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292 ポーカーフェイス


はじめに

今日の教育コラムでは、表情から読み取れる情報について少しお話してみたいと思います。
タイトルにもあるように表情から読み取れる情報は心理状況を読み取る上でとても重要なものであることを物語っている例として、「ポーカーフェイス」という言葉があります。これは、ポーカーをするとき、手札を悟られまいと無表情を装うことからできた言葉ですが、一般的にも表情を変えないことや無表情な顔つきをしている様子をこの言葉で表現することがあります。
表情があまり変わらないポーカーフェイスのままでコミュニケーションをとっている相手と関わるときに困ることは、相手の心理状況がわからないので楽しいのか、つまらないのか、怒っているのか、納得しているのかなど、つかみどころがないことです。

表情と感情

人の表情には、大きく分類して7種類の識別可能なものがあると言われています。喜び、驚き、恐怖、嫌悪、怒り、悲しみ、無表情の7つがそれにあたります。また、コロナ以降の日本では特にマスクを着けている人が多くなっているため、表情の識別は余計に困難です。
そこで、手や頭の上下など少し大きめのジェスチャーがその伝わりにくい情報を補っています。ポーカーフェイスは、無表情という表情の一部であり識別可能なものなのですが、何を考えているか、どのように思っているかを読み取ることは難しいのですが、しかしヒントは隠れています。
そのヒントとは、人が無表情になる理由にあります。人が無表情になるのには、楽しくない・つまらないという心理があります。 たとえば、自分にとって興味がない話題で盛り上がっているときや、相手の価値観に共感できないときは、楽しいと感じることはたいていできません。
会話している中に苦手な人がいる場合も、面白い気分になるどころか、嫌悪感を感じることすらあるはずです。つまり、表情が無い、表情による表現が少なくなってきたと感じたら、それは、何か心にストレスを感じているか物事がスムーズに進んでいない状態なのかもしれないと心配してみる必要があるということです。
自分ではなかなか気がつけない無表情ですが、周囲の人間の方が把握しやすいことは言うまでもありません。

無表情の増加

無表情の時間が増えていると感じたら、少し次のような心配をしてみてください。無表情の状態は、感情そのものが乏しくなっている可能性があります。それにより本音で語ることができない、何も考えられないなどといった悩みをかかえているかもしれません。また、人を遠ざけたくなるような心理状態になっている可能性もあります。
ストレスや不安などで心に負担がかかっていると、表情が暗くなり無表情になることがあります。ブラック企業で過重労働を強いられている人や睡眠時間を削り学習し続けている人の表情が次第に無表情になっていき、その後、自分への興味も薄れたり、不安や考え事にとらわれてしまい、身だしなみまで気を回す余裕がなくなってしまうケースなどもあります。

ストレスの限界点

ストレスからくる無表情についても少しお話ししましたが、このストレスが限界に達すると、次のような症状が出てきやすくなります。

・気持ちが沈む
・イライラする、怒りっぽくなる
・やる気が出ない
・集中力、注意力の低下
・楽しいはずのことに興味が持てない
・特別なことがあったわけではないのに悲しくなる
・否定的に物事をとらえがちになる
・悪い結果ばかり考える
・何も考えられない
・同じことばかりしてしまう

今あげたような症状は、学習面にも大きく作用します。いかにスムーズに学習を進めていくかを考えた時にストレスとどう向き合うかは重要な視点なのです。
昨今、育児放棄や大人の加害により生命の危機に瀕する、またはその命を失ってしまうような出来事をニュースなどで耳にします。そうした被害にあった子どもたちは、はかり知ることのできないようなストレスを抱え、その状況を無表情という表情で周囲に訴えていたのかもしれません。

メンタルヘルス

スクールカウンセラー制度が導入されて20年以上たつ日本ですが、児童生徒の自殺者数、不登校数は増加する一方です。教師が児童生徒のメンタルヘルスをどこまで意識しているのかが今問われているように思います。
臨床家と視点を教師自身がもち、指導者、教育者ということ以前に子どもの命に係わるものとして、ポーカーフェイスの裏側にある表情を読み取る努力と知識を身に付ける必要があるのではないでしょうか。
加えて、その個々の教師の力量が十分でないことを想定し、システムや枠組みで無表情に気づけるような教育現場の創造が急務だと考えます。

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