの先、再び変異株の影響を強く受ける可能性もあり、引続き予断を許さない。

またメーカーは回復傾向が強いが、小売り関連についてはコロナの影響も含めNET販売に大きくシフトしていることが伺え、課題も多い。

特に大手チェーンの小売業はかつての好景気に支えられながら出店ラッシュが続いていたが、この数年は出店も飽和状態となり競争の激化、NET販売の台頭、景気の頭打ちからコロナ禍という状況で厳しい局面を迎えている。

スポーツ業界は東京オリンピックというまさに業界を挙げてのドリームイベントで大躍進を目論んでいた企業も多かっただけに、一昨年の売上を回復させただけでは、「消化不良」と考える企業も少なくないのだろうと思う。

またメーカーについては販管費を大きく圧縮できている企業も目立つ。コロナ禍において出張などの旅費なども抑えられているだろうし、各社ともコロナ禍における工夫や改善の努力も発揮されているのであろう。

一方、小売業においては競争激化のもと、折込みチラシなど来店促進に相関する広告宣伝費は不可欠で中々経費を抑えるのは困難。そこに被せてNET販売比重が上がると、そもそも店舗を構える意義といった問題に直面する。
NET販売においても価格競争は激しい。
生き残りを賭けたイス取りゲームをコロナ禍が加速させている。

これから先の問題としてワクチンや治療薬の開発スピード VS 変異株の進化スピードが取り立たされている。
変異株が生き残りを賭けて益々の進化を遂げようとし、人間はワクチンや治療薬の開発により一層の英知を注ぐ。

そのような状況下2022年2月、僅か半年先には冬期北京オリンピックが開催の予定だし、夏にはサッカーのワールドカップがカタールで開催の予定だ。
世界陸上は東京五輪の延期の影響で2022年、2023年と2年連続で開催される。
2023年にはラグビーワールドカップがフランスで開催され、パリ五輪へと続いていく。

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スポーツマーケットはこうしたビッグイベントの後押しで成熟している歴史がある。
スポーツだけではないだろうが、スポーツの市場とビッグイベントはコロナの終息に大きな影響を受ける。

オリンピック開催後は活躍した競技・種目が特需を受けることも多い。
サッカーワールドカップの前後も必ずと言っていいほどの特需がある。
活躍した競技は競技人口が増え、スポーツスクール産業に人が溢れ、用品も売れる。

今回の東京五輪特需を受けている競技・種目の筆頭にスケートボードがある。

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ただスケートボードはいわゆる専門店と呼ばれる業態を主流に流通経路が構成されている。
町のスポーツ店に行っても取扱っていない店が殆どだ。

大手の国内スポーツメーカーもスケートボードやボルダリング、BMXといった競技に関しては後手を践んでいる企業が多い。今から参入したところでこちらも専門メーカーや外資メーカーに太刀打ちできるのは容易ではない。

東京五輪の新種目を筆頭に、新しいスポーツのうねりが起こりそうだ。
若い世代の人を中心にスポーツに対する概念が変る可能性もある。
東京五輪のスケードボードにおける選手同士の「リスペクト」が記憶に残っている方も多いと思う。

その概念は若い世代の選手のスポーツへの向き合い方だけでなく、その競技が出来る施設や施設環境だったり、用品の扱いがある専門店という業態であったり、その競技を指導する立場の人など様々であろう。

それは廃墟となっている倉庫や工場をリノベという手段で、町と共生・連携した形の施設が出来るかもしれない。

立地環境に影響を受けにくい専門店は人の気配を失ったシャッター商店街に出店することもあるだろう。スケートボードやボルダリング、BMXといった専門店が集結し、周辺に競技施設が出来ることで若い世代で活気溢れる町並みを取り戻すかも知れない。

小・中学生が大人だったり高校生や大学生アスリートに指導するかも知れない。先輩とか年下とかそういう関係性の概念が消える可能性すらある。

また、コロナ禍ではチームスポーツが厳しい環境となっている。
五輪新種目にかかわらず、1人で出来る競技や施設は好調だ。
ゴルフ練習場は相変わらず盛況を迎えており、ランニングも依然人気。
バッティングセンターやオートテニス場と行った場所でも賑わいを見せている店舗は多い。

緊急事態宣言下で市営・公営のスポーツ施設が閉鎖され、テニスコートが使えなくなったことでオートテニス場の予約が平日でも朝から晩まで埋め尽くされている光景もみた。

アフターコロナとアフター東京五輪の先にはスポーツの新しい形や考え方が重要となりそうだ。

国内大手のスポーツメーカーや小売業の業績をスタンダードとして業界を眺めていると、時代の流れから取り残されるかもしれない。

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