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34 お手紙(letter)


はじめに

今日のコラムは、お手紙について少しお話したいと思います。今日は、ダイバースタディーが実施している特別講座の日でした。久々に再開した受講生から2通のお手紙をいただきました。
読んでいるだけで、とてもうれしく目頭が熱くなりました。お手紙の中身の紹介は控えますが、私にとっては心の栄養そのものでした。お手紙に歴史の講座も楽しみにしていますというメッセージをいただき、また、少し講座の内容をじっくり考えて準備しようと思います。
インターネットの普及でSNSを活用して、日頃から様々な形でメッセージを伝えることが可能になった今日において、形はどうあれ相手に気もちを伝えるという行為は、身近で多様性に富んだものになってきているように思います。皆さんは、どのように相手に気もちを伝えていますでしょうか。

気もちを伝える

写真1枚、スタンプ1枚でコミュニケーションが成立することは、多くの人が体験していることであると思います。インスタグラムなどは文字よりも画像や動画を投稿することがメインで、ラーメンへの愛情にあふれている人のアカウントは、1枚1枚の写真の織り成す世界観が多くの言葉をまるで発しているように思います。これは、フォローする側のそのアカウントへの期待感や興味が言葉を補い、まるで投稿者と会話をしているかのような充実感を感じさせてくれます。まさに、会ったり電話したりして会話する、メールをしたり手紙を書いたりして言葉を送り合うものとは別の世界観であります。Twitterは、身近な文章でつぶやき、そのつぶやきに共感を示したり、嫌悪感を示したり、さらにつぶやき返すことで反響を生み出したりすることができます。このように、新しいコミュニケーションツールが誕生していて大変多くのユーザーがすでに利用している事実があります。
では、古代から続く手書きの文章、「手紙」にはどのような良さがあるのでしょうか。

手紙の良さ

これは、私個人の主観的な感想ですが、手書きの手紙には、あたたかみを感じることができるように思っています。逆に内容によっては、重要性や緊張感を強く感じることもあります。
人が自分の手で自分の字で書いた文章は、まるでその人の面影が手紙の文面や行間に見えるような印象をいつも感じます。そして、わざわざ時間をとって書いてくれたこともあわせて、伝わってきます。
皆さんが、寄せ書きや冠婚葬祭の際に、自分の想いがしっかりと伝わるように手書きのメッセージカードや手紙を送ったりするのも少しでも自分の手で自らの心を伝えたいという願いからそうしているのではないでしょうか。
紙の質感やデザインも含めて、手紙を準備してくれたこと自体が、電子メールやデジタル化したメッセージにはない心の込めた何かを感じることができるのだと思います。

筆まめ

筆まめとは、おっくうがらずに手紙や文章をまめに書くことを意味します。現代では、レスポンスが早い人やこまめにラインやメールで連絡する人なども「筆まめ」と言えるでしょう。
日本の歴史上にも多くの筆まめだった人々がいますが、その中でも坂本龍馬さんは、筆まめで大変有名です。ちなみに坂本龍馬は、幼いころから自分の味方をし、母親の代わりに大切に自分を育ててきてくれた姉の乙女に現在確認できるだけでも130通以上の手紙を送っています。
なんと龍馬は、お竜との新婚旅行で高千穂の峰にあがった時ですら、イラストを入れた手紙を乙女に送っているのです。坂本龍馬は、ほかにも日本を動かす大事であった薩長同盟の樹立に関わる場面である直筆の書を特別な形で記しています。

西郷・桂・龍馬の三者が記した心

「薩長同盟裏書」というものを皆さんは見たことがあるでしょうか。高知県には、坂本龍馬記念館という、その名の通り坂本龍馬の功績を後世に伝える博物館があります。坂本龍馬が幕末に残した功績は、計り知れないものがありますが、中でも薩長同盟はその後の討幕運動を加速させた最も大きな出来事であったと言えます。この歴史的な出来事を記す史料は宮内庁が所蔵していますが、2021年にこの坂本龍馬記念館で公開されたのです。
薩長同盟は、1866年に長州の桂小五郎と薩摩の西郷隆盛が、倒幕に向けて6か条に渡る内容において協力し合うことを取り決めたものとなります。犬猿の仲であった両藩を仲介したのが坂本龍馬というわけです。
桂小五郎は、同盟の内容を手紙に記し、その内容を証明するために書面の裏側に坂本龍馬に直筆で裏書きを求めました。黒墨で書かれた表面の裏に朱墨で坂本龍馬は筆を走らせました。そこには次のような内容が記されました。
「薩長同盟締結に際しては、西郷隆盛、桂小五郎、坂本龍馬が一堂に会し、互いに思いを述べ、同盟の内容について意見を述べ合ったものであり、この決定は、今後も変わるものではなく、神がそのことを承知している。」
この裏書が入ることで、薩長同盟は紛れもない同盟の締結を生じさせたのだと私は思います。手紙に手書きで心を込めた瞬間であったのです。

手紙を送る

私は、頂いた手紙を職場の作業台の正面にかざり、悩んだときに読み返しています。皆さんもそんな手紙をいただいた時には、ぜひ大切にしてみてください。相手の心にふれることは、心を大切にすることから始まるからです。そして、できたら家族や大切な人に手紙を送ってみてください。自分の心がまっすぐに伝わるような気がします。
ちなみに、私は、妻からもらったエビフライのイラストが入ったメッセージ入りの付箋を今でも大切に保管していますが、恥ずかしながらどんなにいただいた時にうれしかったことか、今でも大切な思い出です。

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